九州一周の旅も、いよいよ最終章。
辻河原公園を後にし、やまなみハイウェイの絶景を駆け抜け、杖立温泉の名湯で心身を整える。
辿り着いたのは、大分県日田市の「伏木公園キャンプ場」。
九州最後の夜も、自分らしく「無料のキャンプ場」で締めくくりたい――。
翌朝に控える東京まで1,100kmの弾丸帰還を前に、独り静かに過ごした滞在記をお届けします。
伏木公園キャンプ場の魅力
- 無料
- 車両乗入可
- 安心感
【無料】付加価値のある無料キャンプ場
「無料」で利用できるのは言うまでもなく、その上で管理の行き届いた清潔な水洗トイレや炊事棟を完備しております。
さらに特筆すべきは、100円「時間制限なし」のシャワーが利用できます。 (※要予約)
無料のフィールドでありながら、長期旅のライダーが求める「快適さ」が揃っています。
【バイク乗入可】搬入出の利便性
サイト内は、場所によってバイクの乗り入れが可能です。
荷解きやパッキングのしやすさはもちろん、愛車をそばに置いて眠れる安心感は格別。
無料・乗入可という、バイクキャンパーにとっての絶好の条件を満たしています。
【安心感】近隣住民による顔の見える管理
常駐の受付ではありませんが、近所に住む管理人さんが目を行き届かせているアットホームな運営体制です。
何かあれば電話一本で相談に乗ってもらえる距離感は、まるで実家に帰ったような安心感があります。
また、場内への進入口には固定式の車止めポールとカラーコーンが設置されています。
関係者以外の車両の進入を抑止し、静かな環境を守るための仕切りがしっかり機能している点も、女性やソロキャンパーが安心して利用できるポイントです。

伏木公園キャンプ場 基本データ

| 訪問年月 | 2025/8 | 晴/晴 |
| 名称 | 伏木公園キャンプ場 | 日田市 公式サイト |
| 場所 | 〒877-0000 大分県日田市花月 | 0973-24-4081 |
| 業態 | 市営 | 日田市市民サービス公社 |
| ロケーション | 公園 | |
| サイト | フリーオートサイト/区画サイト | 芝 □□☑□□ 柔 |
| サイト規模 | 中規模 | 約15~20張程度 |
| 車両乗り入れ | 可/不可 | 区画は乗り入れ不可 フリーサイトは可 |
| 営業期間 | 夏季限定 | 7月20日~8月31日(※2025年) |
| 予約方法 | 電話 | 日田市市民サービス公社 0973-24-4081 |
| in / out | 応相談 | 管理者へ到着後電話連絡 |
| 料金(利用プラン) | 無料 | |
| (内訳) | 使用料 | 0円 |
| 駐車料金 | なし | |
| 設備 | 管理棟:あり | |
| 売店:なし | ||
| トイレ:あり | 水洗・洋式 | |
| 風呂:なし/シャワー:あり | 要予約 100円(時間制限なし) | |
| 炊事棟:あり | ||
| 灰捨て場:なし | ||
| その他施設:あり | 大屋根付きの東屋 | |
| ごみ | 持ち帰り | 消し炭、灰を含む全て |
| 直火の可否 | 不可 | 場内火気使用不可※炊事場内のみ可 |
| 薪の調達状況 | 不可 | 難 □□□☑□ 易 |
| 電波状況 | 良好 | ※楽天モバイル |
| 客層(主観) | ソロ ☑□□□□ ファミリー | |
| 獣・虫 | イノシシ、シカ | 聞き込み情報 |
| 場内路面状況 | 舗装路 | ※急勾配あり |
| 買い出し | スーパーマーケット | アタックス 日田店 約8.9km |
| コンビニ | セブン-イレブン 日田三和店 約8.5km | |
| 温泉 | 天ヶ瀬温泉 薬師湯 | 約28.0km |
伏木公園キャンプ場 予約はどうする
伏木公園キャンプ場利用のためには事前に電話予約が必要です。
まずは「日田市市民サービス公社」へ電話
利用日が決まったら、まずは窓口である日田市市民サービス公社(0973-24-4081)へ連絡し、利用の申し込みを行います。
日田市市民サービス公社(0973-24-4081)
管理者の連絡先を確認
受付が完了すると、現地の管理人さんの連絡先を教えていただけます。
利用日当日、到着前後に管理者へ連絡
当日は、キャンプ場に到着する直前(あるいは到着後すぐ)に、改めて管理人さんへ電話を入れます。
管理人さんへ連絡することで、進入口の車止めの解除方法や、シャワーの使い方などを直接教えていただけます。
伏木公園キャンプ場 サイトの様子

