高千穂を出発し、いよいよ待望の阿蘇ツーリングがスタート。
南阿蘇から「左まわり」で北上。名物の赤牛丼に舌鼓を打ち、砂千里ヶ浜の異世界感に圧倒されるなど、阿蘇の魅力を凝縮した一日を巡りました。
阿蘇の余韻に浸りながら、県境を越えて大分県へ。
無料の拠点『辻河原公園キャンプ場』へと滑り込みました。
今回は、絶景の阿蘇ツーリングの様子から、このキャンプ場で一夜を過ごした記録までを詳しくお届けします。
辻河原公園キャンプ場の魅力
- 完全無料・予約不要
- フリーサイトへのバイク乗り入れ可能
- 阿蘇ツーリングの「前線基地」としての立地
完全無料・予約不要
このキャンプ場最大の強みは、事前の計画に縛られない「自由さ」です。
天候やその日の走りの進み具合に合わせて、直前に行き先を決められるため、フットワークの軽さを重視するツーリングスタイルにはこれ以上ない条件です。
予約の電話やキャンセル料を気にすることなく、旅の流れのままに滑り込める安心感があります。
また、ここで宿泊費を抑えることで、その分を現地のグルメやガソリン代に回せるメリットもあります。
バイク乗り入れ可能なフリーオートサイト
何よりも魅力的なのは、サイト内への車両横付けができる点です。
無料キャンプ場でありながら、実質的にフリーオートサイトとして利用できるのは、旅人にとって大きなメリットです。
テントのすぐ横に愛車を駐輪できるため、設営や撤収がスムーズなのはもちろんのこと、夜間もバイクを間近で見守れる安心感は、ソロのキャンプライダーにとって何物にも代えがたい魅力と言えます。
阿蘇ツーリングの「前線基地」としての立地
ここから阿蘇の主要スポットまでは1時間前後かかるため、決して阿蘇のど真ん中ではありませんが、
「阿蘇・久住、攻略の前線基地」として、戦略的に優れたポジションに位置しています。
あえて阿蘇周辺のキャンプ場を選ばずここを拠点にする最大の理由は、旅の前後における圧倒的な立ち回りの良さにあります。
早朝に出発すれば、1時間後には交通量の少ない最高のコンディションで阿蘇の絶景道へ駆け上がることができ、逆に阿蘇を満喫した後は、大分・別府方面へ抜けるルート上の休息地として機能します。
また、阿蘇の山中とは異なり、すぐ近くに「道の駅 原尻の滝」があるほか、アクセスルートとなる国道57号線の竹田市周辺にはスーパーやコンビニが揃っており、買い出しに苦労することもありません。
何よりここを目指す理由は、スケジュールが変動しやすいロングツーリングにおいて最強の無料・予約不要の魅力。
利便性と自由度のすべてを兼ね備えた、阿蘇攻略に欠かせない極めて頼もしい野営地と言えるでしょう。
辻河原公園キャンプ場 基本データ
| 訪問年月 | 2026/8 | 晴/晴 |
| 名称 | 辻河原公園キャンプ場 | ※公式サイトなし |
| 場所 | 〒879-6632 大分県豊後大野市緒方町辻 | – |
| 業態 | 市営 | 豊後大野市 商工観光課 |
| ロケーション | 河畔・田園 | 緒方川沿いののどかな風景 |
| サイト | フリーオートサイト | 芝 □□☑□□ 柔 |
| サイト規模 | 中規模 | 約30張程度 |
| 車両乗り入れ | 可 | バイク・車ともにサイト内横付け可能 |
| 営業期間 | 通年 | 定休日なし |
| 予約方法 | 予約不要 | 当日そのまま利用可能 |
| in / out | フリー | 制約なし |
| 料金(利用プラン) | 無料 | |
| (内訳) | 使用料 | 0円 |
| 駐車料金 | なし | |
| 設備 | 管理棟:なし | 無人管理 |
| 売店:なし | (道の駅利用推奨) | |
| トイレ:あり | 水洗・和洋混合 | |
| 風呂:なし/シャワー:なし | ||
| 炊事棟:あり | 但し飲料不可 | |
| 灰捨て場:なし | ||
| その他施設:特になし | ||
| ごみ | 持ち帰り | 消し炭、灰を含む全て |
| 直火の可否 | 不可 | 要 焚き火台、焚き火シート |
| 薪の調達状況 | 不可 | 難 □□☑□□ 易 |
| 電波状況 | 良好 | ※楽天モバイル |
| 客層(主観) | ソロ ☑□□□□ ファミリー | |
| 獣・虫 | イノシシ | 夜はクツワムシの大合唱 |
| 場内路面状況 | 未舗装 | ※サイドスタンドプレート推奨 |
| 買い出し | スーパーマーケット | フレイン緒方店 約4.4km |
| コンビニ | ファミリーマート 緒方店 約3.3km | |
| 道の駅 | 道の駅 原尻の滝 約1.9km | |
| 温泉 | 竹田温泉 花水月 | 約11.0km |
辻河原公園キャンプ場 予約はどうする
辻河原公園キャンプ場は、事前の申し込みや予約の必要がなく、誰でも年中自由に利用できます。
公式のキャンプ場専用ホームページは開設されていませんが、公園の管理は豊後大野市 商工観光課が所轄しています。
豊後大野市 商工観光課 0974-22-1117
辻河原公園キャンプ場 サイトの様子

