中国一周キャンプツーリング、第7夜。 舞台は津和野から、次なる目的地・出雲へ。
今回目指したのは、出雲と松江のちょうど中間に位置する無料の「平田森林公園キャンプ場」です。
立地は抜群、ツーリングの拠点としてはうってつけの場所。
…のはずが、ここを拠点にして走り始めた矢先、旅は予想外の展開へ。
本記事では、平田森林公園キャンプ場で一晩過ごして感じた実感をレポート!
さらに、ツーリング中でまたしても見舞われてしまった「旅のトラブル」の様子も合わせてお届けします。
平田森林公園キャンプ場の魅力とは
- 無料&入退場フリーの自由さ
- 出雲松江観光の拠点としてロケーション
- 眼下の池を見下ろすレイクビュー
無料&入退場フリーの自由さ
出雲市が管理するこのキャンプ場は、事前に出雲市役所都市計画課公園係へ電話連絡(予約)をするだけで、無料で利用することができます。
さらにチェックイン・チェックアウトの時間がありません。
スケジュールに縛られることなく、旅のルートや天候に合わせた柔軟な旅を可能にしてくれます。
出雲・松江観光を縦横無尽に楽しむ「最高の立地」
地図を開くと一目瞭然ですが、ここはまさに出雲大社と宍道湖の中央辺りに位置する絶妙なポジションにあります。


島根の東西をアクティブに駆け巡るためのベースキャンプ地として、これ以上ない好立地です。
テントを開ければ広がる、眼下の「レイクビュー」

このキャンプ場を最も特徴づけているのが、ターゲット・バードゴルフ場に隣接した谷あいの斜面という独特の地形です。
テントサイトが一段高い「ひな壇」のような構造になっているため、目の前にある池を見下ろすような景色が楽しめます。
テントの入り口を池に向けて設営すれば、自分だけのプライベート感あふれるレイク(池)ビューが完成します。
平田森林公園キャンプ場 基本データ

| 訪問年月 | 2025/10 | 曇り・雨/曇り |
| 名称 | 平田森林公園キャンプ場 | 平田森林公園キャンプ場公式H.P |
| 場所 | 〒691-0031 島根県出雲市東福町 | 0853-21-6735 |
| 業態 | 公営 | 出雲市役所都市計画課公園係 |
| ロケーション | 広場、高台 | 平田森林公園内 |
| サイト | フリーサイト | 草地 硬 □□□■□ 柔 |
| サイト規模 | 小規模 | 約10張〜15張程度 |
| 車両乗り入れ | 不可 | 炊事棟手前に駐車可能 |
| 営業期間 | 通年 | |
| 予約方法 | TEL | 0853-21-6735 |
| in / out | フリー | |
| 料金(利用プラン) | 無料 | |
| (内訳) | 入園料・サイト使用料 | 0円 |
| 駐車料金 | なし | |
| 設備 | 管理棟:なし | |
| (売店:なし) | ||
| (レンタル:なし) | ||
| トイレ:あり | 水洗和式 | |
| 風呂:なし/シャワー:なし | ||
| 炊事棟:あり | ||
| 灰捨て場:なし | ||
| ゴミ捨て場:なし | ||
| その他施設 | ターゲット・バードゴルフ場 | |
| 直火の可否 | 不可 | ※火気は炊事場のみ使用可能 |
| 薪の販売 | なし | |
| 薪の現地調達状況 | 難 □□□☑□ 易 | |
| 電波状況 | 普通 | 楽天モバイル |
| 客層(主観) | ソロ□ ☑□□□ ファミリー | |
| 獣・虫 | 蚊 | |
| 買い出し | スーパーマーケット | コスとくマーケット平田店 約2.0km |
| コンビニ | セブン-イレブン 出雲平田町藪崎店 約2.3km | |
| 温泉 | いずも縁結び温泉ゆらり | 約2.1km |
平田森林公園キャンプ場 予約はどうする
利用料は無料ですが、事前の電話予約が必須となっています。
以下の窓口へ必ず「平日の開庁時間内」に連絡を済ませておきましょう。
問い合わせ先: 出雲市役所都市計画課公園係
電話番号: 0853-21-6735
受付時間: 月曜日〜金曜日 の 午前8時30分~午後5時15分
※祝日、および年末年始(12月29日~1月3日)日を除く
平田森林公園キャンプ場 サイトの様子