場内は全体的に勾配のある坂道になっており、その地形を活かして大きく2つのエリアに分かれています。


石造りの区画サイト(プライベート重視)

場内上部へと続く舗装道の片側には、石垣で整えられた平らな区画サイトが点在しています。
一つひとつが独立した雰囲気で、フリーサイトと比べると、プライベート感を重視したい方に最適な造りです。



最上段のオートフリーエリア(バイク横付け重視)


坂を上り詰めると、周りが木で囲まれた平坦な芝生エリアに到着します。
伏木公園キャンプ場 施設の様子

場内の主要な設備は入り口付近に集約されております。

伏木公園キャンプ場 管理棟

場内入口付近にある管理棟は、トイレやシャワー室を備えています。
棟内には管理人室がありますが常駐ではありません。受付にスタッフが常にいるというスタイルではないため、先述の通り事前の電話受付と到着時の電話連絡が、実質的なチェックインとなります。
また、管理棟のすぐ横には駐車場が完備されています。バイクの乗り入れができない「区画サイト」を利用する場合は、ここに駐車して荷物を運ぶ形になります。

伏木公園キャンプ場 炊事棟

管理棟から少し坂を上がったところに、屋根付きの炊事棟が1棟あります。
コンクリートを固めて造られており、片側に水道を備えた流し、もう片側に釜土が並び、中央には調理器具や食材を置けるスペースが確保されています。

なお、場内は火気厳禁(予約時に案内があります)となっているため、バーナーでの調理や釜土を用いての煮炊きは、必ずこの炊事棟で行うのがルールです。

伏木公園キャンプ場 トイレ

トイレは管理棟内にあり、入り口のビニールカーテンをくぐると男女共用の手洗い場、
その左右に男女別のトイレが設置されています(※バリアフリートイレはありません)。

手洗い場には鏡や小物を置くスペースがないため、洗顔などで必要な方はウエストバッグなどを用意しておくと便利です。

便座は洋式で、予備のトイレットペーパーも完備されており、無料キャンプ場とは思えない管理の良さが感じられます。

伏木公園キャンプ場 シャワー室

シャワー室は管理棟内に男女各1室ずつ完備されています。
受付時に管理人さんから利用の有無を確認され、希望すると解錠してもらえる仕組みです。
利用中は内鍵をかけられるため、安心して利用できます。

脱衣所と身体を拭くスペースは十分な広さが確保されており、何より100円で時間制限がないのが大きな魅力。
ただし、日田エリアは2025年にも深刻な水不足に見舞われるなど、水が非常に貴重な地域です。
このありがたい設備を今後も維持してもらうためにも、長時間の利用や水の出しっぱなしは控え、節水を心がけたマナーある利用をしましょう。
伏木公園キャンプ場 灰捨て
炊事棟の項目でも触れた通り、場内は「火気厳禁」です。
予約受付時にも詳しく案内がありますが、唯一焚き火が許可されているのは、炊事棟にある釜土のみとなります。
また、場内に消し炭、灰捨て場は設置されていません。
釜土を使用した際に出た灰や燃え残りは、すべて各自で持ち帰ることがルールと心得ましょう。
伏木公園キャンプ場 ゴミはどうする?
すべてのゴミが持ち帰りとなっています。
その他施設:大屋根付きの東屋