辻河原公園キャンプ場は、緒方川のほとりに広がる開放感抜群の全面芝生オートフリーサイトです。
エリアは大きく分けて「広場エリア」と「川沿いエリア」の2つ。
それぞれ進入ルートが異なるため注意が必要です。

また、敷地内にはゲートボール場が隣接しており、トラロープで区切られています。そちらへの設営は厳禁ですので、マナーを守って利用しましょう。

サイトの特徴:「芝生」

サイト全体が芝生に覆われており、クッション性があるため寝心地は良好です。
ただし、バイクで乗り入れる際は注意が必要。
サイドスタンドが地面に沈み込みやすく転倒のリスクがあるため、サイドスタンドプレートや代わりの板を準備しておくことを強くおすすめします。
「広場エリア」の特徴と進行ルート



トイレ棟の裏手に広がる、広々としたフラットなエリアです。設営がしやすく、メインの利用場所として人が集まりやすいため、グループキャンプにも向いています。



公園入口から入り、トイレ棟の右側にある道から迂回するように進むとアクセスできます。
舗装道なので走行が楽で、サイトへアクセスしやすいです。
「川沿いエリア」の特徴と進行ルート


緒方川を間近に臨み、せせらぎを聴きながら過ごせるエリアです。
広場に比べ木々が点在しているため、場所を選べばプライベート感を確保できます。
より野営感を楽しみたいソロライダーには良いロケーションでしょう。


公園入口からトイレ棟の左側にある轍に沿って進入します。
ただし、車による轍(わだち)の凹凸及び、フィールド内は広場に比べて草が茂り地面が見えにくいため、バイクの走行にはより注意が必要です。
辻河原公園キャンプ場 施設の様子

辻河原公園キャンプ場には、キャンプに必要な最低限の設備が備わっています。
高規格なキャンプ場とは異なり、あくまで「無人管理の公園」であることを理解して利用しましょう。
特に注意したいのが、公園内の水道水は飲料不可である点です。
調理や飲み水としての利用はできないため、あらかじめ飲料水を確保しておくことをお勧めします。

辻河原公園キャンプ場 炊事棟

場内には1ヵ所、屋根付きのシンプルな炊事場があります。

片方に二つずつシンク付きの水道があり、ものを置くスペースもそれぞれ備わっています。
重要なのは公園内の水道水は「飲料禁止」となっている点に注意です。
ここの水道は汲み上げた地下水を利用しており、マンガンや鉄分を非常に多く含んでいる旨、警告文が掲示してあります。

マンガンや鉄分を過剰に含んだ水は、独特の金属臭やえぐみがあるだけでなく、以下のような影響があります。
- 健康への影響: 多量に摂取すると消化器系に負担をかけ、下痢や腹痛の原因となることがあります。
- 調理への影響: お茶やコーヒーを淹れると色が真っ黒に変色したり、料理の味が大きく損なわれたりします。また、調理器具に落ちにくい着色汚れが付着することもあります。
この水はあくまで「洗い物用」と割り切り、料理や飲み水には事前に道の駅やコンビニ等で確保した飲料水を使用しましょう。
辻河原公園キャンプ場 公衆トイレ

トイレについては、公園内に男女共用の公衆トイレが1ヵ所設置されています。
内部は小便器・和式便器があるスペースと、洋式便器のみがあるスペースに分かれています。
無料施設ながら予備のトイレットペーパーが備えられているのは非常に有り難いポイントです。



