「絶景が見たいけれど、遠出するのは少し億劫だ。」
「直火ができる希少な場所で、焚き火を楽しみたい。」
「車、バイクを持っていないけれど、バックパック一つで本格的なキャンプに挑戦してみたい。」
そんなわがままな願いをすべて叶えてくれる場所が、千葉県佐倉市にありました。
その名も『印旛沼サンセットヒルズ』。
都心からわずか1時間圏内という好立地にありながら、名前の通り印旛沼に沈む圧倒的な夕日を拝めるこのキャンプ場。
実は、訪れてみて初めて知った驚きの魅力が隠されていたのです。
今回は、実際に足を運んで肌で感じた空気感とともに、後から調べて確信した「知らなきゃ損する」このキャンプ場の魅力をレポートします。
印旛沼サンセットヒルズ、3つの魅力

- 夕陽の絶景スポット: 印旛沼を見下ろす高台からの夕陽の絶景
- 直火OK: 焚き火ファンに嬉しい、希少な利用ルール
- 徒歩0分: 公共交通機関でも行ける、アクセスの良さ
名に冠する「サンセットビュー」の圧倒的開放感

一番の魅力は、何と言ってもその名の通り夕日の美しさです。
「ちば眺望100景」にも選ばれているこの場所は、印旛沼を見下ろす高台に位置しており、視界を遮るものがありません。
茜色に染まる沼の向こう側には、天気が良ければ富士山が浮かび上がるとのこと。
マジックアワーから夜景へと移り変わる時間は、日々の疲れをリセットしてくれる贅沢なひとときです。
今や貴重な「直火」を楽しめる環境
最近のキャンプ場では焚き火台の使用が必須となるのが一般的ですが、ここはオートキャンプサイト内での直火が許可されています(※一部、ウッドデッキ区画等を除く)。
地面に直接薪を組み、火を育てるというキャンプ本来の野趣あふれるスタイルは、焚き火好きにはたまらない醍醐味が楽しめます。
公共交通機関でも行ける「身近な非日常」

都心から車で約1時間というアクセスの良さはもちろんですが、特筆すべきは停留所から「徒歩0分」という驚きの利便性です。
京成佐倉駅からバス一本で、キャンプ場の目の前までアクセス可能。
車を持っていない方や、バックパック一つで旅をしたいという徒歩キャンパーにとっても、手軽に足を運べる環境が整っています。
印旛沼サンセットヒルズ 基本データ

| 訪問年月 | 2026/4 | 晴/晴 |
| 名称 | 印旛沼サンセットヒルズ | 佐倉市 公式サイト |
| 場所 | 〒285-0009 千葉県佐倉市飯野町27 | 043-484-1011 |
| 業態 | 市営 | 佐倉市 |
| ロケーション | 広場・高台・沼畔 | 印旛沼 |
| サイト | 区画オートサイト | 草地 硬 □□□■□ 柔 |
| サイト規模 | 中規模 | 全37区画 |
| 車両乗り入れ | 可 | オートキャンプ形式 |
| 営業期間 | 通年 | 閉場日あり(不定期) 公式サイトで要確認 |
| 予約方法 | 電話 or ネット予約 | ちば施設予約システムにて受付 |
| in / out | 11:00~ / ~10:30 | アーリーイン有 9:00~ 310円/1時間 |
| 料金(利用プラン) | 4,180円 | (宿泊1泊・1区画) |
| (内訳) | 使用料 | 4,180円 |
| 駐車料金 | なし | |
| 設備 | 管理棟:あり | 9:00~20:00 |
| (売店:あり) | 薪・オリジナルグッズ等 | |
| (レンタル:あり) | ||
| トイレ:あり | 水洗・洋式 | |
| 風呂:なし/シャワー:あり | 100円/10分(8:00〜22:00) | |
| 炊事棟:あり | コンロ・ペグ等用具洗浄はNG | |
| 灰捨て場:あり | ||
| ゴミ捨て場:あり | 無料ごみ袋配布あり・各種分別廃棄 | |
| その他施設 | ウッドデッキ(デイ専用) | テニスコート、農園 |
| 直火の可否 | 可 | ※オートサイトのみ(ウッドデッキは不可) |
| 薪の販売 | あり | 針葉樹・広葉樹(桜)1,500円 |
| 薪の現地調達状況 | 難 ☑□□□□ 易 | |
| 電波状況 | 良好 | 無料Wi-Fi ※管理棟周り |
| 客層(主観) | ファミリー、グループ層多い | ソロ □□□☑□ ファミリー |
| 獣・虫 | イノシシ、ネコ | コバエ多い |
| 場内路面状況 | 未舗装 | 場内導線 砂利 |
| 買い出し | スーパーマーケット | タイヨー 佐倉店 約4.4km |
| コンビニ | セブン-イレブン 佐倉王子台2丁目店 約3.7km | |
| 温泉 | 佐倉天然温泉 澄流 | 約5.5km |