場内の中腹あたりには、大きな屋根を備えたコンクリート造りの東屋があります。
主には公園内でのイベント時に使用されるものだそうです。
キャンプ中の急な天候の変化の際など、一時的な避難場所としても安心感を与えてくれる、このキャンプ場のシンボル的な施設です。
伏木公園キャンプ場体験レポ│九州ラストの夜を飾る、絶景ロードの終着点
九州一周キャンプツーリングも、ついに最終夜。
阿蘇やくじゅうの絶景に別れを告げ、最後に向かったのは大分県日田市にある『伏木公園キャンプ場』でした。
翌朝に控えるのは、九州から東京まで一気に駆け抜ける、総距離1,100kmにおよぶ弾丸帰還。
その過酷なロングランを前に、心身を休め、装備を完璧に整えられる「確かな拠点」が必要でしたが、最後は自分らしく無料のキャンプ場で〆たい、そんな思いでこの場所にやってきました。
管理人さんの温かな配慮によって、ここはただの宿泊地ではない、思い出深い特別な場所になりました。
九州最後の夜を彩った名道への追憶と、東京への強行軍に向けた静かなる準備の記録をお届けします。
※道中のくじゅう周遊道路~日田までのツーリングの様子を共に辿りたい方は、このまま下へ読み進めてください。
※キャンプ場の詳細・滞在の様子をすぐに見たい方は以下のリンクから、ジャンプできます。
👉【滞在編】鉄筋東屋。最後の寝床は森の斜面に現れた「星屑の(?)ステージ」
【道中編】阿蘇を仰ぎ、くじゅうを眼下に。天空の路からラストステージの日田へ

前泊したキャンプ場で、地元大分キャンパーさんから、これから向かう先のツーリングスポットを授かっていた。
ガニ湯や筋湯などの名湯、そして鳥刺しの旨い店…。
ここから国道442号のくじゅう周遊道路を通り、日田へ至る道中には、どれもこれも寄ってみたくなる魅力的なスポットが溢れている。
日田のキャンプ場までは100kmにも満たない距離だ。
その短い区間にルートを吟味し、やまなみハイウェイ展望台と杖立温泉を必須タスクとして地図アプリにプロットし出発した。
時間に余裕があれば、他にも立ち寄ってみるつもりだ(った…)。
眼下に広がる九重連山 空を駆ける絶景ロード

朝食は、昨日も買い出しに利用した竹田のスーパー密集地帯へ。
九州上陸以来、いつか寄らねばと思っていたマルミヤストアに狙いを定めた。
道路を跨ぐ巨大な鳥居のすぐ横にそれはあった。
戦果は上々。午前中だというのに4割引きの惣菜パンをゲットし、小腹を満たしていざ「くじゅう」へ。

マルミヤストア 竹田店

国道442号へ入った。今日もいい天気だぁ。


道中、眼下に広がる景色は見事の一言に尽きる。

眼前にそびえ立つ阿蘇に対し、くじゅうは眼下にその壮大な姿を現す、と思った。
やまなみハイウェイ展望台からの眺めは、圧倒的な開放感。
この先一年のスマホの待ち受けにしたいくらいの、まさに絶景であった。

やまなみハイウェイ展望台

さて、次はどこへ…、と地図を確認しようとした矢先、スマホがフリーズ?!
電波がない。
とりあえず来た道を戻り、赤い屋根が印象的な「瀬の本高原」の交差点まで引き返したが、電波は微弱。

