3月初旬、春のように暖かくなったかと思えば、雪が降って冬に逆戻りするような、気まぐれな季節。
恐らく今季、最後の冬キャンプとなるであろう、2泊3日のバイクキャンプに出かけた。
気温は日中こそ春を感じさせる暖かさだが、夜は氷点下まで冷え込む。
シュラフなしでは、凍死しかねない寒さだ。
コットにマットを引き、インナーシュラフと寝袋カバーを組み合わせることで、快適な睡眠をする計画だった。
荷物は嵩張るが、背に腹は代えられない。
富士山を望む絶好のロケーションのキャンプ場巡りを心待ちにしていた。
しかし、まさかのシュラフ忘れという大失態を犯してしまう。
シュラフなしでどこまでやれるのか。
戦慄と苦悩と実体験。
奇しくも貴重な体験となったのでここに記しておこうと思う。
インナーシュラフと寝袋カバーで一晩過ごせるか? 1日目

やってきたのは静岡県函南町、negura campground。
富士山と沼津の夜景が一望できる絶景ロケーションが楽しめる場所。
最近人気爆上がりのキャンプ場。

富士山が良く見える一等地は既に先客あり。まぁまぁ及第点といえる場所を確保した。
設営を済ませて昼ごはん。
すぐ食べれるカレー飯にお湯を注ぐ。併せてコーラにウィスキーをいれたコークハイで喉を潤す。
さて寝床の準備に取り掛かろうか。
コットを組み立て、モンベルのフォームパッドを颯爽と敷く。
インナーシュラフ(Naturehikeインナーシーツ)と寝袋カバー(Coleman)をポンポンと取り出し、コットに並べる。

あれ?
肝心なモノがない。
いやいやまさか…。バックパックの中を探すがシュラフがない?!
頭が真っ白になり、事態を飲み込めず、徐々に戦慄が背筋を這い上がってきた。
とりあえず落ち着け。
そういや、なんとなく容量に余裕があるなと思っていたが、これだったのか…。
前回のキャンプの後、シュラフはベランダ干しして大きな袋に入れっぱなしだったのを思い出す。
今頃奴は、部屋の隅に鎮座していることだろう。
管理棟へ行き、毛布か寝袋のレンタルがないか聞いてみることにした。

レンタルは、なかった。
近くのキャンプ用品店を紹介されたが、既に飲酒をしており買いに行くのは無理である。
不憫に思ったのかカイロを数枚いただいた。(※これは個人間での配慮であり、常にこのようなサービスがあるわけではないので誤解なきよう。)
「何枚か身体に貼ったらなんとかなるでしょう。」
感謝でしかない。人の暖かさが身に染みる思いだった。

2枚ほどは所持していたが、これだけあればなんとかなるかもしれない。
あとは着れるだけの服を着るしかない、か。

インナー用も含めダウンジャケット2着とダウンベスト。
着ているのがヒートテックの肌着とワークマンの焚き火ジャケット。
ズボンはコロンビアのOMNI-HEAT、ズボン下はヒートテックのモモヒキ。
靴下は普通のハイソックス。
焚き火ジャケットはダイソーのコンプレッションバッグに入れて枕にしようとしていたが、やむを得ない。
これだけ着込んでカイロ貼ったら寝れるだろう、と高を括る、というか腹を括った。

日が暮れる。
沼津方面に灯がともった。
急に辺り一面冷気が襲う。
日中はあたたかな陽気だったが、肌を刺すような寒さ。
焚き火で暖をとった。

時間は早いが寝ることにしよう。
気温は0℃、幕内で吐いた息は白い。
時刻は22:00をまわったところ。
持ち運びを重視した小さ目の湯たんぽに熱々のお湯を注ぎこむ。
首元と腰にはカイロを貼り付けた。
着れるだけの服は全て着込み、アウターのジャケットだけ足を袖口に突っ込み、奇妙な姿で下半身を覆うようにして着た。
ペラペラのインナーシュラフに潜りこみ、これまたペラペラの寝袋カバーに包みこむ。
うう…。寒っ…。
寒すぎて露出した肌が痛い。
何時だろ?2:00くらいか…?
まだ0:30?!
足元に置いた湯たんぽは冷え切っていた。
お湯を沸かしスープを飲んだ。
湯たんぽも暖めなおし。

朝まで乗り切れるのか不安になる。
湯たんぽに2度目のお湯を注ぎ、テイク2。身体は疲れているので眠気はあるのだが…。
寒い。2:00にまた目が覚めた。
なんだか頭がズキズキする。
寒かったのだが、朦朧としていて、そのまま眠りについた。
5:00。バチっと目が覚めた。
身体を覆うものは全くと言っていいほど暖かくはない。
そのままいてもあたたまる見込みがないので起きた。
関節ががくがくとする。動きが鈍い。
バーナーに火をつけ、朝ソバを喰らう。