印旛沼サンセットヒルズ 予約はどうする
『印旛沼サンセットヒルズ』の予約は、「ちば施設予約システム」によるオンライン予約、または電話予約が基本です。
オンライン予約の際は事前に利用者登録を済ませておくと、予約開始直後の争奪戦にスムーズに参加できます。
予約の基本ルール
- 予約開始: 利用日の3ヶ月前の月の初日から(例:8月の予約は5月1日から)。
- 電話予約: 当日に空きがある場合は、電話での当日予約も受け付けています。
ちば施設予約システム: ちば施設予約システム ホーム画面
予約電話 :043-484-1011
キャンセル規定(要チェック!)
直前でも条件によっては無料で対応してくれるなど、非常に良心的です。
- 3日前 17:00まで: キャンセル料なし。
- それ以降の直前: 利用料金の半額。
- 雨天時の特別措置:前日・当日の天気予報で「雨マーク」がついている場合、無料キャンセルが可能です。※ただし、自動キャンセルにはならないため、必ず電話連絡が必要です。
印旛沼サンセットヒルズ サイトの様子

印旛沼サンセットヒルズのキャンプサイトは、すべて車両の乗り入れが可能な区画オートサイトです。※1区画につき1台までサイト内へ横付け可能
サイトの主な特徴

- 車両の乗り入れ: 1台まで横付けOK(2台目以降は駐車場へ)。
- 生垣による区画分け: 隣や道路側とは区切られているが、高さは控えめ。
- 地面(草・土): 適度に締まっており、ペグの効きは良好。

区画の構造と雰囲気

すべての区画が同平面上にあり、フラットで設営しやすいのが特徴です。
隣り合うサイトとの間には生垣や柵が設置されており、道路側も生垣で視線が緩やかに遮られています。


ただし、生垣自体の高さはそれほど高くありません。
立っている状態だと周囲の様子が視界に入りますし、音に関しても遮蔽(しゃへい)性はないため、
隣の話し声などはよく聞こえます。
完全に孤立した「高いプライベート感」を期待するというよりは、「適度な距離感と区切りがある」と捉えておくのが正解です。
ベストビューサイト

このキャンプ場の真骨頂である「絶景」を堪能できる区画は、沼畔側に集中しています。
- 対象区画: 沼畔側に位置する Bサイト 〜 10番サイト
- 屈指の人気サイト: 特に「4番」と「7番」は、視界を遮るものがなく、印旛沼のパノラマと夕日を楽しめる特等席です。

人気サイトを獲得するには?