致し方ない。杖立の文字を見て、そのまま国道442号を西へと進める。
道中にあったはずのツーリングスポットはすべてスルーし、電波の域にありそうな方向へひた走る。
ようやく電波を拾ったと思えば、今度はまさかの充電切れ?
USB給電をしながら走っていたが、直射日光に晒された端末は異常な熱を持っていた。
パニアに入れっぱなしのツーリングまっぷるを確認すれば済む話だが、日光に焼かれた身体はヒリつき、走り続けて風を感じていなければ卒倒しそうなほどの暑さだった。
旅のお供にお守りに、絶対携行したいツーリングまっぷる。
(私は2021年度版を持っていきました。)
だましだましスマホの機嫌を取りながら進路を維持する。
とりあえず、必須タスクの「杖立温泉」だけは外せない。
狭い山道。丸太を山積みにしたトラックが、制限速度より大分控えめで前を走る。
イエローラインの続く道。追い越しも叶わず、ひたすらその大きな後ろ姿を眺めながら、
しばらく共に歩む時間を過ごした。

ガードレールなき狭路を越えて。杖立元湯で交わした裸の付き合い

小国町付近で多少迷ったが、どうにか軌道修正。
長らく連れ添った丸太トラックともようやくお別れした。
お目当ての杖立温泉郷へ到着したが、目指す元湯が見当たらない。

何もない駐車場で立ち往生していると、レジ袋を提げた男性が通りかかった。
「あの、元湯はどちらにありますかね?」
「あぁ、ここはですね…」 案内してくれたその男性は、驚くほど丁寧で奥ゆかしかった。
「自分の宿は高いから紹介できなくて申し訳ない」とまで言う。
アイスを手に持たせたまま呼び止めてしまったこちらが恐縮するほどだった。
教えられた通り、観光協会横の道を下る。
え、まさかこの道を行くのか??グーグルマップには拡大しても現れない道。

バイク同士ならまだしも、車が来たら離合不能。ガードレールもなく、踏み外せば一巻の終わりだ。
遠い教習所時代の緊張感が蘇る。

その断崖のような道の先に、岩をくり抜いたような無骨な湯船が口を開けていた。
「元湯」だ。

先客が一人。体を洗い、いざ浸かろうとした足をいれた瞬間——。
「あっちい!」 思わず飛びあがると、カカカと、高い笑い声が響いた。
「どっから来たと? 今のバイクの人?」
福岡から来たという男性。
九州一周の話をすると、この先にある進撃の巨人の聖地や、甘木の「卑弥呼の湯」、戦闘機「震電」の話など、耳寄りな情報を次々と投げてくる。
そして、これから北上する私に、彼は真剣な顔でこう告げた。
「福岡なぁ、これだけは覚えておき。筑豊は気をつけや。車間はじゅーぶん、とってな」
初日に小倉にいたことを伝えると、「ありゃ修羅の国じゃ!わしは絶対近づかん」と笑う。
この旅一番の愉快な男だった。
「仕事サボって浸かる温泉は、究極の至高やね。あんたにも至高のもんやろう」
そう言うと、彼はパンツ一丁裸足で一度外へ出た。戻ってきた彼の手には、温泉で作ったばかりだというゆで卵。
「半分あげるよ」と三つもいただいた。 朝から何も食べていなかった身体に、その味わいが染み渡る。
格別に旨い。

面白話は尽きることなく、つい長湯をしてしまった。
バイクに跨り、温泉の横を通り過ぎる。
バックミラー越しにパンツ一丁で、ぶんぶんと大きく手を振る彼の姿が見えた。
間違いなく、この旅で一番、最高に愉快な出会いだった。

杖立温泉元湯

駆逐してやる、この道を!目指すはキャンプ場一直線。沈黙のスマホと進撃の黒バイク
パニアの中で休ませていたスマホを恐る恐る確認する。
相変わらず充電は進まず、残量はわずか2%だ。 もはや頼れるのは文明の利器ではない。
いつからスマホ頼りの軟弱者になったんだ、俺は…。自分に喝を入れる。
かつて、マニアックな地図を頼りに自転車で四国遍路を結願させた、あの頃の感覚を呼び覚ますんだ。
アナログのツーリングまっぷるを開き、頭の中にルートを叩き込む。
国道212号をなぞるように進めば、日田にたどり着くはずだ。

