中国一周キャンプツーリングも、いよいよ第四夜。 舞台はついに山口県へ。
山口と言えば、日本最大級のカルスト台地・秋吉台。
今回の旅で楽しみにしていたことの一つが、「あのカルストの白い岩をすぐ傍らに眺めながらテントを張る」ということだった。
実はここまでの3日間、無料の野営地を3連続で繋いできた。
お財布には優しいものの、正直に言えば身体は限界寸前。
洗濯はしたい、温かいシャワーを浴びたい…。
いい加減、ここらで一発しっかりリカバリーしたい、という切実な気持ちもあった。
絶景の中に泊まりたいという欲望と、身体を癒やしたいという現実。
秋吉台の名を冠する「秋吉台家族旅行村」の区画一般キャンプ場は、はたしてどんなロケーションで、どう受け止めてくれたのか。
今回は、広島から秋吉台までのツーリングの様子とともに、あの白い岩肌の傍らで寝た模様をお送りします。
※この記事は、車の乗り入れができない「区画一般キャンプ場」についてのレポートです。(オートサイトの紹介ではありませんのでご注意ください)
- 秋吉台家族旅行村の魅力とは
- 秋吉台家族旅行村 基本データ(※区画一般キャンプ場)
- 秋吉台家族旅行村 予約はどうする
- 秋吉台家族旅行村 一般区画キャンプサイトの様子と特徴
- 秋吉台家族旅行村 施設の様子
- 秋吉台家族旅行村 体験レポ|まるで日本のサンクチュアリ?石羊の草原を見、地球のくぼみに眠る。カルスト三昧キャンプ
- 【まとめ】秋吉台家族旅行村の良かった点、気になった点、及び周辺観光の注意点
秋吉台家族旅行村の魅力とは
- カルスト台地の傍らで設営できるという贅沢
- 良心的な料金設定
「これぞ秋吉台」を感じる抜群のロケーション
秋吉台のカルスト展望台や、秋芳洞の「黒谷入り口」にほど近く、観光やツーリングのアクセスには抜群のロケーションです。
そして何より特筆すべきは、キャンプ場内(テントサイト)にも白い石灰岩が顔を出しているということ。
「これぞ秋吉台」という独特の景観を、テントサイトにいながら肌で感じることができます。
秋吉台の周辺ツーリングの拠点として、これ以上ない最高の立地です。
良心的な料金設定と旅人に嬉しい充実の設備
車の乗り入れができるオートサイトに比べて、区画一般キャンプ場の利用料金はかなりリーズナブルに設定されています。
その差は一目瞭然。オートサイト(電源なし)が4,000円なのに対し、区画一般キャンプ場はソロならなんと1,000円。 ※オートサイト電源ありは5,000円。
この価格差は本当にありがたい限りです。
さらに、付帯設備の良心的な価格設定も魅力。
温水シャワーは5分100円、洗濯機200円、乾燥機100円と、まさに旅人に嬉しい価格設定。
また、長期滞在や移動時に荷物を極力減らしたいバイク乗りにとって、ゴミを無料で廃棄できるのも見逃せない大きなメリットです。
お財布に優しく、旅の疲れをしっかりリカバーできる環境が整っています。
秋吉台家族旅行村 基本データ(※区画一般キャンプ場)