主な特徴
平田森林公園キャンプ場のキャンプサイトの主な特徴は、以下の通りです。
- 【サイトタイプ】:フリーサイト
- 【ロケーション】:広場、高台
- 【サイト規模】:1面のみ(約10張り程度)
- 【地面の状況】:草地
- 【乗り入れ】:場内乗り入れ不可(炊事棟手前に駐車)
- 【火気厳禁】:サイト内は火気厳禁(火気は炊事棟内でのみ可)

地面は傾斜・木の根・デコボコの三重奏
谷あいの斜面に1面だけのこじんまりとした草地の広場。
ひな壇状のサイト内は、全体的に傾斜しているだけでなく、あちこちに木の根が張り巡らされ、大木の周囲は土が盛り上がっています。


そのため、テントを水平に張れるフラットな場所は限られています。
ソロ用の小さなドームテントなら隙間を見つけて設営できますが、ファミリー向けの大型テントやタープを斜面がなく張れるスペースはごく僅かしかありません。
「火気厳禁ルール」と「乗り入れ不可」がもたらす炊事棟周りはテントの密集地帯

このキャンプ場はサイト内での火気使用(焚き火台、バーナーでの火おこし等も含む)が一切禁止されており、唯一火を使えるのは「炊事棟内のみ」というルールがあります。
さらに車両の乗り入れができない(バイクや車は炊事棟の手前に停める)という条件が重なるため、
結果として荷物運びが楽で、火が使用できる炊事棟のまわりに、多くのキャンパーのテントが集中するという傾向があります。
奥の静かなレイクビューを狙って不便さを取るか、利便性を取って炊事棟まわりの密集地を選ぶか、現場での見極めが重要になってきます。
どこに張るのが正解?平田森林公園キャンプ場の「おすすめ設営エリア」3選


① 【利便性×絶景】すべてが揃った「炊事棟の池側」エリア

このキャンプ場における間違いなしの「一等地」がここです。
- 特徴: 炊事棟のすぐ池側に、大型テントとタープを同時に広げられる貴重な平坦地があります。
- メリット: 駐車スペースからも近く、火気を使える炊事棟へのアクセスも抜群。それでいて、炊事棟を利用する他のキャンパーの動線を邪魔しない絶妙な位置関係にあります。
- 注意点: 池の逆側はサイト利用者の導線を妨げるため設営は避けたほうが無難です。
② 【静寂×レイクビュー】ソロでしっぽり過ごす「池側の平坦地」エリア

他のキャンパーの気配や生活音から少し離れて、池を見ながらプライベート感を重視したい人向けのエリアです。
- 特徴: 炊事棟から少し奥へ進んだ池側に、平らなスペースが存在します。
- メリット: 前述の通り傾斜地ばかりのキャンプ場ですが、ここなら水平を確保しつつ、目の前に広がる美しいレイクビューを独り占めできます。しかも木陰付き。
- 注意点: 駐車場や炊事棟からは多少の距離があるため、荷物をコンパクトにまとめたソロライダーや、ミニマルスタイルのキャンパーに向いています。

③ 【ほぼオートサイト】フットワーク重視の「駐車場・池側際」エリア

「とにかくバイクの近くにテントを張りたい、荷物の移動を最短にしたい」という時の機転を利かせたエリアです。
- 特徴: 炊事棟の手前、駐車スペースの池側のキワ(際)にあたる場所です。
- メリット: バイクのすぐ真横にテントを設営できるため、ほぼオートキャンプ感覚で利用できる高い利便性が魅力です。
- 注意点: スペースが限られるため、大型テントの設営はマナー(通念)としてNG。また、混雑状況や他の車両の出入りの邪魔にならないタイミングを見極め、コンパクトなバイク+ソロテントの組み合わせ限定で狙いたいポイントです。
【次点】圧倒的なプライベートゾーンを確保するなら「最奥のちょい手前」

周りの視線を気にせず、秘密基地のような空間で静かに過ごしたい人におすすめの穴場です。
- 特徴: サイトの最東端(一番奥)に進むと、茂みに囲まれたスペースがあります。
- メリット: まさにサイトの端。周囲からの視線が遮られるため、プライベート感を確保できます。
- 注意点と攻略のコツ: 一番奥の突き当たりまで行ってしまうと、サイトが先細りになっているだけでなく、地面にコンクリートが埋め込まれているためペグダウンができません。
そのため、その「一歩手前」のスペースを見極めて設営するのが最大のポイントです。
なお、駐車場や炊事棟からはもっとも遠い距離になるため、荷物の運搬(往復)にある程度の覚悟が必要です。


平田森林公園キャンプ場 施設の様子
このキャンプ場には管理棟はなく、無人管理となっています。
場内にある主要な設備は、炊事場のみです。
トイレがさらに高台を越えた遠い場所にあるのが特徴です。

