薩摩半島の西岸を、ただひたすらに南へ。
今回の旅の目的地は、かつて別の無料キャンプ場で出会った自転車放浪キャンパーから授かった、
全国無料最強キャンプ場3選のひとつ、『火之神公園キャンプ場』。
予約不要という自由さに甘え、天草から陸路で熊本の本土へと渡り、薩摩半島西岸の荒い海岸線をなぞるように走り続けたツーリングの果て、ようやくその場所にたどり着きました。
果たして、そこはどんな場所なのか。 無料ゆえに気になる設備や、夜の治安面はどうなのか?
『火之神公園キャンプ場』で過ごした一晩のリアルなレポートをお届けします。
火之神公園キャンプ場の魅力とは

- 東シナ海のパノラマ景色と、そびえ立つ立神岩・開聞岳
- 旅人を縛らない「予約不要・無料」という自由
- 立神岩に沈む、本土南端から見る夕日
東シナ海のパノラマ景色と、そびえ立つ立神岩・開聞岳

駐車場から、生い茂る原生林を抜けた瞬間に目に飛び込んできたのは、手入れの行き届いた青々とした芝生、そしてその先に広がる濃紺の東シナ海でした。
海中から突き出した槍のような鋭さを持つ『立神岩(たてがみいわ)』がそびえ立ち、
正面には「薩摩富士」と称される美しい円錐形の『開聞岳』を望むことができます。

この2つの象徴的な景色を、キャンプ場から同時に眺められる贅沢は、他ではなかなかお目にかかれるものではありません。
旅人を縛らない「予約不要・無料」という自由
何よりの魅力は、これほどのロケーションでありながら『予約不要』かつ『無料』であること。
天候や気分に左右されるロングツーリングにおいて、「何時までにチェックインしなければならない」という縛りがないことは、ソロライダーにとって精神的に大きな解放感を与えてくれます。
立神岩に沈む、本土南端から見る夕日

『立神岩の向こうに沈む夕日が、言葉を失うほど美しい』という話を聞いて訪れましたが、
あいにく滞在した当日は、東シナ海から吹き付ける猛烈な強風と厚い曇り空に見舞われました。
残念ながら今回はその絶景を拝むことは叶わず、次回の宿題となりました。
しかし、天気の良い日はぜひ夕暮れ時に立神岩のほうへ目をやってみてください。
本土南端の地で、水平線へと消えていく美しい夕日が、訪れる旅人を癒してくれるはずです。
また、今回は風の影響もありじっくり回ることはできませんでしたが、公園内には他にも歴史や伝説、さらには夏場に賑わうプールなど、多彩なスポットが点在しているようです。
キャンプだけでなく、散策の時間を多めに取って訪れるのも良いかもしれません。
火之神公園キャンプ場 基本データ

| 訪問年月 | 2025/7 | 晴のち曇り(強風・高波)/晴 |
| 名称 | 火之神公園キャンプ場 | https://www.city.makurazaki.lg.jp/soshiki/suisan/351.html |
| 場所 | 〒898-0045 鹿児島県枕崎市火之神岬町47 | 0993-72-1111(市役所代表) |
| 業態 | 市営 | 枕崎市 |
| ロケーション | 臨海 | 東シナ海、立神岩、開聞岳遠望 |
| サイト | フリーサイト | 砂 硬 □□□□☑ 柔 |
| サイト規模 | 中規模 | 約20〜30張程度 |
| 車両乗り入れ | 不可 | 駐車場から徒歩(自転車、バイク含む) |
| 営業期間 | 通年 | |
| 予約方法 | 予約不要 | 当日直接現地へ |
| in / out | フリー | 制限なし(常識の範囲内で) |
| 料金(利用プラン) | 無料 | |
| (内訳) | 使用料 | 0円 |
| 駐車料金 | なし。駐車は道路反対側無料駐車場へ | |
| 設備 | 管理棟:あり | 受付は不要 |
| 売店 なし | ||
| トイレ:1ヵ所 | 水洗・和洋混合 | |
| 風呂:なし/シャワー:あり | シャワー100円/3分 ※4/1~11/30まで(2025年) | |
| 炊事棟:1ヵ所 | ||
| 灰捨て場:なし | ||
| その他施設: | 遊歩道、プール 等々 | |
| ごみ | 持ち帰り | |
| 直火の可否 | 不可 | 要 焚き火台、焚き火シート |
| 薪の調達状況 | 可 | 易 □□□☑□ 難 |
| 電波状況 | 普通 | ※楽天モバイル |
| 客層(主観) | ソロ □☑□□□ ファミリー | |
| 獣・虫 | 巨大フナムシ | |
| 場内路面状況 | 舗装路 | ※車は搬入出のみ入島可。※バイクは要相談 |
| 買い出し | スーパーマーケット | ダイレックス 枕崎店 約2.8km |
| コンビニ | ファミリーマート 畑野立神店 約2.6km | |
| 温泉 | 枕崎なぎさ温泉 | 約6.0km |
火之神公園キャンプ場 予約はどうする
予約不要、料金無料で利用できます。
【予約不要】
当日、現地に到着して空いているスペースを見つければ、そのまま設営できます。「思い立ったときにふらっと寄れる」という、旅人にとって理想的なシステムです。
【現地での受付もなし】
管理棟はありますが受付は不要です。公園管理のための巡回が行われているようです。
【利用料はもちろん0円】
受付がないため、当然ながら利用料の支払いも発生しません。
火之神公園キャンプ場 サイトの様子