手洗い場には鏡があり、洗面用具などの小物を置けるスペースも確保されているため、朝の身支度にも重宝します。

なお、トイレ内の便器が茶褐色に変色していますが、これは水に含まれる金属成分によるもので「汚れではない」旨が明示されています。

清掃は行き届いており安心して利用できますが、前述したとおりコンタクトレンズを使用する方は特に注意が必要です。
金属成分が付着するとレンズの変色や目のトラブルに繋がる恐れがあるため、鏡の前で着脱を行う際の手洗い後、レンズや保存ケースへの水分付着には注意しましょう。
辻河原公園キャンプ場 灰捨て
明確な利用ルールは確認できませんでしたが、芝生を保護するため、直火は厳禁と心得ましょう。
焚き火を楽しむ際は必ず焚き火台と焚き火シートを併用し、地面にダメージを与えないよう配慮するのが利用者の責務です。
また、場内には消し炭や灰を捨てる場所は一切用意されていません。
焚き火をする場合は、燃え残りや灰はすべて持ち帰ることを大前提として、責任を持って行いましょう。
辻河原公園キャンプ場 ゴミはどうする?
消し炭や灰を含め、すべてのゴミは持ち帰りましょう。
阿蘇を駆け抜け、無料につられて訪れた辻河原公園キャンプ場体験レポ。はたしてその実態とは?

前泊した高千穂の仲山城跡キャンプ場をあとにした。
V-STROM 250の心許ない燃料タンクに、まずは阿蘇までのガソリンだけを給油し、目指すは火の国の心臓部、『阿蘇』。
本記事では、阿蘇をくまなく走り尽くし、その魅力を満喫したキャンプツーリングの記録とともに、
その日の終着点として選んだ大分県「辻河原公園キャンプ場」での一夜を綴ります。
「無料・予約不要」という甘い響きに誘われて辿り着いたこの野営地。
果たしてそこはライダーにとっての安息の地なのか、それとも…。
無料拠点としての真価とその実態を、レポートします。
※道中の阿蘇ツーリングの様子を共に辿りたい方は、このまま下へ読み進めてください。
※キャンプ場の詳細・滞在の様子をすぐに見たい方は以下のリンクから、ジャンプできます。
👉【滞在編】大分へ。阿蘇ツーリング後の安息の地、無料開放の「辻河原公園キャンプ場」
【道中編】南阿蘇から大観峰へ。絶景とグルメを大満喫。バイクで駆ける阿蘇フルコース

今回の阿蘇縦断ツーリングルート
宮崎県高千穂町を起点とし、阿蘇の南側から内輪山・外輪山の主要スポットを網羅。
大分県へと抜けるルートをなぞりました。
【今回のツーリングルート】
仲山城跡キャンプ場(起点)
↓
グリーンロード南阿蘇(ケニーロード)
↓
よも麺と居酒屋てんき
↓
数鹿流崩之碑 展望所
↓
草千里展望所 & 砂千里ヶ浜
↓
道の駅 阿蘇
↓
いまきん食堂
↓
大観峰
↓
原尻の滝(大分県)
↓
辻河原公園キャンプ場(ゴール)
ふたつの掲示板:ケニーロード 阿蘇ツーリングの幕開け

「阿蘇・くじゅう国立公園」の看板を捉えた。

バイクを止めると、遠くに阿蘇の山々が顔を覗かせる。よし、ついに阿蘇の懐に潜り込んだ!
そんな高揚感が全身を駆け抜ける。

有名な「Kenny Road」の掲示板を目指して走っていたところ、偶然見つけたのがこの場所、
『グリーンロード南阿蘇展望所』(南阿蘇村の看板がある方)だ。

正直なところ、阿蘇という存在をより鮮明に捉えるなら、目的地の(西の)掲示板よりもこちらの場所のほうが阿蘇の記憶を突き刺させるような風景だった。
眼下に広がる南阿蘇の村落と、その向こうに鎮座する阿蘇五岳。
思わずバイクを止めて見入ってしまう、文字通りの「絶景」がそこにはあった。