平田森林公園キャンプ場 炊事場

車両が停められる駐車スペースのすぐ目の前に炊事場があります。
中央には横長のシンクと水道が向かい合わせで対になっており、その横にレンガ造りのかまどが並ぶ造りです。

平田森林公園キャンプ場 トイレ

このキャンプ場を利用する上で、最も知っておくべき特徴がトイレの配置です。

トイレはテントサイト内にはなく、キャンプ場からさらに坂を登り、ターゲット・バードゴルフ場を突っ切った先のかなり離れた場所に設置されています。
トイレ内は水洗の和式便器。
無料の野営地でありながら、トイレットペーパーがしっかりと備え付けられているのが嬉しいポイントです。


平田森林公園キャンプ場 灰捨て
公式サイト及び、現地を調査した限りでは、灰捨てについての明確なルールや専用の回収場所は分かりませんでした。
そもそも炊事場以外サイト内は完全火気厳禁。いわば焚き火禁止。
その炊事場にあるかまども、床面に過去の消し炭がそのまま堆積してしまっているような状態で、お世辞にも「気持ちよく使える」とは言い難い光景です。

このキャンプ場は「ゴミは持ち帰り」が大原則です。
そのため、ルールが曖昧な現地に捨てていくのではなく、かまどを利用した際に出た灰や消し炭についても、基本的にはすべて自分で持ち帰る前提で準備をしておいたほうが良さそうです。
平田森林公園キャンプ場 ごみはどうする?

平田森林公園キャンプ場では、前述した通りすべてのゴミが持ち帰りとなっています。
平田森林公園キャンプ場 その他施設

キャンプ場の上の段には、広い敷地にターゲット・バードゴルフ場が広がっています。
【平田森林公園キャンプ場体験レポ】出雲の無料拠点確保と神域の結界に阻まれたトラブルツーリング
島根県は東西に長い。前泊した津和野町はその西端だ。
ここから鳥取県へのアクセスを吟味しながら、ルート上にある無料の拠点をグーグルマップで探してみると、そこそこの数がヒットした。
その中でも、出雲大社と宍道湖のちょうど真ん中あたりに位置する「平田森林公園キャンプ場」に目を付けた。
さっそく役所へ電話を入れてみる。
「もしもし、〇月✕日、利用したいのですが、いかがでしょうか」 「いいですよ」
―…。
それだけで通話が終わりそうな、あまりにも長い「間」があったので、
こちらから慌てて氏名を申し伝える。
これで本当に受付完了なのだろうか? 現地に管理棟はなく、入る時間は自由とだけ聞いた。
うん…、とりあえず宿営地のめどはついたぞ。
津和野から出雲へ。東西に長い島根県を横断する快速路をゆく

天気は曇天。
ここ最近は強い日差しが続いていたので、今日は移動日と割り切ってワインディングを流すにはちょうど良い。

津和野から国道9号を北上し、海岸線に近づくにつれて車通りも多くなってくる。
そこからは山陰道の無料区間を乗り継ぐ快速ルートだ。

走っていて思うが、島根ナンバーの車は総じて運転がお行儀良いというか、おとなしい印象。
…などとのんびり構えていたら、バックミラー越しに猛追をかけてくる1台の黒い車がどんどん背後に迫ってきた。
こちらも決してちんたら走っているわけではないのだが、おずおずと路肩へ寄って道を譲る。
すれ違いざまに見えたのは「姫路ナンバー」だった。
なるほど、既に彼らのテリトリー内にいたのか…笑。
山陰と山陽の性格の違いを見たような瞬間だった。


時折チラリと姿を見せる海の景色が実に心地よい。 やがて「出雲」の標識が見えてきた。
なになに、有料区間はここまでか。では、ここで高速を降りよう。

3度目の訪問となる出雲の地は、道中の曇天が嘘のように綺麗な青空が広がっていた。
この地では珍しく快晴で迎え入れられたようだ。

のどかな街並みを抜け、バイクはやがてひっそりとした山道へと入っていく。

目的地はもうすぐそこだ。…ん、ここか?