火之神公園のキャンプサイトは、大きく分けて2つのエリアに分かれています。
- 開放感抜群の「芝サイト」:海景眺望よし、日当たり良好
- 風を凌げる「砂土林間サイト」:日陰・搬入の利便性
- 全面車両乗り入れ不可(駐車場は道路向かい)
日当たり良好、開放感抜群の海側「芝サイト」

海沿いに広がるメインのエリアです。
- ロケーション: 目の前に東シナ海、立神岩、開聞岳を望む最高のパノラマが楽しめます。
- 【地面】: 芝生
遮るものが何もないため、海風や波しぶきの影響をダイレクトに受けます。
日陰もないため、夏場や強風時はしっかりとした対策(頑丈なペグ打ちなど)が必須です。

風を凌げる「林間サイト」

駐車場からすぐ、樹木に囲まれたエリアです。
- ロケーション: 奥まった場所を選べば海からの強風を軽減できます。また場所によっては周りを木で囲まれたプライベートゾーンも点在しています。
- 地面: 砂土


駐車場からの距離が近いため、重い荷物を運ぶ距離を最短に抑えたいライダーにはこちらがおすすめです。
全面車両乗り入れ不可(駐車場は道路向かい)

公園内はバイク・自転車を含め、車両の乗り入れが一切禁止されています。
キャンプサイトから道路を挟んだ向かい側に広い駐車場があるため、そこへバイクを停めて荷物を運ぶスタイルになります。

火之神公園キャンプ場 施設の様子

キャンプサイト内にあるのは炊事棟と東屋がそれぞれひとつずつ。
道路を挟んだ駐車場横に公衆トイレがあります。
シャワー室はトイレ内にあります。

火之神公園キャンプ場 炊事棟

屋根があり、丸太風のデザイン。
向かい合わせに三つずつの蛇口が並び、シンクはひとつに繋がっている長いタイプです。

火之神公園キャンプ場 トイレ(公衆トイレ)

キャンプサイト内にはトイレはありませんが、道路を挟んだ駐車場のすぐ横にある公衆トイレを利用することができます。

水洗式で、洋式と和式の両方が備わっています。
予備のトイレットペーパーが備わっているのが大変ありがたいです。


男女別の入り口の真ん中にはバリアフリートイレも完備されています。


手洗い場所には鏡があり、周りには小物を置ける十分なスペースがあります。
コンタクト使用者には使い勝手の良い洗面スペースがあります。

また、洗面台の隣には底の深い多目的流し(スロップシンク)も設置されており、汚れ物(例えば衣類等)を洗うのにも重宝します。
無料キャンプ場の付帯施設としては、非常に充実した設備と言えるでしょう。
火之神公園キャンプ場 シャワー室

トイレ内にコイン式のシャワー室が1室完備されており、100円で3分間利用することができます。

内側から鍵を閉められるので、防犯面でも安心して利用できます。
利用期間が設けられており、2025年は4月1日から11月30日まででした。
ちなみに小銭がないときは駐車場内に自販機があるので、万が一の時はそこで飲み物を買っておつりを入手しましょう、

火之神公園キャンプ場 灰捨て
場内での直火は禁止されていますが、焚き火台と焚き火シートを併用すれば焚き火を楽しむことが可能です。
ただし、場内に消し炭や灰を捨てる場所は用意されていません。
そのため、燃え残りや灰はすべて持ち帰るのがルールです。
火之神公園キャンプ場 ゴミはどうする?