バイクのパニアには霜が降りていた。

とりあえず、生きていた。
死にはしなかったが、生死を彷徨った。
マットのおかげか、背面は大丈夫だった。
問題は前面半身。
あれだけ服を着こんだが、凍てつくように冷え切っていた。
やはり布団のようなものを掛けなければだめだと感じた。
【結論】
インナーシュラフと寝袋カバーだけでは寝られない。
インナーシュラフと寝袋カバーで一晩過ごせるか? 2日目

なんで2泊3日にしたんだろう…。
後悔しても仕方がない。どう改善すべきかが最重要。

次のキャンプ地は富士宮。
課題としては身体を包める何かが必要。
下手なシュラフは買いたくない。
かといってダウンハガーがあるのに高価な寝袋をもう一つ買う気にはなれない。
毛布かぁ。嵩張るしな。高いんじゃないかしら…。
では厚手のタオルケット?価格も嵩も押さえられそう。これなら家でも使いたいからアリか?
あれこれ思案しながらバイクを走らせる。
道すがらニトリに寄った。
10:00開店。ニトリに開店待ちをしたのは生まれて初めてだ。
既に毛布は陳列されていなかった。もうシーズンからは外れているみたいだ。
セール品でフリース素材のこたつ布団があった。肌さわり良さそうだし、一応候補。
そんな中、目に留まったのが『着る毛布』。

これだ!!
ちょうどセールで安くなってる。
しかしSサイズで、色はピンク1択。ギャルの家着のような印象。
Sサイズが入るか試着。なんとか着れた。
今の状況下、これだけドンズバなアイテムは他にない。しかしこれ着て夜中徘徊したら変態扱いされるのでは…。
店員さん『ピンク、お似合いですよ!』
購入に至った。
アウトドアショップも寄ろうと思っていたが、こいつを入手したのでルートから外した。
時間も押していたのでスーパーによってキャンプ場へ急ぐ。
2泊目のキャンプ場は『富士高原トマトフィールド』。
通称『とまとっぱら』。
ふもとっぱらより富士山に近く、大迫力な富士山ビューが楽しめる場所。

頼もしいアイテムを入手し、不安な気持ちからは一時解放された。
身体の回復を図るため、近くの温泉で湯治。
昨日の教訓より、ぎりぎりまで焚き火で粘る。
寒さで途中起きるのは嫌だった。

時刻は0:00。
寝る準備に取り掛かる。

首元、腰にカイロを貼る。
チンチンに沸かしたケトルから、熱々のお湯を湯たんぽに注ぐ。
着る毛布。肌さわりが良い。
肌着の上に羽織ることにした。暖かさを感じる。
この上にダウンを2枚重ねで着こんだ。
昨日よりも良さそうだ。
カバーを付けた心許ないインナーシュラフに身体を預ける。
就寝。

5:00に目が覚めた。
途中起きることはなかったが、外気にさらした皮膚が痛い。
顔、指先、つま先。
顔は浅黒く変色。火照って触るとガサガサする。
凍傷では?!
なんで靴下、ダーンタフはいてこなかったんだろう…。
焚き火で朝ソバ食べて暖をとる。

とにかく生きた。生きながらえた。
人間ってそんな簡単には死なないものだと思った。
【結論】
着る毛布は急場しのぎにはなったが、露出した肌はダメージを負った。
本来したかった冬のキャンプ装備
シュラフはモンベルのダウンハガー650#1を使用している。

コンフォート温度は-4℃、リミットは-10℃のスペックであるが、4年目ともなると10℃以下でも寒さを感じるようになってきた。
それを補うために導入したのが、インナーシーツと寝袋カバー。
インナーシーツはシュラフの中に着込むことで保温性を高め、寝汗を寝袋につくのを防いでくれる。

寝袋カバーは何十年も前に買ったColeman。廃盤品。

アルミ蒸着されており結露から防ぐ。
経年劣化で若干加水分解しボロがきてるが、シュラフと組み合わせると効果は抜群。
下に紹介するのは購入検討中の寝袋カバー。もうボロボロなので。。
そして背面を冷気から防ぐマット。

断熱性を表すR値は2.3。

これにカイロと湯たんぽを加えることで快適な睡眠を確保することができたのだが…。
因みに紹介する湯たんぽはサイズがコンパクトでソロキャンプに最適。
但しは朝までは持たない。
カイロはどのメーカーでもよいが、貼るタイプをおススメする。
首元、背中、腰に貼ると効果的である。
寝袋なし 2泊3日冬キャンプを終えて

冬キャンプで寝袋を忘れるといった大失態。
寝袋の効果を高めるインナーシュラフと寝袋カバー。
主役なしには到底寝ることは出来ないと悟った。
どうにかこうにか夜を明かすことは出来たが、
くれぐれも寝袋はお忘れなく…。
今回のキャンプは、忘れ物の代償の大きさを改めて教えてくれる貴重な体験となった。