まずは走りの足を止めて、このパノラマを目に焼き付ける。阿蘇攻略のプロローグとしては、これ以上ないほど贅沢で幸先の良い幕開けとなった。
ここで、一人の阿蘇ライダーと語らう機会があった。
話を伺うと、地元の人間は敢えて中央のほうへは行かず、主にこの周辺の道を流して楽しんでいるのだという。
東京からきた自分は「せっかく来たのだから」と、がつがつ阿蘇の深部まで走り狂いたいと思ってしまうのだが…、なんて贅沢な日常なのかしら、と阿蘇ライダーを羨ましく思った。
Kenny Road 掲示板 東
グリーンロード南阿蘇展望所 (南阿蘇村看板)

当初の目的地としていたこの先にある掲示板へむかった。
熊本市街を見渡す抜けるような景観。ここから夜景をみたらさぞかしきれいだろうな。

この二つの看板が立つ景色を比較するならば、一方は文明の営みを俯瞰し、もう一方は火山の雄大さを仰ぎ見る。そんな対照的な二つの景色だった。

Kenny Road 掲示板
グリーンロード南阿蘇展望所

翡翠の麺に馬肉の旨味。阿蘇の玄関口、大津町の逸品「よも麺」とは?

阿蘇の本格的な攻略を前に、絶対に立ち寄らなければならない場所がある。
大津町に店を構える「よも麺と居酒屋てんき」さんだ。
店主さんとは私のキャンプ活動を綴ったSNSを通じて懇意にさせていただいており、
前回の阿蘇遠征でもここでエネルギーを補給した。
「こんにちは」と扉を開けると、そこには変わらぬ店主さんの姿があった。
最初は少しおぼつかない様子だったが、話を重ねるうちに当時の記憶が蘇ったようで、近況を交えながらの再会を喜び合った。
さて、ここで頂ける「よも麺」とは一体何なのか。
ジャンルとしては『うどん』。だが、その中身は唯一無二だ。
馬骨で取った出汁をベースにした甘辛く濃厚なスープに、
鮮やかなヨモギを練り込んだ翡翠(ひすい)色の麺が泳ぐ。
そこへじっくり煮込まれた馬すじ肉、生姜、ネギが彩りを添える。

翡翠色の麺は、つるつるとした喉越しとしこしことした力強いコシを併せ持つ。
主役の馬すじ肉は噛むほどに旨味が溢れ、脂身の甘さが際立つ。
スープはコクが深いのに、不思議とくどさはなく後味はすっきり。
この三位一体のバランスに、生姜とネギが鮮烈なアクセントを加えてくれる。

店主さんに見送られ、店を後にする。 馬肉を食べて「馬力」もしっかり蓄えた。
いよいよ、阿蘇の本丸へと向かう準備は整った。
よも麺と居酒屋てんき
冷やよも 880円

数鹿流崩之碑:震災の記憶とヒノ国復興を願う三刀流の剣豪

ガソリンスタンドを探して地図を開くと、すぐ近くに『ゾロ像』?の文字を見つけ、立ち寄ってみることにした。ゾロってなんの?解決ゾロリ…?
そこには鈍く光を反射するワンピースの『ゾロ』が立っており、作品に詳しくない私でもその圧倒的な立ち姿には見入ってしまった。
周囲で熱心にシャッターを切るアジア系観光客の姿に、この地が世界中から注目され、勇気を与えていることを肌で感じた。
ゾロ像(大津中央公園)

本来の目的である給油へ向かうと、ここで嬉しい誤算があった。
高千穂のスタンドに比べて、ここ大津町はリッター単価が21円も安いのだ。
高千穂で必要最小限に留めた判断はまさに作戦勝ち。
にんまりしながらタンクをガソリンで満タンにした。
給油を終え、大津町から阿蘇へ入る際にここも必ず立ち寄らねばならない場所へと向かう。
「数鹿流崩之碑(すがるくずれのひ)展望所」だ。

ここは2016年の熊本地震による大規模な山腹崩壊の跡地であり、剥き出しになった大地の傷跡と、谷底へ消えた旧阿蘇大橋の橋桁が、今なお震災の凄まじさを語りかけてくる。
新たに架けられた新阿蘇大橋を横目に、自然の猛威とそこから立ち上がる復興の歩みをしっかりと目に焼き付けた。
自然への畏怖を改めて刻み直し、気を引き締めて阿蘇の懐へと切り込んでいく。
いよいよここから、本格的な阿蘇攻略が始まる。
数鹿流崩之碑 展望所