視線の先に現れたのは、「ターゲット・バードゴルフ場」と書かれた看板。
ターゲットバードゴルフ? なんか妙に長いネーミングだな…と思いつつ通り過ぎようとしたら、
まさにその矢印の先にある細い道こそが、キャンプ場へと続くルートだった。

行き過ぎたバイクをくるりと旋回させ、その小道へと入っていく。
絶景だけどカオス化?無料無管理キャンプ場の実地調査と設営場所の吟味
細い道を抜けていくと、谷に向かって左へと降りるスロープが現れた。

するすると降りていくと、こじんまりとした広場とロッジ風の炊事棟が姿を現す。
なるほど、ここが駐車場か。

場内を見渡すと、既に何張りかのテントが設営されていた。時刻は12:00。休日の割にはやや控えめな印象だ。

バイクを降り、さっそく場内へ踏み入れてみる。
サイトのすぐ下には池が広がっており、ロケーション自体はなかなかの絶景だ。

しかし、この素晴らしい景色の目の前であるにもかかわらず、炊事棟から奥に立つテントはわずか一張り。
それもそのはず、実際に歩いてみるとなかなかの傾斜具合だったのだ。
さらに、植栽された木々の根元がボコボコと盛り上がっており、これが設営の難易度をさらに引き上げているようだった。

一番奥まで進むとそこそこの平地があったが、振り返ってあのナナメった道を往復するのかと思うと気持ちが萎え、そこへの設営は一瞬で諦めた。

バイクへ戻る途中、改めて場内を観察してみる。
炊事場の横(池側)には、一段といい場所を陣取る大型テント。
おお、こんな特等席があったのかと感心した反面、
見て見ぬふりをしていたが、その反対側には、駐車場から場内の動線を遮るようにして設営されたテントがある。
しかも、共有スペースであるはずの炊事場に自分たちの荷物を広げて占有している。
テントの主は不在のようだ。

さらに炊事場のかまどを覗き込むと、過去の消し炭が堆積し、ゴミまで混ざってそのまま放置されていた。

…なるほど。無料無管理キャンプ場ゆえの、カオス感を垣間見たようだった。
まぁ、そうは言っても今さら他に頼れる場所もない。来てしまった以上は腹を括るしかない。
なるべくひっそりと過ごせる場所はないかとウロウロしていると――見つけた。
ちょうど炊事場の隣、池側にこじんまりとした絶妙なスペースを発見。

ここなら他車の駐車を妨げないし、隣の茂みが設営スペースを確保させてくれている。
何よりバイクを横付けして実質オートキャンプの状態でいける。
図らずも、良い場所に設営できた。
頭の中で位置づけしたこのキャンプ場設営地「ベスト3」には入る好位置であろうと満足感。
出雲の町中華『天心』で驚異のコスパやきそばを食す
設営をすべて済ませると、時刻はちょうど13:00。
ここは炊事場以外が完全火気厳禁、つまり焚き火禁止のキャンプ場だ。
そのため、薪探しをする必然性もなく、場内の散策もサクッと回り終えてしまった。
ただひとつ、この時点ではトイレの正確な位置が不明ではあったのだが…。
何はともあれ、腹が減った。
ゴミをできるだけ減らすためにも、今日の昼飯は外食にしよう。
せっかくここまで来たのだから、ついでに出雲大社へでも行ってみるか。
(…今思えば、この参拝に向かう動機の不純さが、のちに不幸を招くことになろうとは。この時はまだ知る由もない)
スマホで周辺のスーパーと、目ぼしい飲食店を探してみる。
すると、町中華っぽい佇まいでありながら、なぜか「やきそば」を推している店を発見した。
気になるな。よし、ここにしよう。
出雲の中心地にある『天心』というお店にお邪魔した。
暖簾をくぐると、店内にはカウンターと小上がりがあり、地元のお客さんたちで大いに賑わっている。メニューを一瞥し、迷わずお目当ての「やきそば」を注文した。
紅いテーブルに置かれたお冷をガブガブと飲んでいると、頭上のテレビからはクマ出没のニュースが流れていた。

さて、これだけ推しているんだから、さぞかしみんなやきそばを注文しているのだろう、と思いきや、
周りから聞こえてくるのは「チャーシュー麺」と「餃子」の注文。
まてよ、と改めてメニューを見直すと、チャーシュー麺(並)がなんと驚きの640円?。
(ちなみに餃子は420円でした。)
急にとろりと旨そうな叉焼のビジュアルが頭に浮かび激しく心が揺らいだが、
いや、さっきまで完全にやきそばの口になっていただろうと、自分を戒めるようにお冷をもう一口飲み込んだ。
やがて、お待ちかねのやきそばが登場。
綺麗なヒスイ色の中華皿に盛られたやきそばの上には、紅ショウガが鮮やかな彩りを添えている。

うん、うまい。
素朴な味わいなのだが、それゆえに箸が止まらず、あっという間に平らげてしまった。
何と言っても、この時代においてコスパが驚異的だ。
やきそば(並)で、お会計は570円。満足顔で店をあとにした。ごちそうさまでした。
天心