給電コードは繋いでいるが、ナビ画面は処理中のアイコンが空虚に回るばかり。すぐに電源が落ち、数分おいて再起動してはまた落ちる。その絶望的なループを繰り返し、ついにはスマホは朽ちた。
ふと右手に見えた道の駅には進撃の巨人ミュージアムの看板。
杖立の男が言っていた聖地だ。 さらに、すぐ近くにはあの「想夫恋」の看板。


だが、今の私に立ち止まる余裕など微塵もない。
あらゆる誘惑を断ち切り、次回への宿題と心に留め置き、スロットルを捻る。
追い打ちをかけるように、空からは大粒の雨が降り出した。
「こりゃあ、だめだ」
買い出しよりも先に、まずは確実な拠点の確保だ。雨から逃れるように、一途にキャンプ場へと進路を取る。

スマホは沈黙したままだ。
だが、黒い相棒(V-STROM)の鼓動と共に、雨を切り裂き、この状況を早く打破したい。
私はキャンプ場へと一直線に突き進んだ。
【滞在編】鉄筋東屋。最後の寝床は森の斜面に現れた「星屑の?ステージ」

日田の市街地を突き進む。
一時的な雨はやみ、盆地特有の熱気が街中に充満していた。
バイクで受ける風には微塵も涼しさがない。
この旅で九州一の熱気を感じたのがここ日田だった。
キャンプ場付近まで到達し、ここからはアナログ地図を頻繁に開き、進路を確認する。
視界に「伏木公園」の看板が飛び込んできた。
よっしゃ、きたぜ!安堵が広がる。

右側に何らかの建物が見えたが、迷わず左の道を選択し、さらに奥へと進んだ。

しかし、辿り着いた先は養蜂所。

そこから先は峠道のような独特の雰囲気がどこまでも続いている。
違うな…。直感が告げる。
狭い上り坂での強引な方向転換。危うくこの旅初の立ちごけを喫するところだった。

先ほどの建物の場所まで引き返す。
なんだ、最初からここに来ていればよかったのだ。
駐車場に黒い相棒を止め、予約時に指示された通り、管理者の番号へ電話をかけた。

伏木公園キャンプ場 場内散策
「おや、来たかね」 電話の向こうから、年配の温かな声が響いた。
「門は開けておいたから、先に中に入って待っていておくれ」
管理棟の横から伸びる道は、どこまでも上へと続き、その先は見通せない。

バイクに跨り、ゆっくりと場内へ進入する。 すぐ左手には炊事棟があり、その周囲をバンガローが囲い、石囲いの区画サイトが点々と現れた。
区画サイトの光景は、どこか沖縄で見た「グスク(城)」を彷彿とさせる独特な空気を纏っていた。

しかし、この急傾斜だ。あの区画へ荷を搬入するのは相当な骨が折れる。
もし他に車が来れば動線を塞いでしまうし、不安定な荷下ろし中にバイクを横転させるリスクも拭えない。
そこをやり過ごすと、右手にパルテノン神殿を思わせるような、重厚な鉄筋の東屋が現れた。


さらに上へと進めば、左手に平地が現れた。

かなりのところまで登ってきたが、周囲は深い木々に覆われており、ただ「広場」と呼ぶほかない空間だ。

角にある建物はトイレかと思ったが、違うみたい。施錠されており確認は叶わなかった。

ここならバイクを横付けして設営できるが、トイレのたびにこの坂を往復するのはなかなかの労力だ。
斜面の区画か、頂上の広場か。 どちらも一長一短。
決め手に欠けたまま、私は中腹にあったあの東屋の前でバイクを止めた。

管理人さんの到着を待つ間、パニアから朝仕入れていたカボスジュースを取り出す。
もはや冷えてはいなかったが、喉はカラカラだ。
大分の誇るその味をゆっくり味わう余裕もなく、ただ甘い液体を勢いよく喉の奥へと流し込んだ。