草千里と砂千里:「動中の静」と「静中の動」

阿蘇の懐を駆け上がり、いよいよその核心部へと迫る。
まずは草千里展望所からの眺めだ。

そこには見事な風景が広がっていた。
一面に広がる青々とした草地、緑に覆われた山、そして背後に幾重にも連なる山々の重なり。
草地の中に見える水たまりのひとつが、まるで岩手で見損ねたドラゴンアイのような神秘的な姿を見せていたのが印象的だった。
草千里展望所

視線を動かすと、遠くでモクモクと白い噴煙を上げる山がある。あの先に広がるのが「砂千里ヶ浜」だ。
ここから先はまだ足を踏み入れたことがない未知の領域。
近くまで行くと、有料道路(阿蘇山公園道路)の料金所があった。

手前の無料駐車場から歩くという手もあるようだが、この道はどうしてもバイクで走りたかった。
受付のお姉さまによる「ここから歩くと30分以上はかかるわよー」という、ある種の殺し文句も後押しになった。
「それじゃあ、400円分、堪能させてもらいますわよー。」

距離にして約2km。車通りも少なく、視界を遮るもののない贅沢な道。
この道を駆け抜けるためだけに料金を払う価値は、十分にあると感じた。

風や生命が躍動する草千里が「動中の静」とするならば、
この砂千里ヶ浜は沈黙した大地の下でマグマが煮える「静中の動」の世界だ。

「ぜんそくの方は火山見学を禁止します」という厳しい警告文が目を引く。

火山ガスの安全レベルが設定されており、常に危険と隣り合わせの場所なのだろう。
周囲には有事に備えたトーチカのような避難シェルターが点在し、ここが今も呼吸を続ける活火山であることを強く意識させられる。

噴火口からはもうもうと煙が上がっており、その全貌を拝むのは難しい。
しかし、風に煽られて噴煙が切れた瞬間、エメラルドグリーンの火口湖がちらりとその姿を現した。

それは恐ろしいほどに美しく、地球の鼓動を至近距離で感じた瞬間だった。
砂千里ヶ浜駐車場
阿蘇山公園道路 二輪車 400円

煩悩の赤牛と、レトロな内牧散策
時刻は14:00。 道端で放牧されている牛をバイクから一見微笑ましく眺める。
しかし、仮面の中では「赤牛食いてぇ…」という黒い煩悩がたぎっていた。

かつて食べたあの味が忘れられないの…。そう彼は言った。(独り言。)
今回の旅で無料キャンプ場を渡り歩いてきた理由のひとつは、ここで贅沢をするためでもあったといっても過言ではない。
以前、赤牛を食べに訪れた際、2時間近く待たされた記憶がよぎり、せめて「食べたという証」だけでも得ようと道の駅へ向かったが、赤牛弁当は1800円…。
さすがブランド牛、弁当にしては予算オーバーだ。ここで妥協して唐揚げ弁当を食べるわけにはいかない。どうせだったら、店舗で味わいたい。

バイクへ戻ると、ナンバーを見て地元のタクシー運転手が声をかけてきた。
「東京からね? おお、よお来たねぇ」
タクシーの運ちゃんなら確かな情報を持っているはず。
近くのオススメを尋ねると、「有名どころなら、やっぱり『いまきん』かなぁ~」と教えてくれた。
よし、目的地が定まった。
道の駅 阿蘇

いまきん食堂に到着すると、案の定、長い列ができていた。

品書きの「あか牛丼 2100円」を確認し、すぐさま名前を書く。
待ち時間の間、列の後ろにいた同い年くらいの男性二人組と世間話で盛り上がったが、ほどなくして「おひとり様」の特権で列を飛び越え、先に案内されることに。
先ほどまで「長い待ち時間ですねぇ」と共感し合っていた二人には申し訳ない気持ちを装うとしたが、
ニタニタ感が溢れてしまい、へたくそな顔つきをしてしまった。

店内には有名人の色紙がずらりと並んでいる。よく見ると、マイケル・ジャクソンや(スティーブ)ジョブズ?!の名前まで連なっていた。

どん、と置かれたのはジョッキになみなみと注がれた麦茶。
これがデフォルト?と驚きつつ、渇いた喉に流し込む。ぷはー、たまらん、もう一杯!

