また来たよ。あぁ、やっぱりここはいいな。
ヘルメットを脱ぎ、穏やかな湖面を眺めた瞬間にこぼれた独り言。
以前、テント泊で訪れた際に素晴らしい一夜を過ごした場所、
山形市の『古竜湖キャンプ場』に帰ってきました。
2025年、夏。福島から反時計回りで始まった東北一周ツーリングキャンプ旅も、
いよいよ最終目的地・山形へ。
連日の長距離走行に加え、猛暑に焼かれ、時には凍えるような寒さに震える。
記録的大雨に見舞われたかと思えば、キャンプ場では一人っきりでクマの影に怯えたりと…、
酷使した身体を最後に癒やしたい!
けれど、今さらビジネスホテルに逃げ込むのは、旅の締めくくりとして少し味気ない…。
そんな贅沢な悩みを抱えていた私の頭に浮かんだのは、前回訪れたときにずっと気になっていた、
あの湖畔に佇む建物のことでした。
『あのケビンに、一度泊まってみたかった。』
しかも、キャンプサイト同様、驚くことに利用料は0円。
果たして、長旅を終えようとするライダーをどんな風に迎えてくれるのか。
無料の闇か、それとも光か?
今回は、再訪して初めて分かった『古竜湖キャンプ場・無料ケビン泊』の全貌を、
旅の余韻とともにレポートします。
イントロダクション ~山形:2025年東北一周ツーリングキャンプ旅の終着点~
福島から始まり、宮城、岩手、青森。そして秋田から最後の地、山形へ。
2025年、私の夏を捧げた「東北一周ツーリングキャンプ旅」も、いよいよ最終目的地へと近づいていた。
天気はカラッとした快晴。青空が最高に気持ちよい。
道路状況は完璧。まさにツーリング日和だ。

『駒ヶ岳線』と呼ばれる県道127号を軽快に下っていく。
駒ヶ岳の稜線を真正面に眺め、遠くには田沢湖がちょろっと顔をのぞかせた。

大雨の影響か多少の濁りはあった川も、本来の平静を取り戻したかのようなエメラルドグリーンに輝いている。
午前中だったが、すでに頭上の電光掲示板は27℃を表示。


ナビに案内されショートカット、『みずほの里ロード』へと入る。


抜け感のある景色と程よいカーブが実に心地よい。サイクリングロードにもなっているみたいだ。
久しぶりにいい道案内してくれましたね、グーグル先生!
みずほの里ロード
秋田県横手市から仙北市を結ぶ農免道路。
信号が少なく景観も良かった。
道沿いにラベンダー園、温泉、キリシタンかくれ穴等のスポットもある。

爽快にその道を走り抜け、順調に県境を越えた。
最終目的地、山形参上。
山形ランチ 鳥中華の「お休み」に泣き、肉そばの「旨さ」に笑う。
山形市内に入った。
ハラヘッター。さて、まずは飯だ。
前回訪れた際、山形名物 『鳥中華』の存在を知ったが食べ損ねていたのだ。
そのリベンジを果たすべく、ナビをセットしていたのは『つる福』という蕎麦屋。
到着したのは14:00前。ピークタイムは落ち着いたかと思いきや駐車場はほぼ満車状態。
ウェイティングボードに名前を書こうと歩み寄ったその時、無情な張り紙が目に飛び込んできた。
『本日 鳥中華はお休みいたします』

なんてこったー。
冷ヤシ中華ハジメマシタ、もとい、鳥中華オワリマシタ。。
ガッデム。14:00という時間は山形ではランチにありつけるか否かのデッドライン。
しかし、この行列を見ればここが名店であることは疑いようがない。
ここでランチをいただくことにした。
メニューを見ると、看板商品は「肉そば」。

この暑さだ、迷わず冷やしのおろし肉そばを選択。
さらにげそ天のセットを付け、空腹に任せて大盛(1.5玉)をオーダーした。
ちなみに「ジャンボ(3玉)」もあったが、そこは大人の対応で遠慮しておいた。
運ばれてきたどんぶりを見て驚いた。

器のデカさもさることながら、その重量感が半端ない。
片手で持とうとすると手首の腱が浮き上がるほどだ。
へぇ、肉そばのニクって鶏肉なんだ。
身は固く締まっており、噛めば噛むほどに濃い旨味が溢れ出す。
角の立った麺が、鶏の脂でコクの出たつゆを纏う。旨い。
サクサクに揚がったげそ天も、そばとの相性は抜群。気づけば特盛をぺろりと平らげていた。
そば処つる福 本店
おろし肉そば 950円
大盛(2玉) +150円
ゲソ天野菜セット +300円