消し炭や灰を含め、すべてのゴミが持ち帰りとなっています。
火之神公園キャンプ場 その他施設

キャンプで利用できる施設としては、サイト内に東屋がひとつ設置されています。
急な雨に見舞われた際の避難先や、設営前・撤収後の強い日差しを避ける休憩場所として、こうした屋根のあるスペースは非常に重宝します。
ただし、こちらはあくまで公共公園内の施設であり、キャンプ利用者専用ではありません。
一般の散策者や観光客も利用するため、占領したりせず、譲り合って利用しましょう。
火之神公園キャンプ場体験レポ:天草~薩摩半島西岸をなぞる旅。風に吹かれた薩摩キャンプ

この場所を訪れたのには、ある「旅の約束」のような動機がありました。
以前、鳥取の無料キャンプ場で一晩を共にした自転車放浪キャンパーさんとの出会いです。
日本中を股にかけて旅を続ける彼から、「ここだけは外せない」と教わった日本指折りの無料キャンプ場の名前を3つ授かりました。
そのうちのひとつが、薩摩半島の南端に位置するここ、火之神公園キャンプ場です。
無料であることはもちろん、何より「夕陽の景色が素晴らしい」という彼の言葉がずっと胸に残っていました。
これまで薩摩半島の西岸を走り抜けたことがなかった私にとって、絶好の機会が到来。
天草から陸路で南下し、ツーリングの果てに辿り着いたこの地で一晩を過ごした、
リアルな体験レポートをお届けします。
※道中の天草~薩摩半島西岸をなぞるツーリングの様子を共に辿りたい方は、このまま下へ読み進めてください。
※キャンプ場の詳細・滞在の様子をすぐに見たい方は以下のリンクから、ジャンプできます。
👉【滞在編】火之神公園キャンプ場 絶景と暴風の狭間で。
【道中編】天草から枕崎、西海岸を貫く『記憶』のロード
前夜を過ごした天草の「小島公園キャンプ場」を後にし、陸路で薩摩半島の西岸を目指す。
陸路を選んだ先の絶景と、道の駅で触れた一期一会の縁
フェリーを乗り継ぐ獅子島~諸浦島航路も旅情があって惹かれたが、到着時間が読めない不安とコスト面を考慮し、今回は迷わず陸路を選択。

結果、島と島を繋ぐ橋から眺める海は息を呑むほどの絶景で、バイクを走らせる快感を存分に味わうことができた。


途中の「道の駅 不知火」で一休み。

驚いたことにバナナが一房わずか50円で売られており、これがそのまま朝食となった。

バナナを手にぶらぶらさせて東屋へ向かうと、そこには白装束に身を包んだ男性の姿があった。
九州にもお遍路があるのか?と驚いたが、実際に存在し、しかも彼は歩きで巡っているという。
さらに話を聞けば、同じ東京から来た同い年。
東京から遠い九州の空の下、不思議な縁に話が弾み、互いの旅の無事を祈り合ってその場を後にした。
道の駅 不知火

5日ぶりの風呂。レトロな湯治場「川内高城温泉」で共同湯に浸かる

次に向かったのは、薩摩川内市の山間に位置する「川内高城温泉」だ。
西郷隆盛も愛したというこの温泉街は、昭和にタイムスリップしたかのような風情ある街並みが今も残る。

今回は、地元の人々に混じって「共同湯」を利用した。

入り口の番台は無人。料金は大人200円で、備え付けの料金箱へ現金を投入するセルフスタイルだ。
小銭がなくてもPayPayで支払える点に、わずかな現代の息吹を感じる。
ガラガラガラ…、木製の引き戸を開けると、中央に翡翠色のタイルが美しい湯船がぽつんと鎮座していた。丸い弁当箱を半分に仕切ったような、独特な二連の湯船だ。先客の地元の方が一人おられたが、軽く会釈を交わしまずは入念に体を洗う。
いざ、5日ぶりの湯を堪能すべく足先を伸ばすと、熱くて入れた足先をゆっくりリターン。
地元の方は平然と浸かっていたが、無色透明のその湯は驚くほどの高温だった。じわじわと体を慣らし、ようやく肩まで浸かると、自然と「くぅーっ」という声が漏れ、静かな浴室にこだました。
湯上がり、体は湯気が立ち上るほど熱々に火照っていた。
外気も相当な暑さだったが、あの極熱湯に比べれば、肌を撫でる空気さえ爽やかな風に感じられる。
これからさらに南下する体と心に、心地よい喝を入れてくれたようだった。
川内高城温泉 共同湯
大人 200円