土曜日ともなると、これら人気サイトの争奪戦は白熱します。そこで重要になるのが「アーリーチェックイン」の活用です。
通常は11:00受付開始ですが、9:00からアーリーインが可能となっています。
追加料金は1時間につき310円。
つまり、620円を支払えば「2時間早く絶景サイトを狙える挑戦権」が得られるというわけです。
どうしても場所を選びたい方は、この先行投資を強くおすすめします。
絶景と強風のトレードオフ

ただし、沼畔側のサイトは素晴らしい眺望と引き換えに、風が非常に強く吹くという特性があります。眺望が良いサイトほど、沼からの風を直接受けやすいため、設営には注意が必要です。
[筆者のアドバイス] 沼側のサイトを狙うなら、30cm以上の鋳造ペグなど、しっかりとした装備を推奨します。風が強い日はタープを低く張るか、あえて設営しないという判断も「絶景を楽しむ」ための知恵。もし風の影響を最小限に抑えて静かに過ごしたいなら、あえて内側のサイトを選ぶのも賢い戦略です。
印旛沼サンセットヒルズ 施設の様子

『印旛沼サンセットヒルズ』はキャンプに必要な施設が一通り揃っています。
場内はテントサイトと施設エリアが明確に分かれているのが特徴で、どこに何があるか分かりやすく、すっきりと整理された使い勝手の良さがあります。
また、管理人が常駐しているため、夜間や緊急時でも安心感があるのは大きなメリットです。
設備面では、10分100円という破格の安さで利用できるシャワーや、無料のごみ袋が配布されゴミを捨てて帰れる点が非常に有難いと感じました。
こうした利便性の高さがある一方で、売店の薪は1束1,500円とかなり高めの価格設定です。

印旛沼サンセットヒルズ 管理棟

キャンプ場に到着したら、まずは管理棟で受付を行います。売店とレンタル受付も兼ねています。
受付の流れ

- 申請書の記入と身分証提示: 予約名を告げ、許可申請書に必要事項を記入します。ここで身分証明書の提示が必要となるため、すぐに取り出せるよう準備しておきましょう。
- 区画の選択: 札表に札がある場所から、希望の区画を選びます。空き状況がひと目でわかり、自分で納得して場所を選べる面白いシステムです。
- 精算: 支払いは現金のみとなっています。最近のキャッシュレス決済には対応していないため、現金の用意を忘れずに。
- 説明とゴミ袋配布: 精算後はルールの説明を受け、無料のゴミ袋を2枚もらえます。もし足りない場合は追加でいただくことも可能です。
販売品・レンタル


売店コーナーにはCB缶、炭、薪などの消耗品のほか、ここでしか買えないオリジナルグッズも並んでいます。
- 薪について: 針葉樹・広葉樹(桜)ともに一束1,500円です。
- レンタル品: チェアやコンロといったキャンプギアのほか、周辺の散策に便利なレンタル自転車も用意されています。
その他の設備

管理棟の沼側には、景色を楽しめるデイキャンプ専用のデッキが併設されています。
また、格安で利用できるシャワー室もこの管理棟エリアに備わっています。
印旛沼サンセットヒルズ 炊事棟

テントエリアに最も近い場所に位置する、利便性の高い屋根付き施設です。場内に1ヵ所あります。
- 飲料水の区別: 8個の個別シンクのうち、奥の2カ所が飲料水専用として明確に分けられているのが特徴です。
- 設備: シンクの反対側には作業台や生ごみ用バケツが備え付けられています。
- 独自ルール: シンク内でのコンロや網の洗浄は禁止されていますが、汚れを拭き取るための新聞紙が常備されています。適切に処理をして持ち帰る配慮がなされています。



印旛沼サンセットヒルズ トイレ

男女別のほか、独立したバリアフリートイレが1棟設置されています。


- 手洗い場: 鏡と液体石けんが常備されています。物を置くスペースは限られていますが、洗面ボウルの水溜め部分の一部がフラットな形状なので、コンタクト用品などの小物を置く工夫は可能です。
- 仕様: 男女別トイレは、マグネット付きのビニールレールカーテンを開けて入るスタイルです。内部は清潔な水洗の洋式便座となっています。


印旛沼サンセットヒルズ シャワー室

管理棟の建物中央付近に4室備わっています。
- 料金: 10分100円という、他のキャンプ場と比較しても良心的な安さで利用できるのが最大の魅力です。
- 注意点: 石鹸やシャンプーの備え付けはないため、必ず持参しましょう。

印旛沼サンセットヒルズ 灰捨て

管理棟受付付近に蓋つきのドラム缶があり、そちらに廃棄できます。
印旛沼サンセットヒルズ ごみはどうする?