神在月、出雲大社に漂う不穏な暗雲と、突然襲いかかる謎のバイク異常。

天心でのランチを終え、胃袋が満たされた後は、いよいよ出雲大社へ。
ところが、さっきまで快調に流れていた車線が、ある地点を境に急に混雑し始めた。
交差点の赤信号でパッと行く手を見上げたその時、ゾクッと鳥肌が立った。
さっきまで綺麗に晴れ渡っていたはずなのに、出雲大社の真上の天にだけ、意志を持っているかのような、おどろおどろしい不穏な暗雲が立ち込めていたのだ。

これは…不吉な予感がする…。
全国的には10月は「神無月」だが、ここ出雲の地だけは「神在月」。
八百万の神々の中に厄神が降臨し、いざこざをおこしているのではないだろうな…。


出雲大社まではあとわずか。しかし、目の前にはどこまでも連なる車のテールランプ。
スマホのナビ画面を開くと、大社へとアクセスするすべてのルートが真っ赤に染まっていた。
だが、こちらはバイク。その機動力を活かし、混雑する門前町の路地をすり抜けながら進む。
よっしゃ、これでもうすぐだ、と思ったのも束の間、無情にも目の前の道は期間通行止め。
万事休すか。
しかしナビを凝視すると、西側からのアプローチなら赤ではなく、幾分マシなオレンジ色になっているようだった。

一縷の望みをかけて細い小道を通り、国道431号へと合流を試みる。だが、出た先は反対車線。
しかも前も後ろもとてつもない大渋滞だ。
わずかな隙間を見つけ、申し訳ないと頭を下げながらなんとか列に割り込ませてもらう。

目的地はもう本当に目と鼻の先。なのに、一歩も進まない。
牛の歩みよりも遅い車の流れに合わせ、半クラ操作を何度も繰り返していた、その時だった。
――バイクに、不可解な異常現象が起こる。
突然、アクセルを握ってもいないのにエンジンから「うううううん!」と異様な唸り声が響き渡った。
普段と違うエンジンの熱気が、ふくらはぎを焦がすように異様に熱い。
さらに、半クラでもなくしっかりクラッチを握っているのに、ブレーキをかけていないと勝手に前に進もうとする?!
制御不能…。
パニックになりながらメーターパネルに目を落とすと、
そこには無情にも「FIエラー」の警告灯が灯っていた。

日本中の神々が集まるこの聖地で、見えない結界で拒絶されているかのような大トラブル。
そうは言っても、この身動きの取れない大渋滞の列からはすでに物理的にも逃れられない。
ヘルメットの中は完全に冷や汗でドロドロだった。
だましだまし愛車をなだめ、なんとか執念でバイク用の無料駐車場へ行き着いたものの、もう生きた心地がしない。バイクの機嫌が気になって気になって、気が気ではない。
とはいえ、命からがら辿り着いたのだ。とにかくお参りだけはしていこうと重い足取りで参道を歩く。 しかし、境内はとんでもない人だかりで、まるで休日の新宿駅かテーマパークのような大混雑ぶり。
過去に訪れたことがあったはずなのだが、当時の記憶など木端微塵に吹き飛ぶほど、初めて見るような光景に見えた。
参拝の列すらも気が遠くなるほどの長蛇の列。
バイクの不安と人混みに完全に心を砕かれた私は、参拝を諦め、そのまま踵を返してバイクへと戻った。

幸いにも、帰りのルートは驚くほど楽勝だった。
憑き物が落ちたかのように、すーっと神の聖域をあとにした。

出雲大社バイク駐車場
※無料

不動車になる前に動け!FI警告が点滅ピンチ、決死の松江遠征
あてもなく、キャンプ場近くにあるショッピングセンターまで恐る恐る走ってきた。
気づけば空模様は怪しくなり、ポツポツと無情な雨がヘルメットを叩き始めている。
とりあえず、雨宿りも兼ねて中へ入ることにした。
巨大な駐車場とは裏腹に、店内の人影はまばらで、どこか昭和のノスタルジーを感じさせる静けさが広がっていた。

メインで営業しているのは100円ショップくらい。他にフードコートのスペースはあったものの、既に閉店しているようだった。
さっきまでの出雲大社の、あのテーマパークのような狂気じみた大混雑は一体何だったのだろう。
同じ出雲市内とは思えない落差に包まれながら、少し気を落ち着かせる。
平田ショッピングセンター ViVA