エネルギーチャージは完了。 さて、いよいよ思い出の古竜湖キャンプ場へと向かうとしよう。
再訪、古竜湖キャンプ場。

山形市内からバイクを走らせること約20分。
懐かしの坂道を登りきると、あの穏やかな水面が見えてきた。
古竜湖キャンプ場。
山形市蔵王成沢に位置するこの場所は、市街地からのアクセスが良いにもかかわらず、深い緑と静寂に包まれている。
ここで、このキャンプ場のようすを軽くおさらいしておこう。
古竜湖キャンプ場 基本データ

| 訪問年月 | 2025/8 | 晴/晴 |
| 名称 | 古竜湖キャンプ場 | https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shisetsu/kanko/1002590.html |
| 場所 | 〒990-2304 山形県山形市蔵王山田813−1 | 023-641-1212 |
| 業態 | 公営 | 昭和46年開設 |
| ロケーション | 山間、湖畔 | 西蔵王山麓(標高490m) |
| 営業期間 | 4月末~10月末 | |
| 予約方法 | web | VISIT YAMAGATA |
| in / out | 14:00~17:00/~10:00 | ※キャンプ場利用は11:00~17:00 inだが、 バンガロー・ケビン利用者は14:00~の利用となる |
| 料金(利用プラン) | 計 0円 | 無料 ※ケビン『三本木』を利用 |
| (内訳) | 駐車料金 | なし |
| ケビン使用料 | 0円 | |
| 受付 | 受付時間 11:00~17:00 | |
| 売店 なし | ||
| レンタル なし | ||
| 薪 販売あり | 薪 300円、スウェーデントーチ 400円~ | |
| 設備 | トイレ:1カ所 | 仮設トイレ、汲み取り式・洋式便座 |
| 風呂:なし/シャワー:なし | ||
| 炊事棟:1ヵ所 | 湧水 | |
| 炭捨て場:あり | ||
| その他 | 遊歩道 | |
| ごみ | 持ち帰り | |
| 直火の可否 | 不可 | |
| 電波状況 | 悪い 無料Wi-Fiあり | ※楽天モバイル |
| 獣・虫 | くま※、イノシシ、テン、シカ、カモシカ等 | ※直接の目撃情報はなしとのこと |
| 管理棟までの路面状況 | 砂利道 | |
| サイト内路面状況 | 土・砂利 | バンガロー、ケビンに車両横付け可 |
| 買い出し | スーパーマーケット | マックスバリュ青田店 約7.7km |
| コンビニ | セブンイレブン山形表蔵王店 約6.2km | |
| その他 | 温泉 | 百目鬼温泉 約11.4km |
古竜湖キャンプ場 利用システム
『VISIT YAMAGATA』という山形県の村山地域を拠点とした観光イベント・宿泊情報サイトにアクセスし、「体験予約」からキャンプまたはバンガロー等を予約できる。
~予約の流れ~
1.サイト名『VISIT YAMAGATA』にてプランを選び仮予約をする
2.『【おもてなし山形】予約受付確認書』のタイトルでメールで届く
3. 翌日『(要返信)古竜湖キャンプ場予約確定依頼』のタイトルでメールが届く
届いた当日の日中までに必要事項を記載し返信する
4.返信した当日『【予約完了】古竜湖キャンプ場の利用につきまして~』のタイトルでメールが届き予約完了となる
古竜湖キャンプ場 施設について
受付のある管理棟のほか、炊事場、トイレ、かまどが利用可能。
これらはキャンプ利用者との共用となる。





古竜湖キャンプ場 注意点
ゴミは完全持ち帰り。
場内の電波は弱いが、無料Wi-Fiが完備されているのは非常にありがたい。

※キャンプ場のより詳細な設備紹介については、[前回の記事(下記リンク)]を参照してほしい。
0円ケビン『三本木』の全貌。湖畔に佇む「特等席」の真実

前回ここを訪れた際、湖畔に向かって立つバンガローの姿に一目惚れした。
場内いくつかバンガローはあるが、湖畔沿いに建つ宿泊施設は、『こまくさ』(バンガロー)と、さらに奥にあるこの『三本木』(ケビン)のわずか2棟のみ。
『こまくさ』は先約あって予約を逃した。
今回は運よく、縁あって、その『三本木』を利用することができた。
8人用という大型の建物をひとりで占有するのは身の丈以上。
正直申し訳ない気持ちもあるが、これも旅の巡り合わせ。有難く利用させていただきます。
受付で鍵を受け取り、場内の砂利道を慎重に進む。