万世にて 南下する指先を止めて。
鹿児島県に入った。 ここにきて、この旅で初めての雨に降られた。

といっても天気雨で、熱せられた身体を叩く雨露がむしろ心地よいくらいだ。
南を目指して愛車を走らせていると、ふと一枚の看板が目に留まった。
『万世特攻慰霊碑』。
知覧の存在は知っていたが、ここにもあったのか。一度はそのまま通り過ぎたものの、日本人として立ち寄るべきだという思いが込み上げ、すぐさま踵(きびす)を返した。
館内に足を踏み入れると、引き揚げられた零式水上偵察機が、その巨体を横たえるように展示されていた。

鈍く光る機体に刻まれた無数のキズを目の当たりにすると、言葉にならない感情が胸に迫る。

壁一面には、特攻兵たちの家族へ向けた遺書や手紙が、彼らの写真と共に並んでいた。
写真に写る彼らは、まだ17歳から20歳そこそこの青年たちだ。
彼らがどのような想いでペンを握り、どのような覚悟で空を見上げたのか。
そうせざるを得なかった当時の時代の重みに、ただ静かに立ち尽くすしかなかった。
万世特攻平和祈念館
入館料 310円

絶景島 過去にあった銀幕の痕跡
目指す枕崎まであと少しのところまで来たが、せっそくここまで来たのだ。
ショートカットをせず西側の海をなぞるように、あえて大きく迂回するルートを選んだ。
国道とはいえ、激しいアップダウンが続く道。
タンクを挟む両太腿に力を込めて南下を続ける。
ふと、海の上に浮かぶ不思議な形をした島が目に飛び込んできた。

名前も知らないその島は、切り立った岩肌がなんとも印象的な形をしており、思わずバイクを止めた。
しばらく走ると、その島を望む展望スペースと看板が現れた。
看板の文字を追うと、驚きの記録が並んでいた。

島の名は「沖秋目島」。
『―ショーン・コネリー扮するボンド?キッシー鈴木?映画、撮影…。』
連想ゲーム?
ボンドって、まさかあの『ジェームズボンド』?
後藤鼻展望所

さらに進むと、道沿いに『映画007撮影記念碑』が立っていた。

へぇー! こんな場所で、あの世界的な名作のロケが行われていたのか。
改めて島を眺めてみる。絶景であることは間違いないが、「007」の舞台だと言われると、どこかミステリアスな、秘密基地を隠し持った謎の島に見えてくるから不思議なものだ。
007撮影記念碑

薩摩半島の西岸。思いがけず、実に見どころ満載の楽しいツーリングとなった。
気づけば時間はだいぶ押している。
予約不要のキャンプ場とはいえ、さすがに先を急がなければならない。
やがて辿り着いた枕崎の市街地。手早く買い出しを済ませ、今夜の拠点となるキャンプ場を目指す。
ダイレックス 枕崎店
買い出し(氷が安い 2kg100円)

【滞在編】火之神公園キャンプ場 絶景と暴風の狭間で。
枕崎の市街地を抜け、いよいよ今夜の滞在先へと向かう。
海沿いを走るその道は「火の神ロード」と呼ばれているらしい。
前方には、海へと突き出した半島が姿を現した。お、あれかな?

そのまましばらく走ると、広々とした駐車場に到着。

どうやらこのあたりが目的地のようだが、肝心のキャンプサイトはどこだろうか。
バイクを降り、ヘルメットを脱いで道の向かい側へと歩を進める。
どうやら、こんもりとした森に囲まれたエリアがサイトになっているようだ。
入り口の看板には『バイク・自転車は乗り入れ禁止』の文字。
なるほど、全面乗り入れ不可か。
ならば搬入の手間も考え、まずは徒歩で中の様子をじっくりと探ってみることにしよう。
火之神公園キャンプ場 場内散策と場所選び

南国を思わせる背の低い木々の間を抜けると、視界がいきなり開けた。
目の前に広がるのは、東シナ海のパノラマ。
そして海に浮かぶように、端正な円錐形のシルエットをした「開聞岳」がその姿を現した。