しばらくして外のバイクへ戻ると、幸いにも雨はやんでいた。
望みをかけて、バイクのイグニッションキーのON・OFFを何度も繰り返してみる。
かつて、この方法で「FIランプ」を解除できたことがあったのだ。
しかし、今回はどうやらそう甘くはいかないみたいだった。なにしろ、先ほどのがっちりクラッチを握っているのに勝手に進む、という狂ったような異常状態は長年乗ってきて初めての経験だった。
時計の針は15:30を指していた。
旅先でトラブルに対処するには、あまりにも微妙すぎる時間帯だ。
スマホを叩き、近くのバイクショップを必死に検索する。
ヒットしたのは、ここから離れた松江にあるお店だった。
ここからの距離はおよそ40分。運良くお店に到着して、すぐに見てくれたとしても作業に最低30分はかかるだろう。そして、そこからキャンプ場へ単純に戻るだけでもさらに40分…。
頭の中で何度もタイムシミュレーションしていたが――やめた。
考えるだけ時間の無駄だ。 完全に息の根が止まり、見知らぬ土地で「不動車」になってレッカーを待つハメになってからでは遅すぎる。ここは一か八か、敢行すべきだ。
そう思い立つと、意を決してセルを回した。
メーターパネルでFI警告灯がピコピコと不気味に点滅するバイクの機嫌にはらはらしながら、
決死の覚悟で松江へと舵を切った。
必死に往復した宍道湖通り。FI解除、そして祝いの夜たこ焼き

本当ならば、明日、最高に気持ちいい気分で通り抜けるはずのルートだったのに…。
灰色に淀んだ宍道湖を右目に捉えながら、一縷の望みを託して松江のバイクショップを目指す。
本来なら感動するはずの絶景のレイクサイドロードも、なんの感慨も湧かなかった。
ただひたすらに、FI警告灯が不気味に明滅するバイクをなだめすかし、国道431号を突き進んでいく。
やがて宍道湖大橋を渡り、松江大橋をちらりと横目に捉える。

そういえば、ここは朝の連続テレビ小説のロケ地になっていた場所だ。
その影響か、あるいはただの夕方のラッシュか、道は混雑していた。
観光気分に浸る余裕など微塵もなく、もくもくとバイクショップへ向けて距離を削っていった。
ついた――。

バイクを止め、一目散に店内へと駆け込む。
道中、頭の中で必死にまとめていた異常な症状の経緯を店員さんに伝えようとするのだが、
焦りと疲労のせいか、うまく言葉が出てこない。
「じゃあ、さっそくピットに入れて見てみますね」 ありがたいことに、すぐにメカニックの方が対応してくれることになった。
診断を待っている間、ショールームに並んだピカピカの新型V-STROM 250が目に留まる。
「お…? なんか顔つきが変わった?」
少し目玉のデザインが変わった新モデルの車体を眺めながら、トラブルの渦中にいる我が身を呪い、少し恨めしくも思った。
だが、もしこれに乗り換えても、今みたいにカスタムし直すのがまた一苦労だな…、などと邪念を振り払いながら、祈るような気持ちで愛車の診断結果を待った。

「お待たせしましたー!」
メカニックの方の話によると、何らかの拍子に回転数が異常に跳ね上がったことで、FIエラーの警告が記録されたのではないか、とのことだった。
結局、アクセルを開けていないのに勝手に進もうとしたあの「恐怖の異常動作」の根本的な原因は不明のままだったが、専用の診断機を使ってFIエラーをリセットしてもらうことができた。
とりあえず、これで一旦、走行の不安は拭えただろう。最悪の事態は免れたのだ(と思うことにする。)
レッドバロン松江

張り詰めていた緊張の糸が解けると同時に、一気に心の憂いが晴れ、それと引き換えに猛烈な空腹感が襲ってきた。
すっかり薄暗くなった道路をキャンプ場へ向けて引き返す。
その道中、この旅の最大のライフラインとも言える、お馴染みのディオの看板が目に飛び込んできた。

迷わずピットインする。
よくよく考えたら、こんな夕暮れの時間帯にディオ(ラ・ムー)を訪れるのは初めてかもしれない。
まさか、あの元から爆安の価格帯の商品に、さらに値引きシールなんて貼られていたりしないかしら…、と期待を胸に総菜コーナーへ向かう。