重量のあるバイクでバランスを取りながら小道を抜けケビンに横付け。
青い湖のほとりに建つ、まさに古竜湖の特等席。

木造の階段を上りきると、ベンチが備え付けられたデッキがある。


目の前には湖の景色が広がる。

ただ一点、鳥獣避けの網が視界を妨げるが…。
さて、中はいかに?期待に胸を膨らませ、鍵を開けた

ケビン三本木 室内の全貌

ガチャリ。ドアを開けて驚いた。

そこには「無料」の概念を覆す広さと、潔いまでの「何もなさ」だった。
- 広さ:8人まで収容可能な広さ
- 収納: 棚が多数。
- 電源環境: なし。
- 照明: なし。
- 空調: なし。
広さ: 床も壁も全て板張り。8人用というが8人では横になってギリギリか?修学旅行の寝床をイメージしてしまう。4人だったら横になっても全然余裕のスペースがある。ソロでは持て余すほどの十分すぎる広さ。

収納: 小上がりに靴箱や棚が多数設置されている。室内にも2段の大きな棚があり、ヘルメットやパニアケース、ウェア類を余裕で広げて整理できるスペース有。床に荷物を広げる必要は全くない。



電源環境: コンセントはない。 ガジェット類の充電はあらかじめ済ませておくか、モバイルバッテリーが必須となる。
照明: なし。 夜は完全に真っ暗になる。ランタンの持参が絶対条件だ。併せて吊り下げる道具(ランタンフック等)もあれば便利。
空調: なし。 窓はあるが網戸がない。

設備面だけを見れば、照明も電源もない『ただの木箱』かもしれない。
しかし、毎日テントで雨風を凌いできた身には、ここは天国のような環境だ。
何より、テントの薄い布一枚とは比較にならない『壁』の安心感。
毎日繰り返してきたテントを張る作業からの解放。
窓の外に広がる湖畔を眺め、たっぷりと用意された棚に荷物を整理していく。
それだけで、ここが自分だけの秘密基地になったような感覚に陥る。
寝床の準備を早々に済ませた。
この圧倒的な時間的・精神的な余裕こそが、ケビン泊最大の贅沢だ、と実感した。
さて、拠点は確保した。
次は身軽になった相棒と共に、山形の『湯』を楽しみ、古竜湖を見ながら過ごす『宴』の調達へ向かうとしよう。
山形市 田んぼの真ん中にある温泉で山形ルール?の洗礼。

前回は蔵王温泉の大露天風呂を堪能したので、今回は趣向を変えて違う場所を探す。
『百目鬼(どめき)温泉』?
なんだ、このインパクト絶大な名前は。距離もさほど遠くなく、買い出しの効率も良さそうな位置。
山形市内の渋滞を抜け、ナビが案内したのは見渡す限りの田園地帯。
本当にこんなところにあるの?と、疑いたくなるような田んぼ道を、三角形の山を正面に携えながら進んでいく。

すると、突如としてその温泉は現れた。

駐車場はほぼ満車。並ぶのは山形ナンバーばかりだ。地元に愛される名湯なのだろう。
入浴料は450円。このご時世にありがたい価格設定だ。
中は内風呂と、露天風呂。湯加減は熱め。
露天へ続く動線にサウナがあった。
この値段でサウナ付きとは!と得した気分でドアを開けようとしたその時、妙な張り紙が目に留まる。
『バスタオルを巻いて利用してください』
はて?とドアの前で躊躇していると、背後からぶっきらぼうな声が飛んできた。
「バスタオルない人は、サウナだめだよ!」 声の主はいかにも地元の方らしい年配の男性だ。
全国を旅して回っているが、サウナ入るのにバスタオル持参なんてルールは初めてだ。
思わず「なんでですか?」と聞き返すと、
部外者(県外者?)と悟ったような顔つきをし、憮然とした口ぶりでこう吐き捨てられた。
「こ れ が 山形ルールだ!」
その男性はそう言い切ってすぐサウナへ入っていった。
一方的に言われその場であんぐり…。
露天風呂に浸かっていても、どうにも釈然としない。
湯上がり、フロントにいたおかみさんらしき人に率直に尋ねてみた。
「サウナでバスタオル必須って、一体なぜなんです?」
「あぁ、それはね。お客さんが『人の使った後に座るのが嫌だ』って言い出してね…」
「山形ルールって、山形ではどこでもそうなんですか?」
「他は知らないけど、うちではそうなのよ。ごめんなさいね、地元の人がきついこと言っちゃって。」
そこからは、東京から来たという私とおかみさんとの間で、たわいもない話が数分間続いた。
次々と客が入ってくる忙しい時間帯だったが、彼女の優しさが、先ほどの冷ややかな洗礼でこわばった心を少しだけ解きほぐしてくれた。
山形でサウナに入りたい旅人は、バスタオルを忘れてはいけない。
サウナーは肝に銘じておきましょう。
しかし、バイクキャンパーでバスタオルを持ち歩く奴なんて、果たしているのかしら…。
百目鬼温泉
入浴料 450円
※サウナはバスタオル必携!