鉄筋東屋は伝説のバンドマンが遺した舞台?今宵の寝床は、星屑のステージに決まり!
コンクリートのひんやりとした地面に腰掛け、ぼんやりと景色を眺めていると、管理人さんが歩み寄ってきた。
「おや、このバイクは何CCかな?」
250CCだと答えると、「へぇ、そげん大きかとね。もっとあるかと思うた」と、その車体に目を丸くする。聞けば、彼もかつては熱心なバイク乗りだったという。
「ずいぶん立派な東屋ですね」 思わず口をついた言葉に、彼は誇らしげに目を細めた。
「昔、バンドばやっとってね。ここに舞台ば立てたかと言ったら、行政が立ててくれたんよ。この裏の茂みに観客が座ってね、ここをステージとしたんよ」
当時の功績を買われて建てられた、本物のステージだった…。
目の前の穏やかな男性が、実はとんでもない人物なのではないかという予感がよぎる。
「もしここが気に入ったんなら、ここで寝てもよかよ。きょうはあんたひとりだし」
願ってもない申し出だった。 「ありがとうございます、ぜひそうさせていただきます!」
「シャワーは使うかね?」 料金を聞くと100円だという。即座に硬貨を差し出すと、
「じゃ、開けとくけん、好きな時に使いなさい」と鍵を開けてくれた。
それからしばらく、この地の「食」についての話に花が咲いた。
なかでも興味深かったのは、日田焼きそばの元祖・想夫恋(そうふれん)にまつわる話だ。
「想夫恋は、日田焼きそばとはまた別のもんなんよ」
元祖でありながら、地域ブランドの枠組みには属さない独立独歩の存在。なんだかややこしいが、そんな地元を知る者だけが持つ生きた情報を聞くのが、たまらなく楽しかった。
最高の情報と、最高の根城。 ここであればバイクを横付けでき、足元はフラットなコンクリートだ。
ペグこそ打てないが、雨に濡れた土で大切な道具を汚す心配もない。
愛車と同じくこの旅を支えてきた相棒、アテナワイドツーリング。後ろの一箇所だけテンションがかけられないが、自立式テントの強みを活かせば、眠るには十分すぎるほどの居住性が確保できる。
明日の東京直行、1,100km。その強行軍を前に、これ以上ない好条件がすべて揃った。
九州にちなみ、夜はここが、あの名曲のような「星屑のステージ」になるだろうか。
そう思うと、急にワクワクした。

最後の晩餐 チキン南蛮とカボスハイボール。星なき夜のラストステージ
設営を終え、最後の晩餐を思案する。
日田焼きそばにも惹かれたが、焼きそばに1,000円以上を投じるのは、感覚的に少々手痛い。
ならば大分らしく鶏で〆るか?目星をつけた総菜屋のかしわ専門店は、間もなく閉店時間を迎えようとしていた。
うーん、なら地元スーパーで心ゆくまで買い込むか。

再び舞い戻った日田の市街地は、日が暮れたというのに、まだむんむんとした熱気が立ち込めていた。
スーパーをハシゴし、視線が止まったのは割引シールの貼られたチキン南蛮だった。
ふっ、これこそが俺の旅にはふさわしい、か。
食の記憶が再び宮崎に引き戻されるが、九州という大きな括りで見れば間違いではない。
かぼすハイボールをカゴに入れ、大分への免罪符とした。
アタックス 日田店

マルミヤストア 日田店

寝床の神殿へ戻り、キャンピングシェルベースに買ってきたものを並べる。
これが九州旅、最後の晩餐だ。

空は厚い雲に覆われ、期待した星は見えなかったが、ここが旅のラストステージであることに変わりはない。

温度計に目をやるとここが山中ゆえか、街中と比べ涼しさが漂い始めていた。

氷をたっぷりと入れたカボスハイボールを、喉の奥へ流し込む。
明日は東京かぁ…。
長かったような、短かったような。
九州を走り倒した10日間の記憶をしみじみと頭に巡らせた。
テントに入ると、内幕に一匹のアマガエルがぴったりと張り付いていた。