あの垂直に切り立ったような山の立ち姿が、好き。
ここから望む薩摩富士の風景は、実に見事というほかない。
さらに右手の岬の先へと目をやると、海面からにゅっと突き出た奇岩「立神岩(たてがみいわ)」が鎮座していた。

「あれが…」 噂に聞いていた夕陽の名所。
だが、絶景に見惚れるのも束の間、身体を持っていかれるほどの強風に煽られる。

海に面した芝生サイトは最高のロケーションだが、風が容赦なく吹き付けていた。
「ザパン、ザパン」と波しぶきが風に舞い、霧雨のように飛んでくる。
とてもではないが、ここで設営を強行するのは無謀だと判断した。
おまけに、晴天なのに空には分厚い雲が居座り始めている。
期待していた夕陽は、どうやら望めそうにない…。
よし、安全な林間に逃げるもっともらしい理由ができた。

苦笑いしながら場内を見渡すと、先客のテントが一張り。
強風に耐えうる見事なシェルターを築き上げていた。
混雑は苦手だが、こうも「完ソロ」が続くと、同じ空の下に誰かがいるだけで不思議な安堵感を覚えるものだ。人間ってわがままだねぇ。
炊事棟や東屋の位置を確認しながら、さらに林間を練り歩く。
防風林に囲まれたエリアには、意外にもプライベート感のあるスポットが点在していた。
東屋の奥。海が見え、それでいて風をやり過ごせる絶好の場所を見つけた。
駐車場からはそこそこの距離があるが、あの波しぶきをかぶる芝生サイトに比べれば全然近い。
今夜の寝床は、ここに決めた。


無料キャンプ場、暗闇で交わす「こんばんは」。
「今夜は余計なモノは使わない」 そう心に誓っていたはずなのに、気がつけば駐車場とサイトを3往復もしてしまっていた。
設営を終える頃には、辺りはすっかり深い闇に包まれていた。
トイレに併設されたコインシャワーで一日の汗を流し、いよいよ宴の準備に取りかかる。
酷暑の中、ひたすら走り続けた自分へのご褒美、それは、キンキンに冷やしたチューハイだ。
氷で満たした保冷マグにチューハイを注ぐ。
今夜のごちそうは、鹿児島に来たからにはと奮発した『うな丼』。(注:ミニサイズ)
うなぎは短いのが4切れほど。箸でもつとピンとまっすぐの形を保っていた。はて、うな重とは?
かば焼きのタレをまとった錦糸卵が旨かった。

闇の中、ザッパーンと激しく打ち付ける波音と、防風林を揺らす風の音だけが響く。
無料キャンプ場ゆえの治安への不安も少しはあったが、ここは全く問題なさそうだ。

食後、明日のルートに思いを馳せていた、その時だった。
暗闇の中から、二人の男性が様子を伺うようにウロウロと近づいてくる。
うっ…こんな夜分に、一体何事だ…?輩ではなさそうだが…。
ここは先手必勝。あえてこちらから「こんばんは」と声をかけた。
聞けば、彼らは宮崎から来た親子で、夕方に出発して今しがた到着したばかりだという。
設営場所を求め、暗闇の中を彷徨っていたのだ。
明るいうちに場内を歩き回っていた強みを活かし、いくつか候補地をアテンドして回る。
結局、彼らは駐車場からほど近い場所に腰を落ち着けることに決めたようだ。
互いに顔を見せ、言葉を交わしておく。
これこそが、無料キャンプ場を安全に、そして心地よく過ごすための「心得」なのである。
高波警報。深夜のテントを叩く声。
夜空には星が現れる様子もないので、早々にテントに入ってコットに寝転がることにした。
どのくらい眠っていただろうか。
突然、テントのフロント越しに「こんばんは、起きてますか!」と鋭い声が響いた。
意識が覚醒するより先に、慌ててズボンを探すが、暗闇の中で見当たらない。
仕方なく脱ぎ捨てていた服を腰に巻き付け、寝ぼけ眼でジッパーを開けると、そこには先ほどの父親が立っていた。
「今、ここ、高波警報が出てますよ! 危険なので、私たちは撤収して駐車場で車中泊に切り替えます」
促されるまま海に目をやると、「ザッパーン!」と激しい音が響き、波しぶきが芝生を叩きつけている。
「…ありがとうございます。」 辛うじてそうお礼を伝えたものの、寝ぼけていたのか、その後の記憶が判然としない。
あの時、彼らの忠告を素直に受けとっていれば…。
青い空と碧い海
という事態にはならず、平穏な朝を迎えた。