そして、ついに真打ちが登場。 丼のフタを取ると、そこには美しいピンク色の断面を見せる赤牛の絨毯が敷き詰められ、中央には半熟卵が鎮座している。

うまい…。 肉の旨味とタレ、そこに半熟卵が絡み合う。
食の快楽とは、まさにこの瞬間を指すのだろう。
会計時、どうしても気になって「マイケル・ジャクソンも来られたんですか?」と尋ねてみたが、
「ええ、まあ…」と、なんとも曖昧な返事だった。
いまきん食堂
赤牛丼 2,100円

食後、福引券をもらったので提携店へ向かう。景品はポケットティッシュだったが、
おかげで内牧(うちのまき)のレトロな街並みを歩くきっかけになった。


お、ガチャガチャがあるぞ。
昭和の香りが漂う駄菓子屋に足を踏み入れると、ガラスの引き戸に懐かしい菓子が並んでいる。
奥にはインベーダーゲームの筐体や手弾きのパチンコ台があった。

懐かしくなり銀玉鉄砲を探したが、代わりにあったのは高価なBB弾のピストルだった。
並ぶ品々に時代の変化を感じつつも、阿蘇にこれほど味わい深い商店街があることに驚きながら散策を楽しんだ。
駄菓子屋チロリン村

阿蘇びの〆は、大観峰。
内牧の商店街からバイクを走らせ、阿蘇の外輪山を駆け上がって大観峰の駐車場へ滑り込んだ。
展望所まで歩くと、そこには阿蘇五岳を一望する大パノラマが広がっていた。
大観峰から望む阿蘇五岳の連なりは、「阿蘇の涅槃像(ねはんぞう)」ともいわれるらしい。
お釈迦様が仰向けに寝ている姿に例えられるそのシルエットが、夕刻の光の中でくっきりと浮かび上がっている。

さっきまであの中岳の火口で噴煙を間近に眺め、麓の町で赤牛を堪能していたのだ。
自分が走ってきたルートをこうして高い場所から俯瞰すると、阿蘇という土地の圧倒的なスケールが改めて身に染みる。
時刻は16:00。『いきなり団子』はすでに売り切れで食べ逃してしまった…。
大観峰

さて、ここらで今回の阿蘇ツーリングは打ち止めとしよう。
今夜の拠点となる大分の無料キャンプ場へ向けて舵を切る。
帰り道は、夕暮れ前のミルクロード。
遠くに見える牛を見る目も穏やかに。
「何回来ても、やっぱり阿蘇はいいな」
ヘルメットの中でそんな独り言が漏れるほど、最高のツーリングだった。

【滞在編】大分へ。阿蘇ツーリング後の安息の地、無料開放の「辻河原公園キャンプ場」

大分県に入った。
キャンプ場へ向かう国道57号沿いには大型スーパーが立ち並び、どこで買い出しをすべきか目移りしてしまう。
HIヒロセ スーパーコンボ竹田店

無事に食料を調達し、目的のキャンプ場まであと一息というところで、
『道の駅 原尻の滝』という案内板が目に留まった。

「どれどれ」とハンドルを向け進んでいくと、
突然、道路のすぐ脇で大地がズドンと陥没したような巨大な滝が現れた。

あまりに唐突な出現に驚き、そのままスルスルと通り過ぎてしまう。
気がつけば滝の先にある鳥居の前で止まっていた。

慌ててUターンし、改めてその姿を拝む。

のどかな田園風景の中に、突如として現れる大瀑布。
激しい水しぶきを上げながら、力強く流れ落ちるその姿は圧巻だ。
バイクに跨ったままでこのスケール感を堪能できるのは、ライダーにとって最高に贅沢なロケーションと言えるだろう。
充分見たところで、今夜の宿、辻河原公園へと向かう。
原尻の滝

辻河原公園キャンプ場 到着?
原尻の滝をでてわずか3分くらいでキャンプ場周辺に到着した。

キャンプ場を示す看板は見当たらなかったが、ナビを信じて川に架かる橋の手前を降りていく。

降り立った先、トイレらしき建物を中心に道が二手に分かれていた。左手には草むらの奥へと轍が伸び、右手には舗装路が続いている。
いつもの「勘」が働き、私は迷わず右の舗装路を選択した。
少し進むと、右側にぽつんと民家が現れ、左側には開けた広場が広がっている。
テントの姿が視界に入った。よし、設営できそうだ。
そのままノンストップでサイト内へ進入する。
場内にはぽつりぽつりと先客のテントが点在していた。
私は適度な距離を保てる場所でV-STROMを止める。停車したその場所が、そのまま今夜の設営地点となった。