山形市街を染める夕陽。拠点へ戻る前の絶好ロケーション
東北ツーリング、集大成となる最後の夜だ。 今夜は0円ケビンという「城」もある。最後くらいは豪勢に派手にいきたい。そんな期待を胸に、まずはローカル感漂うスーパーをハシゴした。
しかし、3軒ハシゴするも目ぼしいものが見つからず空振りに終わる。
正直言えば、いい時間帯なのに一切値引きがない。(←本当に豪勢にする気があったのか?)
国道を越え、この先もうスーパーがないところまで来てしまった。
結局、辿り着いたのは全国区の『マックスバリュ』だ。
ローカルな出会いはなかったが、品揃えの安定感は流石。
今夜は最後の夜。いつもより少しだけ、いや、だいぶ『自分的豪勢』にカゴを埋めていく。
喉を鳴らす飲み物と、奮発した食材をごっそりと。
買い出しを終える頃には、空の色が変わり始めていた。
古竜湖キャンプ場へと続く、細い上り道をバイクで進む。
この道中には、山形市街の展望と夕陽が美しく見えるポイントがある。
前回訪れた際も足を止めた、お気に入りの場所だ。 バイクを停め、エンジンを切る。

「やっぱり、ここからの夕焼けは綺麗だぁ…」

沈みゆく太陽が山形の街をオレンジ色に染め上げ、遠くの山影を際立たせる。
一日の終わりと、旅の終わりが重なるような、少し切なくもなる時間。
拠点に戻る前の、ほんのひととき。
このロケーションを楽しめるのも、このキャンプ場を利用する際の素晴らしい点だ。
夜の帳が下りる前に、私は再びバイクを走らせた。
今夜の寝る城(根城)へ戻り、いよいよ宴を始めるとしよう。
山村広場
山形市街の景色を一望できる。
特に夕焼けスポットとしておススメ。

闇に浮かぶ特等席。0円ケビンで過ごす最後の夜

キャンプ場へ戻る頃には、あたりは暗がりに包まれていた。
このケビンには照明がない。
まずは高輝度のランタンを灯し、暗闇の中にぼんやりとした居住空間を映し出す。


問題は室温だった。
空調がないので、日中の熱を蓄えた室内はかなり暑い。
窓を開けて風を通したいが、網戸がないため不用意に開ければ虫の侵攻を許してしまう。
苦肉の策として、ドアをわずかに開け、蚊取り線香を焚いて結界を張った。



今夜の食卓は、テラスに備え付けられたベンチ。
これに座るとせっかくの湖に背を向けてしまうので、
今回持ってきたチェアを用意し、ベンチをテーブル代わりにした。
これが高さ的にジャストサイズで、夜の湖畔を眺める特等席が完成した。
買ってきた豪勢な食料を広げるが、手元にも灯りが必要だ。
柱の絶妙な位置にランタンフックを噛ませ、予備で持っていた2つ目のランタンを吊るす。
これで自分だけのプライベートバルコニーが完成だ。

さて宴の準備に取り掛かろう。
この日のために新調したといっても過言ではない、オレゴニアンキャンパーのクーラーバッグ。
2Lペットボトル6本を飲み込むキャパシティは、ソロの胃袋を満たすには余りある。
ソフトタイプゆえの取り回しの良さも気に入っている。
大きく開いたバッグの口から、戦利品を順に引き出す。