さすがにこの時間、併設のPAKU-PAKUは既に営業を終えていたが、総菜コーナーの棚にパック詰めにされたたこ焼きが陳列されていた。
『PAKU-PAKUのたこ焼きは朝、または昼に食べるもの』というマイルールがあったのだが、今日のところは愛車の無事な復活祭だ。お祝いとばかりに、カゴに入れた弁当の上に、迷わずその1パックを積み重ねた。
急いで帰ろう。帰るあてがあって良かった。
ディオ 松江東店


それにしても、トラブルに怯えながら通ったあの道を、また同じように引き返すのはなかなか精神が萎える。
宍道湖の真横だろうがどこだろうが、辺りは真っ暗でライトに照らされた白線しか見えない。
とにかく、夜の風がやけに寒かった。

ガタガタと震えながら、なんとか無事に平田森林公園キャンプ場へと帰還した。
場内を見渡すと、ここを出発した時よりもいくつか車両やテントの数が増えているようだった。

ディオの戦利品を並べ工場のアナウンスをBGMに眠る
テントへ潜り込み、ようやくお待ちかねの夕食タイムだ。
今夜の戦利品をずらりと並べる。
びっくりジャンボメンチカツ丼と、たこ焼きだ。

何がびっくりって、このボリューム感だけではなく、お値段たったの198円という事実が一番驚異的である。さすがはディオ。コスパの神。
PAKU-PAKUのたこ焼きはすっかり冷めきっていたが、それでも十分に旨った。
ここは比較的街に近い立地なので大丈夫だとは思ったが、念のため野生動物対策として、空になったプラ容器は炊事場で綺麗に洗っておくことにした。
ひと仕事を終え、残り少なくなったチューハイをテントの中でちびちびと煽っていると、
突如、重低音の効いた迫力のあるエンジン音が近づき、まさにバイクのすぐ隣でピタリと沈黙した。
(嘘だろ…。無料キャンプ場ゆえの、恐れていたパリピ軍団の深夜襲来か!?)
一瞬にして全身の警戒センサーが跳ね上がる。
テントのジッパーを薄く開け、外へにゅっと顔を出してみた。
そこに立っていたのは、意外にも一人の若い男性だった。
こちらから「こんばんは」と声をかけると、
「あ、すみません! 今日はもう寝るために場所を借りに来ただけなんで!」
と、礼儀正しく挨拶を返してくれた。どうやら杞憂だったようだ。
彼もまた夜を徹して走ってきた同志なのだろう。少しだけ胸をなでおろした。
外はしとしとと小雨が降り続いている。
夜中だというのに、近くにある工場からは業務放送のスピーカー音声がここまで丸聞こえだった。
まぁ、多少の騒音はあるにせよ、今夜の治安自体は平和に維持されているようだ。
――今日は、本当にいろいろなことがありすぎた。
出雲の神々の洗礼は、想像以上にヘビーだった。
体力的にも精神的にも限界を迎え、早々にシュラフのジッパーを下ろし、
泥のように深い眠りへと落ちていった。
トイレはどこだ!?

翌朝。
ううっ、トイレに行きたい…。
目覚めと同時に強烈な尿意に襲われ、テントを開けるやいなや、必死の面持ちでトイレ探しを開始した。
駐車場の案内看板を見ると、矢印は「上」の方向を指している。
見上げると、そこには気が遠くなるような階段が続いていた。


どうせなら、この看板を掲げている小屋がトイレであればよかったのに…、などと不満をブツブツ呟きながら階段を上がると、さらに階段が…。
上りきるとそこには見渡す限り、例のターゲット・バードゴルフ場が広がっていた。
…え、どこ?

まさに一刻を争う緊急事態である。
あてずっぽうで迷子になるリスクは冒したくないが、立ち止まるわけにもいかない。
意を決して、あてもなく広大なゴルフ場をまっすぐ進んでいく。

やがてまたトイレの方向を示す看板が現れる、ようやく右奥にそれらしき建物が見えた。
見ると、その建物はまるで見つからないように木の枝葉で覆われていた。
間一髪、セーフ。
九死に一生を得て、もと来た道をトボトボと戻る。
それにしても、まさかサイトからこんなに遠かったとは。
トイレ位置の確認を昨日のうちに怠ったことを、深く猛省した。