ゴミ捨て場は駐車場の入り口付近にあり、帰りの動線上にスムーズに廃棄できる位置に配置されています。
- 廃棄方法: 受付時に渡された袋に入れ、それぞれの指定場所に廃棄します。特に荷物を減らしたいバイクキャンパーなどには非常に有難いサービスです。
- 分別ルール: 燃えるゴミ(ペットボトルを含む)、缶、瓶に分別します。CB缶も廃棄可能です。

【体験レポ】19番サイトに響くバスの音と、茜色の空。徒歩キャンプの可能性を確信した、サンセットヒルズ滞在白書。

今回は不調の愛車をガレージ(ただの駐輪場)に残し、友人の車に揺られての四輪移動。
サーカスTCを一張り共有し、ひとりはテント泊、ひとりは車中泊で過ごした男二人のデュオキャンプ。
都心近郊で見つけたこのフィールドで、一体どんな時間が流れたのか。
1泊2日、印旛沼のほとりで過ごしたキャンプの様子をレポートします。
バイク不調がもたらした、予期せぬ車キャンプの始まり
遠方の友人から「何かやろう」と誘いを受けたが、運悪く愛車が不調。
どうしたものかと思案していたところ、友人が車で迎えに来てくれるという。
ならばと近場を条件にフィールドを探し、白羽の矢を立てたのが今回の目的地だ。
これまでノーマークだったが、東京からそれほど遠くない。二人で利用すればコストパフォーマンスも悪くない。 もしかすると、ここが気軽に通える新たな「ホーム地」になるのではないか。
そんな予感に、出発前から静かに胸が躍った。
朝、早起きして駆けつけてくれた友人をねぎらいつつ、キャンプ道具一式を積み込む。
その傍ら、手には買ったばかりで一度も使っていないキックボード。
「…それ、持っていくのかよ?」
友人の呆れ顔に、苦笑いで返す。
「いや、バイクじゃ絶対無理だろう? 車なら積める。まあまぁ、いいじゃないか」
そう言って、ラゲッジルームの隅にスッ…と、突っ込んだ。
バイクツーリングでは許されない「無駄な遊び道具」を持ち込めるのは、車ならではの役得だ。
しかし、道中は一筋縄ではいかない。相変わらず近くて遠い千葉の道。
断続的に現れる渋滞地獄に何度も足止めを食らい、心折れかける友人をなだめすかしながら、ようやく目的地付近へと辿り着いた。
直感と足で掴み取った本日の拠点。空き区画は「札」で奪取!沼側満員御礼の中で見出した道路側19番に勝機はあるか。
市街地を抜けると、不意に深い森へと道が吸い込まれた。
森を抜けると眼前に田園風景が広がり、牛小屋の香りが鼻をくすぐる。

そんなのどかな景色の先にキャンプ場はあった。
競馬場を彷彿とさせるアーチ型の入場口、「印旛沼サンセットヒルズ」。

時刻は14:00。
事前の情報では区画指定ができないとのことだった。ならば先着順か、あるいは管理人による指定か。 車を降りるなり、まずはサイト全体に鋭い視線を送る。
視界が開ける沼側の特等席は、案の定すでに埋め尽くされていた。


道路側には、まだちらほらと空きが見える。
管理棟へ向かい、受付を済ませる。
「どこにしますか?」 管理人が指差したのは、背後のボードにかかった無数の札だった。
これは面白い。管理者、利用者、双方が埋まり具合がひと目で分かる、見事なアナログシステムだ。

確認した通り、沼側の札は一枚も残っていない。
角地が空いているようだが、できれば周囲の雰囲気も肌で確認しておきたい。
「見てきてから決めてもいいですよ」 その言葉を合図に、一目散にサイトへと駆けた。
キャンプエリア中央の砂利道を進めば、場内の全容が概ね把握できた。
中央付近にはファミリーが点在し、突き当たりのエリアは数組のグループによって占拠されつつあった。一方、その道路側はまだ誰も設営していない。