テントのジッパーを開けると、そこには鮮やかな朝が広がっていた。

空はどこまでも高く青い。そして眼前の海は、吸い込まれるような深い碧を湛えている。
顔を洗いに公衆トイレへ向かったが、昨晩の親子の姿はすでになかった。
早朝に発たれたのだろう。
それでも、ありがたいよな。やはり旅先での挨拶は大切だ。
昨夜の彼らの気遣いを思い返し、独りごちて深く頷いた。
サイトに戻り、コットを外に出して軽い朝食を摂る。

穏やかな時間を楽しんでいたその時、テントの中から「カサカササ……」と聞き覚えのある不吉な音が響いた。
いやな予感は的中、またしても「ヤツ」の登場だ。
しかも今回は、テント内への侵入を許すという痛恨の大失態。
そこにいたのは、かつて天草で遭遇した個体に勝るとも劣らない、巨大なフナムシだった。

さすがに見てみないふりをしてテントをたたむわけにはいかない。
格闘の末、丁重に外へとお引き取り願った。
やれやれ、苦笑いしながらテントを畳む。

搬出は無理して荷物を抱えて運び、なんとか2往復で済ませることができた。
出発前、名残惜しさに最後にもう一度だけ海を拝む。
昨夜と比べれば随分と落ち着いたものの、それでもまだ波は高く、白い飛沫を上げ続けていた。

火之神公園キャンプ場:まとめ

今回の火之神公園キャンプ場での体験を振り返り、これからこのキャンプ場を目指すソロキャンプライダーの皆様へ、私なりの実感を書き残しておきたいと思います。
火之神公園キャンプ場:リアルな備忘録 利用してみて感じた「よかったところ」と「気になったところ」

サイトから、東シナ海を眼前に臨む贅沢なロケーションです。
ここから見る開聞岳は、まるで海に直接浮かんでいるかのように見え、その立ち姿は圧巻の一言。
右手に目をやれば、鋭く突き出た立神岩が鎮座している姿が見られます。
特にこの立神岩をシルエットにした夕陽の景色はライダーなら一度は拝んでおきたい(かった)、
至高の瞬間(だった)でしょう。
無料で利用できる上、且つこれらが同時に視界に入る景色は、まさに全国に名を轟かすこのキャンプ場の魅力の所以だと思いました。


サイトと駐車場が離れているため、バイクが見えないことへの不安はありましたが、
結果的には杞憂でした。
とはいえ、無料スポットである以上、チェーンロック等で自衛しておくのが安心です。
搬入時は一般道を横切る必要があります。
車通りは少ないものの、移動中に荷物を落とさないよう、バラけさせず一括でパッキングしておくのがスムーズに搬入出を行うポイント。
設営場所にもよりますが、駐車場からの距離を考えると極力コンパクトなUL装備が望ましいでしょう。
全国放浪キャンパーに教わった、至高のキャンプ場3選とは
キャンプ場では、様々な経験を持ったキャンパーと交流する機会が稀にあります。
かつて鳥取のキャンプ場で出会った熟練の旅人に、「ここは間違いない」と太鼓判を押された最高のスポットを3ヶ所を北から順にご紹介します。
桜の名所であり、湖畔の静かな環境が魅力。無料でありながらオートサイトが利用できます。
東北ツーリングの拠点として多くの旅人に愛されているキャンプ場です。
鳥取砂丘に隣接し、砂丘観光の拠点として最高の利便性があります。
無料なのに管理人も常駐で安心できるキャンプ場です。
※2025年現在、CAMP VILLAGE 砂育 saikuと名前を変え有料化されています。

そして、今回ご紹介したこの場所です。
搬入の苦労を越えた先に、あの絶景が待っています。

最後に

柳茶屋が有料化されたように、このような素晴らしい無料キャンプ場が、時代の流れとともに姿を消していくのではないかという懸念はあります。
キャンプを愛するものとして、いつまでもその地を使わせてもらえるよう、マナーを守って利用し続けたいと強く思います。
本音を言えば理由はもっとシンプルに、
「だって、今回は夕陽を見ることができなかったんだもん」。
いつかまた、おそらく燃えたぎるような水平線を見るために、ここへ戻ってきたいと思います。
さて、火之神の風に送られ、V-Strom250は再び走り出します。
次は、いよいよ本土最南端へ。
つづく