ま、ここでいっか。
西日は落ちそうだし、朝日は後ろの低い木が遮ってくれるだろう。

場内散策と施設確認
日が落ちる前になんとか設営を完了。 明るいうちに、インフラ確認を兼ねて場内散策へと繰り出す。
まず、ここがメインエリアとなる広場だ。

一面に手入れの行き届いた芝生が広がっている。日当たりは抜群だろう。
設営は広場の外周から埋まっていくスタイルのようで、混んできたらプライベート感はあまり期待できそうにない。
無料ゆえに、もし無法者が登場したら…と想定すると身構えてしまう。
私は広場の東端、ギリギリの場所に陣取った。
背後は緩い斜面になっており、低い木々が並んでいる。お隣さんも同じくらいの攻めた位置取りだ。
一方、川側は広場に比べて木立が多い。

川沿いのスペースへ足を踏み入れると、地面のようすが見えないほど草が生い茂っていた。
川面は見えない。

広場に比べれば、いくぶんかひっそりと過ごせそうな雰囲気だ。
だがこのコンディションをみると広場のほうがバイクキャンプにはよさそうだと思った。
広場と川沿いを隔てる絶妙な場所にソロの方が設営していたが、翌朝、そこが朝日を遮る好立地であったことを知る。あの位置取り、さては手練れの常連さんだろうか。

炊事場へ向かうと、そこには警告文が掲げられており気になるパワーワードが並ぶ。
「鉄、マンガン、飲用不可」

鉄分はまぁ、想像できるが、『マンガン』というワードには少し驚いた。
あまり身近に接しない重金属だと、さすがに不安がよぎる。
トイレを覗くと、便器の色に衝撃を受けた。

しかし、よく見ればこれは汚れではなく、井戸水による変色のようだ。
壁には「この色は汚れではない」と断り書きがあり、
管理者の「清掃は徹底しているぞ」という強い意思が伝わってくる。

設備自体は清潔に保たれており、無料ながらに感謝である。
サイトへ戻り、スマホでマンガンの人体への影響を調べてみる。

…うん、今夜この水を使うのはやめておこう。
バイクのパニアケースに入れっぱなしだった予備の水が、ここにきて初めて役に立った。

静寂を識(し)る者たち。四人のソロと無言の連帯
宮崎から熊本・阿蘇を駆け抜け、ようやく辿り着いた大分の地。
溜まった疲れを癒すべく、スーパーで仕入れた氷の袋をガバッと開ける。

熱気の渦中に、ひんやりとした冷気が顔を撫でる。至福の瞬間だ。
真空マグに氷をカランと放り込み、チューハイで満たす。
はぁぁ…お疲れ、俺、そしてVスト君。

今夜の夕食は、道中のスーパーで手に入れた割引シールの「逸品」揃い。
4割引の二色鳥弁当に、半額の柴漬け。
キャンプ場の水道問題(Fe/Mn 水)を思えば、調理不要な出来合いのもので済ませたのは大正解だった。

雨こそ降っていないが、辺りはやけに蒸し暑い。
温度計を見ると26.3℃、湿度は85%。

不快指数が高まるなか、宮崎の無印良品で仕入れておいた扇風機が真価を発揮する。
無風の原っぱでそよ風を自ら作り出し、肌に纏わりつく熱気を払ってくれる。

唯一の調理らしい調理はウインナー。貴重な飲料水をグリルパンに数滴垂らし、ちょい茹で加減に焼き仕上げる。
パキッとした食感と肉汁、中華山椒?が効いてビリっとする。これはこれでチューハイがすすむ。

辺りが深い闇に包まれた頃、一台のバイクが遠慮がちに入ってきた。
ほんのり灯る小さな明かりが闇に揺れ、やがて設営されたテントの影に吸い込まれていった。
早い…しかも、この暗闇の中で。熟練の業をみせるバイクキャンパー。
ふと気づけば、このフィールドには4人のソロキャンパー。
それぞれのテントを結ぶと、ちょうどきれいな四角形を描く位置関係になっていた。
皆が静寂を守り、思い思いの時間を楽しむ。
ここは、そんな「手練れ」が集まる場所なのだろうと感じた。
騒ぎ立てるのはテント裏で工事現場を思わせるような轟で鳴き続けるクツワムシだけだった…。
熱線迫る撤収劇と熱々バイク。地元に愛されるキャンプ地を跡に
朝、テントを開けると清々しい天気…、と言いたかったが、現実はすでに強烈な陽光が差し込んでいた。
時刻は7:30。それなのに、気温はすでに30℃を超えている。
テントの内側は、びっしりと結露をまとっていた。