因みに右の白いプレハブではない。

冷や汗をかいた場内への階段を下っていくと、昨晩遅くにやってきたあの若い男性ソロキャンパーが、早くも撤収作業に取りかかっていた。
無料無管理キャンプ場が引き寄せた類友?ULキャンパーから授かった旅人のウルトラソウル(魂)
朝の挨拶を交わし、ふと彼の傍らに目を落とすと、そこには実にストイックな超軽量テントが佇んでいた。なんと、これ自体がポンチョの代わりにもなる代物らしい。
へぇ、すごい!
なんでもUL(ウルトラライト)のスタイルに強烈なこだわりを持っているそうで、興味津々な様子を察してか、パッキングされた旅の参考になるマニアックなギアを次々と紹介してくれた。
そこから、話は自然と互いの旅の情報交換と発展していく。
彼は全国津々浦々、誰も行かないようなマニアックな名所から、オカルトの噂が絶えない曰く付きの場所まで、方々を訪ね歩いている強者だった。
特に印象深かったのは、北海道の礼文島で有名なフェリーの熱い見送り儀式の話題だ。
なんとその見送り拠点の内部にまで深く潜入したことがあるという。
「なるほど、あの謎に包まれた儀式の裏側はそうなっていたのか!」と、長年の疑問がここで一気に氷解した。
そんな数々の過酷な冒険譚は、彼の身体中に刻まれた本物の傷となってその歴史を雄弁に物語っていた。
類は友を呼ぶとはよく言ったもので、お互いに話は尽きることなく、気づけば2時間近くもぶっ通しで立ち話を続けていた。
別れ際、「これ、良かったら使ってください」と、美しい漆塗りのお玉を私に授けてくれた。
岡山からやってきた彼の熱い旅人の魂(ソウル)――いや、文字通りの「ウルトラソウル」を分けてもらったような気がして、本当に嬉しかった。
これからの旅の安全を祈るお守りにしよう。
驚くほどあっという間に、彼のコンパクトなテントが魔法のように畳まれていく。
「それじゃあ、お互い良い旅を!」 固い握手を交わし、互いの旅の無事を祈りあった。
こうした無料・無管理のキャンプ地は、マナーの低下やカオスな現実に直面することも多い。
しかしその反面、こうして同じ毛色を持った旅人と偶然巡り合い、稀有な時間を共有できるのもまた、こうした場所が持つ不思議な引力なのかもしれない。
さあ、こちらも撤収に取りかかるとしよう。
昨晩の雨でしっとりと濡れたテントをバサバサッと豪快に叩き、乾くのを待つことなくそのまま収納袋へと突っ込む。

そう、今日も今日とて、次なる未知のキャンプ地がまっているから。
まとめ:平田森林公園キャンプ場を振り返って

激動の舞台となった「出雲」そして「平田森林公園キャンプ場」。
実際の一晩を過ごしてみて見えてきた、このキャンプ場のリアルな「良かったところ」と「気になったところ」を総括します。
今回の滞在から見えた 良かったところ と 気になったところ

今回の滞在から見えたリアルな深掘り

無料無管理だからこその「無法地帯化への懸念」
ここはフリーサイトで車両の乗り入れは不可、しかも火器の使用は炊事棟限定という厳格なルールがあります。
しかし現地で目にしたのは、サイトへの動線を塞ぐような強引な設営や、炊事場の一部独占状況、そして目を疑うようなゴミの不法投棄でした。
無人管理であるからこそ、ここは我々利用者のモラルが試される場所。
一部の傍若無人な利用者によってこれ以上カオス化し、最終的に「閉場」という最悪の結末を迎えてしまわないよう、切に願うばかりです。
事前のロケハンと事前の用足しは必須
今回、朝一番で大ピンチを迎えた「トイレ問題」。
案内看板を頼りに長い階段を上がった先が、まさかの広大なターゲット・バードゴルフ場で、木の枝葉に隠れたまさに「ステルストイレ」を発見した時は本当に間一髪でした。
こちらで宿営する際は、土壇場で彷徨うのではなく、まだ明るいうちにトイレの正確な場所と距離感を頭に入れておいたほうが良いです。
そしてもう一つの教訓として、外出して戻ってくる前に、あらかじめどこかでトイレを済ませておくことをおススメします。
最後に

出雲大社での大渋滞、そして愛車の異常現象によって旅の継続にまで暗雲が立ち込めた時は、一体どうなることかと思いました。
行きは灰色に淀み、帰りは完全に真っ暗になった宍道湖を、何の感情も湧かないまま無表情で往復したあの時間は、まさにバイク旅ならではの泥臭いハプニングそのものでした。
しかし、そんな日を過ごした翌朝に、最高に尖った冒険人と出会えたことで、
結果的にこの場所での滞在は忘れられない特別な思い出となりました。
ハプニングも、良き出会いも、すべてをシートバッグに詰め込んで。
次なる未知のキャンプ地へ向けて出発です。
いざ、この旅の最後の砦――鳥取へ!
(次回【中国一周キャンプツーリング#8】へ続く)