狙いを定めたのは17番から19番。 戻って友人に問うと、「なら19番だな」と即答が返ってきた。
確認しに行っている間に他のキャンパーの差しこみもあったが、無事に19番を確保することに成功した。
受付でルールの説明を受けながら話を伺うと、やはり沼側の人気は圧倒的だという。
特に「7番」と「4番」は聖域とも呼べる一番人気。
土曜日ともなれば、そこを巡って熾烈な場所取り合戦が繰り広げられるみたい…。
ふと受付前の看板に目をやると「9:00〜」の文字が見えた。
はて、公式のチェックインは11:00のはずだが…?

どうやら9:00からアーリーチェックインが可能とのこと。
今日のような混雑日は、開門前から並んで目当ての区画の奪取合戦が行われていたらしい。
そこまでストイックに場所を競うのは、正直、無理だ。参戦する気力もない。
区画が決まれば、あとは腰を据えるだけ。友人の車を先導し、徒歩で19番サイトへと向かう。
公道が真横を通っているのは少々気になるが、現時点で周囲にテントはない。

いいんじゃないか。ここが今日の俺たちの拠点だ。
ひとりごちてそう確信し、設営の準備に取り掛かった。

高騰する薪代に抗え!薪を求めてキックボードで印旛沼探索
地面にはタンポポが咲き乱れている。

今日の幕体はワンポールテント(サーカスTC)。
せっかくの春の彩りを潰してしまう被害も、これなら最小限で済みそうだ。
それにしても、4月だというのに夏を思わせる暑さ。
たまらず友人の車の陰に身を潜める。日陰に入れば、吹き抜ける風がようやく涼しさを運んできた。
さて、今夜の宴に備えてColemanのファイヤーディスクを持ってきた。
焚き火の準備をしようと薪を見に行ったが、価格を見て愕然とした。一束1,500円。
高く見積もった想定の2倍だ。この価格には、さすがに手が付けられない。

「ならば任せろ。俺が外で調達してきてやる」
ここで、あの「無駄な遊び道具」が牙を剥く。キックボードを素早く組み立て、友人に言い放った。
「ほら、役に立っただろう?」

キャンプ場の入り口を抜け、公道へと滑り出した。 まずは北西へと進路を取る。初めて乗るキックボードだが、想像以上に乗り心地は軽快だ。風を切って進むが、現れたのはテニスコートと整然と並ぶ民家。こちらに拾える薪などあろうはずもない。
一旦引き返し、次はバス停のある丁字路から北東へ。 眼前に広がるのは農園だ。どこまで行っても整地された畑が続き、落ち枝一つ見当たらない。
最後の頼みは、南へと続く道だった。車両通行禁止の看板が立つ、鬱蒼とした小道。 直感が告げる。

「ここならある」と。 スルスルと坂を下るが、次第に路面は深い落ち葉に覆われ、キックボードの車輪を拒み始める。周囲は一面の竹林。横倒しになった竹がいくらか転がってはいたが、素手で持ち帰れるような代物ではなかった。


結局、とぼとぼとサイトへ戻る。 手ぶらで帰還した表情を悟ったのか、友人が静かに言った。
「…今日は、ガス火で楽しむか」
交通機関の結節点に見る、徒歩キャンプへの可能性
確保した19番サイト。 生垣一枚を隔てた公道は、意外にも車通りが少なく穏やかだった。
だが、ある違和感に気づく。
サイトのすぐ脇から、バス停の看板が「にゅっ」と不自然に頭を出しているのが見えるのだ。