これは、調子に乗ってやりすぎたかな…。
まずは、ジャケ買いした東北限定のビールをプシュッと開ける。今日の佳き日に相応しい一杯だ。

「くぅ……」
喉を鳴らす、久しぶりの本物のビール。

ブリの刺身を食らい、すぐさまかき揚げ丼をかきこむ。
叉焼は…、余計だったかもしれない。
刺身のツマをゴミにしたくないのは、キャンパーの性だ。
シェラカップのザルで水に晒し、臭みを消してピンと立たせる。
それをごぼうサラダに放り込めば、立派な一品として完結する。

湖を見ながら優雅に食すはずが、結局のところ湖は漆黒の闇。
でもいいんだ。この場所で食べていることに意義がある。
ふと、(この旅『福島県のキャンプ場』で入手した)薪が余っていることを思い出した。
最後だし、燃やし切るか。 キャンプ利用者共用のかまどへと向かう。
最後の夜を惜しむように、静かに火を熾した。

揺らめく炎を眺めながら、この旅の思い出が頭を駆け巡る。
東北の道を走り抜け、出会ったひと、景色、自然の猛威を含め数々の試練…。
そして今、この静かな湖畔にいる。

焚き火を終えてケビンに戻ると、夜風が室内の熱を奪ってくれたのか、なんとか眠れそうな気温になっていた。
板張りの床にコットをセットし、敷いたシュラフに身を沈める。
カーテンのない窓から管理棟の灯りが漏れる。

明日は、いよいよこの旅の最終日。 身体のためにも寝るとしよう。
名残惜しき撤収。古竜湖、凪の湖面とクイニーアマン

危うく熱帯夜かと思われたが、いつの間にか深い眠りに落ちていたようだ。
温度計に目をやると、夜間の最低気温は23.4℃。
ポータブル扇風機は、役目を終えたかのようにバッテリーを使い果たし、静かに止まっていた。

扉を開ければ、目の前には飛び込んでくるような湖の絶景。


ほとりまで歩みを進め、思い切り深呼吸をする。これほどまでに清々しい朝が他にあるだろうか。

テラスに腰を下ろし、クイニーアマンで朝食を。なんて優雅な時間だろう。

だが、あまりうかうかしてはいられない。
陽が昇るにつれ、ぐんぐんと気温が上がっていくのが肌でわかる。

テントの撤収に比べれば、ケビンの片付けなどお茶の子さいさい。
とはいえ、立つ鳥跡を濁さず。
入り口に立てかけられた箒を手に取り、床を丁寧に掃き清める。これにて任務完了。

鍵をかけ、管理人さんに一言。
「本当に、ありがとうございました。」
感謝を告げ、この場所を後にした。

まとめ:ケビンを楽しむための必携アイテムと無料の『別荘』をいつまでも守るための敬意と心得

今回の滞在では、無料という恩恵と、抜群のロケーションがもたらす別荘気分の贅沢さを味わいました。
しかし、ここを快適に使いこなすには、最低限の装備と、使わせてもらうための心得が欠かせないと思いました。
必携アイテムと、あると便利なアイテム
※リンクしているものは私が今回実際に使用したもの。
【必携アイテム】
ランタン(メイン): 室内に照明はない。室内用としては高輝度のものが望ましい。
ランタン(サブ):夜間の施設移動用。夜、テラスで過ごす場合にも。
吊り下げ具:思った位置にフック等がないため、ロープやカラビナ、ランタンフックなどでの工夫が必要。ちなみに私が愛用しているガイロープは下記。テントの張り綱の他に、2m、3mに切って携行している。
シュラフ・マット(またはコット): 寝具は一切ない。コットを使用する際は、床を傷めないようグランドシートを敷くなどの配慮を忘れずに。
今回の旅で採用したシュラフ。
薄手でサラサラした肌触り。夏用に良い。コンパクトになるのが最大の魅力。
蚊取り線香:部屋の窓に網戸はない。虫対策として。テラス用としても。
【あると便利なアイテム】
コンパクト扇風機:室内に空調はない。就寝時大活躍だった。
モバイルバッテリー:室内にコンセントはない。ガジェット類の充電用にも。
チェア:テラスでベンチをテーブルとして利用する際、高さがちょうどよかった。
保冷バッグ:食材の保冷保管。使わないときはコンパクトに収納。容量があるので宴を催すのにたくさん買い出しできた。
利用者として忘れてはならない敬意と心得