ふと目をやると、夜に訪れたあのバイクキャンパーは、影も形もなくすでに去っていた。
まさに疾風のごときだ。

東側の木々で朝日を遮るつもりで設営したのだが、じりじりと日光がテントを這うように忍び寄ってくる。
完全に日が照りつける前に終わらせねば…。
まだ残っているわずかな日陰に荷物をまとめ、タイムリミット寸前で撤収を終えた。

隣のソロキャンパーさんも、ほぼ同時に撤収が完了。
「日陰のうちに終わってよかったですねー」と声をかけると、少しばかり世間話に花が咲いた。
地元の方だという彼は、大分に点在するいくつかの無料キャンプ場の中でも、ここが一番好きな場所なのだと教えてくれた。
彼を見送ったあと、バイクに跨るとシートはすでに熱々に焼けていた。

そういえば、この先に「石風呂」があったはずだ。最後に立ち寄ってみよう。
風呂セットをバイクの荷台に滑り込ませた。
隣のゲートボール場の脇を抜けて向かったが、そこには湯が絶え、ひっそりと佇む石風呂の遺構があるだけだった。

辻河原石風呂

あぁ、風呂行きたい…。

【まとめ】辻河原公園キャンプ場:節度あるキャンパーが集う無料キャンプ場だった

辻河原公園キャンプ場での一夜を振り返り、これからこの地を目指すソロキャンプライダーの皆様へ、私なりの実感を書き残しておきたいと思います。
実際に泊まって感じた「よかったところ」と「気になったところ」
「秩序ある空間」が保たれる理由とは?
「無料・予約不要・乗り入れ可」。
バイクキャンパーにとって、心強い「無敵の三拍子」が揃ったキャンプ場です。
しかし、ともすれば反面カオスな状態に陥りがちな条件が揃いながらも、場内には秩序ある静寂が保たれていました。
その大きな要因は、すぐ隣に民家があるという環境のせいではないか、と思いました。

サイトは民家の2階から丸見えで、視線が気になるというよりかは、利用しているこちらが少し申し訳なく思ってしまうほど。
しかし、この人の暮らしがすぐそこにあるという適度な緊張感が、結果として大騒ぎを抑制するマナーの向上に繋がっているのではないかと思いました。
ここには、静かに夜を過ごしたい「手練れのソロキャンパー」が集まる、良質で成熟した空間が広がっていました。
水質問題と対策
炊事棟の水道は、警告文にある通り「鉄・マンガン」を含んでいるため飲用には適しません。
手を洗ったり、道具をすすいだりする分には問題ありませんが、
料理やコーヒーに使う水は必ず事前に持参しましょう。
今回たまたま飲料水を持ち合わせていましたが、阿蘇から大分へ向かう国道57号沿いのスーパーなどで、買い出しと一緒に済ませておくのが正解です。
共用トイレ
水質の影響で便器が茶褐色に変色していますが、これは決して清掃不足による「汚れ」ではありません。
管理者による清掃が行き届いており、設備自体は綺麗に保たれているので安心して利用できます。
ただし、トイレは男女共用のため、女性キャンパーにとっては少し気になるポイントかもしれません。
最後に
阿蘇ツーリングを時間の限り楽しみ尽くすことができたのは、このキャンプ場のおかげだったと言っても過言ではありません。
乗り入れもスムーズで、愛車を傍らに安心して夜を明かせる、ライダーにとって理想的なフィールドでした。
一晩を過ごし、マナーの良いキャンパーたちに恵まれたことも幸運でした。
この素晴らしい無料キャンプ場が今も存在し続けている理由は、ひとえに利用客の節度が保たれているからに他ならないのでしょう。
次にここを訪れる時も、変わらず利用できる場所でありますように。
水質の問題がもし解決されれば、ここは文字通り「最強の阿蘇攻略拠点」となるはずです。

さて、旅はいよいよ最終夜へ。
今度は「くじゅう」を攻め、日田まで一気に駆け抜けます。
〈つづく〉