これまで「徒歩キャンプ」の経験といえば、離島の神津島くらいのもの。
かつてバイクで訪れた奥多摩の氷川キャンプ場に、会社の徒歩グループを呼び寄せた時の光景がふと頭をよぎる。
それにしても、これほどまでに交通機関の拠点と直結したキャンプ場は珍しいのではないだろうか。
観察していると面白いことに気づいた。
コミュニティバスはそれなりの頻度でやってくるのだが、乗客が降りる様子も、誰かが乗り込む気配も一向にない。
バスはただ、キャンプ場の前で無機質にUターンを決め、元来た道へと帰っていく。
そのシュールな光景を眺めながら、バイクでも車でもないキャンプの形、徒歩キャンプの新たな可能性を見出した。
茜色に染まる印旛沼で心の鐘を鳴らす。
焚き火を諦めた我々は、潔くガス火に切り替えた。
CB缶をセットし、コンロでチョリソーを焼き、オイルサーディンをそのまま火にかけてアヒージョ風に仕立てる。
それを肴に、久しぶりの再会を祝してビールのプルタブを引き抜いた。
喉を鳴らして流し込むビールがこれほど旨いと感じるのも、この初夏のような陽気のおかげだろう。

キャンプの打ち合わせのための電話と道中の車内で、互いの近況報告など主要な会話はすでに話し尽くしていた。
今ここにあるのは、ただ静かなキャンプ場と、旨いつまみ、そしてビール。
いつしか感覚は昔に戻り、当時流行ったギャグや芸能人の噂話に、互いに曖昧な相槌を打ちながら緩やかな時間が過ぎていく。
ふと気付けば、周囲は夕刻の気配に包まれていた。
ここは『サンセットヒルズ』。
その名の真価を確かめるべく、男二人は連れ立って管理棟裏のデッキサイトへと足を向けた。

ちょうど、陽が地平の端に沈みかけようとしている瞬間だった。
空の色と沼の色が溶け合い、すべてが同じ茜色に染まっていく。
その圧倒的な夕陽を前に、しばし言葉を失った。
ふと視線を奥へ向けると、そこに一つの鐘が佇んでいた。「佐倉 幸せの鐘」。

だが、肝心な鳴らし綱が見当たらない。
ジャンプして叩く勇気も、そんな陽気な若さも今の我々にはない。
結局、その鐘を心の綱でそっと鳴らすに留め、茜色の景色を後にした。
【夜の苦行】日中の猛暑はどこへ?冬並みの「豹変」と、静寂を切り裂く「無自覚な透過音」
宴のメインディッシュ、牛ハラミを広げたところで己の過ちに気づく。
その前にモツ煮と合わせた焼きそば2玉を平らげていた。

「…半分でいいか」 残りは1玉余った麺とともに、翌朝の朝食へと回すことにした。
それにしても、寒い。
日中のあの暑さは一体どこへ消えたのか。
一枚羽織り、さらに上着を重ねる。それでも足りず、最後は背中にカイロを貼り付けた。
結局、装備は冬同等の恰好へと逆戻りだ。
ビールは飲み干し、ロックで煽っていたウィスキーも、いつの間にかホットで啜る始末。
焚き火という癒やしを欠いた夜は、ただ寒さに耐えるだけの時間へと変わった。
「寝るか」 友人が口を開いたのは21:30。周囲ではまだ子供たちの歓声が響いていた。
「せめて片付けを終えて22:00だな」
眠れる自信は到底なかったが、一刻も早く暖かいシュラフの温もりに包まれたいという気持ちはあった。
22:00を過ぎると、あれほど騒がしかったファミリー層が一斉に沈黙した。
ここはクワイエットタイムが22:00と厳格に定められている。
昨今のキャンパーたちのマナーの向上を、改めて肌で感じる瞬間だった。
しかし、一組のグループキャンプだけが、その静寂を切り裂き続けていた。
酒に酔って「うぇーい」と騒ぐ類ならまだ諦めもつくが、質が悪いのは、普通のトーンより少し高い程度の会話が延々と続いていることだ。
生垣で囲まれているとはいえ、音の遮蔽など皆無に等しい。
自分たちの声が場内にどれほど響き渡っているか、当事者たちは露ほども気づいていないようだった。
静寂の中で異常に際立つ話し声。それはまさに、逃げ場のない苦行のようだっだ。
たまらず、これまで避けてきた耳栓を手に取った。
自分の鼓動が耳の奥で鳴る感覚が馴染めず敬遠していたが、背に腹は代えられない。
耳栓を押し込み、己の鼓動を消すため、「あ行」から始まる食べ物の名前を心でつぶやきつつ、
いつしか深い眠りへと落ちていった。あめ、いちご、う…いろう、え…りんぎ、お…ーざ…っく。