キャンプを始めて9年目になりますが、今回のようなケビン泊は初めての経験でした。
テントに比べれば快適そのものですが、室内にあるのは木の壁と、棚、窓、扉のみ。
古き良き、潔い施設です。
昨今の高規格なバンガローには、水道やトイレ、シャワーや風呂、冷暖房にテレビまで完備されていると聞きます。
そうした『至れり尽くせり』を求める人には、ここは向きません。
ここはあくまで野営の延長線上にある場所であり、ホテルではないからです。
以前、関西のキャンプ場で「虫が出る」「髪の毛が落ちている」と大騒ぎする客がいるという話を聞いたことがあります。
そうした神経質な方や、過度なサービスを期待する層にも、ここはおススメできません。
私たちは、この素晴らしい環境を「無料で使わせてもらっている」立場です。
使用後は自ら箒をとり、次に使う人が気持ちよく過ごせるよう整える。
その当たり前の手間を惜しまない心の余裕が、この場所にはふさわしいと思いました。
この貴重なフィールドをいつまでも無料で使い続けられるよう、利用者一人ひとりが感謝の念を持ち、敬意を払って利用してほしいと切に願います。
【おまけ】帰るまでが東北一周キャンプ旅

独眼竜の面影を追って米沢へ。歴史探訪と湯と謎の煮卵

帰路、伊達政宗生誕の地・米沢へと立ち寄る。
訪れたのは米沢城跡に建つ上杉神社。
境内へ入ると、生誕の地を示す政宗の碑がささやかに佇んでいた。

一方で、堂々と祀られるのは上杉謙信公や直江兼続。ここは上杉家がメインだったと知る。


『なせば成る…』それを言った、上杉鷹山公の像を前に、
この人だったのか?と、その張本人をこれまた初めて知った。


厳かな境内だが、その雰囲気とは相反し多くの人々がスマホを覗き込んでいる光景に目が留まる。
さてはスマホで案内をみているのかと思ったが、
「ポケモンだよ」と尋ねた従業員らしき男性がニコニコしながら答えてくれた。
「時間があるなら、紙芝居を見ていかないか? 少し準備はかかるけど。」
誘いに後ろ髪を引かれたが、これから東京まで帰らねばならない。
丁重にお断りしてその場を離れると、別の年配男性が近づいてきてそっと教えてくれた。
「あの人、元市長なんだよ。善意で紙芝居をやってるんだ。」
米沢という街の懐の深さに、少し触れた気がした。
上杉神社
駐車場:松が岬おまつり広場 無料

旅の締めくくりは、やはり温泉。政宗公も湯治に訪れたという由緒ある小野川温泉へ。
最後の温泉としてふさわしい場所だと思った。

目指すは共同浴場「尼湯(あまゆ)」。

場所を尋ねる際、てっきり「泥湯」と勘違いしていたが、お土産屋の方が「尼湯ならあっち」と正してくれたおかげで無事に到着した。

入浴料は驚きの200円。
番台はなく、購入した券を脱衣カゴの前に差し込むという独自のスタイルだ。
入浴者同士の信頼で成り立つ「隣組」のような自治の空気を感じる。
湯船は狭く、そして何より熱い。
椅子はなく、地べたにおしりをぺたんとつけて体を洗うのが面白いと思った。
風呂上がり、空調のない脱衣所でうちわを仰ぐが、入る前も上がった後も汗がダラダラと止まらない。
これぞ共同浴場の醍醐味だね。
最後は、道案内をしてくれたお土産屋で軽い昼食を。

玉こんにゃくは安定の旨さだが、特筆すべきは「煮玉子」だ。

黒ずんだ殻の見た目に一瞬たじろぐが、一口食べればそんな懸念と脳がぶっ飛ぶくらいにうまい!
味が芯まで染み渡り、黄身はトロトロ。これまでの人生で食べた煮卵の中で間違いなく一番旨い。

これで60円とは、恐れ入った。
史跡を巡り、名湯に浸かり、その地の味を噛み締めた。
小野川温泉
尼湯:入浴料200円
駐車場(尼湯 入浴者専用):無料
そこからは、灼熱のアスファルトと戦いながら東京へのロングドライブ。


この日の走行距離は374km。
東北一周のトータルは1,756kmに達した。


あとがき
私の2周目となる東北キャンプ旅、2025年版を最後までご覧いただきありがとうございました。
もしよろしければ、旅の始まりから順に辿っていただければ幸いです。