不意に、自宅で留守番させているデップ君(アマガエル)の姿が頭をよぎる。あいつは元気だろうか。
まるまる肥えているからデップ(り)君なのだが、まさかこのカエルみたいにげっそり痩せてないよね…。
明日帰ったら、大好きな餌をたらふく食わせてやろう。
暗闇の中でそう独りごちて、寝床へと潜り込んだ。
さらば九州。1,100km先の日常へ

テントを開けると、曇天だった。
蒸し暑い熱気が身体にまとわりついてくる。
軽い朝食を胃に流し込み、すぐさま撤収の準備に取り掛かった。

足元から昨日のカエルが顔を出した。いや、顔が違う。
これこれ、テントの下に潜り込まないでおくれ。

下がコンクリートのおかげで、昨夜の雨による泥汚れもなく、撤収作業はスムーズに完了した。

パニアに荷物を詰め込み、相棒に跨る。
これから待ち構える東京までの果てしない道のりを思うと、億劫さが頭をよぎる。
だが、その迷いを振り払うようにサイドスタンドを跳ね上げた。
さて、帰るか。

伏木公園キャンプ場 まとめ

夏季限定、期間が嵌れば絶好の拠点。

伏木公園キャンプ場は、7月20日~8月31日という非常に限られた期間にのみ開場するキャンプ場です。
今回のように、旅のスケジュールがうまくこの期間内に嵌るのであれば、これほど戦略的で絶好の拠点は他にないでしょう。
盆地特有の暑さで知られる日田市ですが、ここは標高もあり、街中と比べれば比較的涼しく過ごすことができます。
「無料」「バイク乗り入れ可能」「100円で時間制限のないシャワー」といった条件は、
旅人にとって本当にありがたいものです。
ただし、今回私が体験したような東屋(ステージ)下での設営については、必ず管理人さんの了承を得ることを徹底してください。
この日は私一人だけという特異な条件と、管理人さんのご厚意が重なって実現した特別なケースです。
平日を狙い、運が良ければ、皆さんもこの場所に設営できるかもしれません。
利用上の注意:火気厳禁のルールについて

場内は火気厳禁となっており、バーナー等の火器が使えるのは炊事棟のみです。
夏限定のキャンプ場ですから、無理に焚き火にあたる必要もないでしょう。
カップラーメンも手軽ですが、ここではお湯を沸かす手間さえいらない、市街地で買い込んだ出来合いの食材を楽しむスタイルをお勧めします。
管理人さんの負担軽減への願い
予約先は『日田市市民サービス公社』ですが、その際に管理人さん個人の電話番号を案内されます。
管理人さんにもご自身の生業があり、日々の生活があります。
近くに住まわれているという理由で、その合間を縫って管理を引き受けてくださっているのが実情です。
利用者は受付時に電話をするしか術がありませんが、必要以上に手間を取らせないよう配慮したいものです。
この記事のような情報を事前に確認し、余計なトラブルを起こさず、スムーズな利用を心がけていただければと思います。
ともすれば、この方がいなくなってしまえばこの無料のキャンプ場自体の運営が成り立たなくなってしまいます。
老婆心ながら、市の方でももっと現場の管理に寄り添った支援体制を整えてほしいと願わずにはいられません。
おわりに 九州一周キャンプツーリングを振り返って

今回のキャンプ場を朝8:30に発ち、東京の自宅に辿り着いたのは、翌深夜の3:30でした…。
その距離、実に1,112km。
今回の九州ツーリングにおける総走行距離は、なんと4,017kmに達しました。


九州一周キャンプツーリング、全10回にわたるお話は、これで最終回となります。
最後まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
そして九州でお世話になった方々にも感謝を申し上げます。
今回の全行程(ルートや立ち寄りスポットなど)については、また別の機会にお伝えできればと考えています。
この記事が、いつかあなたの九州一周キャンプツーリングを計画する際、少しでも参考になれば幸いです。
それでは、また次の旅でお会いしましょう!
(ちなみにペットのデップ君は無事でした。)