撤収と再訪の誓い:管理人が漏らした「沼側攻略」の鍵
翌朝。 車中で泥のように眠っていた友人は、どうやら熟睡できたらしい。
一方の私は、耳栓を装着したまま眠りに落ち、そのまま朝を迎えたという事実に驚きつつ、シュラフから這い出した。
朝食は、昨晩の宣告通り「ハラミ肉と食べきれなかったキムチをたんまり投入した焼きそば」だ。
胃にずっしりとくる重厚なメニューだが、これもまた無計画なキャンプゆえの贅沢だろう…。
チェックアウトは10:30。
だが、男二人で動けば作業は早い。
10:00前にはすべての道具が車に収まり、撤収は完了した。

管理棟の前で、友人のトイレ待ちを兼ねて管理人と雑談を交わす。
昨日の担当者とは別の方で、交代で宿直をしているという。
ここで、件の「沼側サイト」を攻略するための秘策を教わった。
「平日なら空いてますよ。アーリーを使わなくても、目当ての場所を取れるんじゃないかな」
その一言で、次なるプランが胸の中で形を成した。 よし、今度ソロで来るときは平日を狙い撃とう。
帰りの車中、車窓に流れる景色を目で流しながら、密かに「沼側リベンジ」を誓うのであった。
まとめ:印旛沼に見た「佐倉市」の本気運営と、徒歩焚き火という稀有な聖地

今回の滞在で確信したのは、ここが単なる「都心に近いキャンプ場」ではなかった、ということだ。
都心から車で約1時間という近さはもちろんだが、特筆すべきはバス停留所から「徒歩0分」という利便性だろう。
調べたところ、ここへは京成佐倉駅(北口)から佐倉市のコミュニティバス「内郷ルート」が直通している。
驚くべきはその運行本数だ。平日は19便、土休日に至っては21便も設定されている。

片道わずか200円、13分ほどバスに揺られれば、そこはもう「印旛沼サンセットヒルズ」の入り口。
わずか200円でこれほどの非日常へ辿り着けるアクセスの多様性は、他に類を見ない。
だが、驚きはそれだけではなかった。 帰宅後、改めて利用規約を確認したところ、焚き火に関する具体的な制限が見当たらない。気になって電話で問い合わせてみると、返ってきたのは意外な回答だった。
「直火、OKですよ」
あの美しい草地で…?と聞き直したが、広範囲でなければ問題ないという。
重い焚き火台を背負う必要がない。
つまりここは、バックパック一つでやってきて、そのまま直火を楽しめるという、
徒歩キャンパーにとって極めて希少な「自由区」だったのだ。
さらに、ここは「ちば眺望100景」にも選ばれた景勝地であり、佐倉市の市営直管理。
管理委託に頼らず、独自にオリジナルグッズまで制作し、キャンプ場の目の前までコミュニティバスを頻繁に巡回させる。
そこには、この土地の魅力を伝えようとする佐倉市の「ただならぬ熱量」が透けて見える。

愛車の不調から始まった今回の車キャンプ。結果として新たな「ホーム」候補を見出すことになった。
次は、平日。バイクか。
あるいはバックパックを背負って。あの茜色の空の下で、今度こそ直火の爆ぜる音を静かに楽しみたいと思う。
ただ、1人で4,000円強という価格設定は、ソロライダーの懐には少々痛い。
「ソロなら半額」…なんて具合にはなりませんかね。ねぇ、佐倉市様?