| 訪問年月 | 2025/10 | 晴/晴 |
| 名称 | 秋吉台家族旅行村 | 秋吉台家族旅行村公式H.P |
| 場所 | 〒754-0511 山口県美祢市秋芳町秋吉秋吉台1237−553 | 0837-62-1110 |
| 業態 | 公営 | 指定管理者制度による民間運営 |
| ロケーション | 芝生、カルスト | 秋吉台国定公園内 |
| サイト | 区画サイト | 芝 硬 □□■□□ 柔 |
| サイト規模 | 小規模 | 10区画 |
| 車両乗り入れ | 不可 | 専用駐車場へ駐車 ※バイクは炊事棟前まで搬出入時のみ可 |
| 営業期間 | 通年 | |
| 予約方法 | 電話 or 来場直接申し込み | ※無届けキャンセルは違約金 ※空いていれば飛び込み可 |
| in / out | 14:00~18:00/~12:00 | ゲート閉鎖時間:17:30 〜 翌8:00(夜間車両入退場禁止) |
| 料金(利用プラン) | 1,000円 | 区画一般キャンプ場 ソロ |
| (内訳) | 使用料 | 1,000円 |
| 駐車料金 | なし | |
| 設備 | 管理棟:あり | 8:30~17:30 |
| (売店:あり) | 消耗品、薪 等 | |
| (レンタル:あり) | キャンプ道具から調理器具まで豊富 | |
| トイレ:あり | 水洗、洋式/和式 | |
| 風呂:なし/シャワー:あり | 100円/5分 | |
| 炊事棟:あり | ||
| 灰捨て場:あり | ||
| ゴミ捨て場:あり | ||
| その他施設 | コインランドリー | 洗濯200円 乾燥機100円/30分 |
| テニスコート、アスレチック広場、バーベキュー広場、食事処 等々 | ||
| 直火の可否 | 不可 | 要 焚火台&焚き火シート |
| 薪の販売 | あり | 400~600円(杉・樫・桜、等) |
| 薪の現地調達状況 | 国定公園のため不可 | 難 ☑□□□□ 易 |
| 電波状況 | 弱い | 楽天モバイル |
| 客層(主観) | ソロ ☑□□□□ ファミリー | |
| 獣・虫 | イタチ・タヌキ・アナグマ | |
| 場内路面状況 | 舗装路 | |
| 買い出し | スーパーマーケット | サンマート 美祢店 約14.5km |
| コンビニ | ローソン 美東大田店 約6.6km | |
| 温泉 | 景清洞トロン温泉 | 約12.4km ※割引券あり 700円→500円 |
秋吉台家族旅行村 予約はどうする
最近のキャンプ場はネット予約が主流ですが、秋吉台家族旅行村は完全予約制でありながら、Webでの予約受付を行っていません。
予約は「電話」か「現地窓口」のみ
予約方法は以下の2ルートのみとなっています。
- ① 電話での予約:
0837-62-1110(受付時間 8:30 〜 17:30) - ② 総合管理棟の窓口で直接申し込み
予約の開始時期と注意点
- いつから?: 利用希望月の3ヶ月前の月初め(1日)から予約受付が開始されます。
(例:8月中に泊まりたい場合は、5月1日の朝8:30から受付スタート) - 当日飛び込みは?: 空きがあれば当日でも受け付けてもらえますが、予約者優先のため、事前に一本電話を入れてから向かうのが確実です。
- 支払い方法: 受付時の現金による前精算のみ。クレジットカードや電子決済は利用できないので、あらかじめ現金を準備しておきましょう。
秋吉台家族旅行村 一般区画キャンプサイトの様子と特徴
秋吉台家族旅行村の「区画一般キャンプ場」は、ただの林間、芝サイトではありません。
カルスト地形特有の「ドリーネ(すり鉢状の窪地)」を囲むようにレイアウトされているという、唯一無二のロケーションが魅力です。
まずは全体の基本スペックと、サイトごとの特徴をレポートします。
区画一般キャンプ場の主な特徴


- サイト構成: 区画サイト(全10サイト)
- サイトの広さ: 約7×7m(ソロには十分すぎる広さ)
- 地面: 綺麗な芝(ペグの効きは良好)
- 専用設備: 専用の釜土が2基ずつ完備
- サイト予約: サイトの事前指定は不可(当日の先着順)
💡 車両の乗り入れ・搬入について
車やバイクの乗り入れ(横付け)は不可ですが、炊事棟の前まで車両を寄せて荷物の搬出入を行うことは可能です。そこから各サイトへ運ぶ形になります。



【重要】番号で全く違う!ドリーネを囲む3つのロケーション
全10サイトは、すり鉢状になったドリーネのどこに位置するかで、景観や搬入の難易度がガラリと変わります。
当日の先着順で決まる運命の分かれ道を解説します。
No.1 〜 No.5:林間とドリーネの中心を望むサイト

林をバックに、ドリーネの中心を見下ろすようなロケーションです。

「石灰岩に囲まれる」というよりは、カルスト特有のダイナミックな窪地地形(ドリーネ)を間近に感じられる特別な特等席です。
サイト周辺には木彫りのオブジェなどが並び、ほのぼのとした雰囲気が漂います。

炊事棟、トイレまでのアクセスがフラットに移動できるので利便性があります。


No.1が車道から一番近い位置にあります。炊事棟に近い順番にNo.1~3番が横並びにあります。

角を曲がってNo.4、No.5が一番奥に配置されています。No.4、No.5はシャワー棟へのアクセスが近いです。

No.6 ・ No.7:「これぞ秋吉台」を肌で感じる主役サイト

ドリーネの中心に最も近いエリアです。


周りを白い石灰岩にぐるりと囲まれており、「これぞ秋吉台の懐で眠っている」というロマンを100%味わえる最強のロケーション。

ただし、ドリーネの中心に近い(=すり鉢の底に近い)ため、搬出入時に「斜面の勾配」を往復する必要があり、体力を削られます。
No.8 〜 No.10:隠れ家感抜群の高台プライベートサイト

ドリーネの縁にあたる、一段高い高台に位置するエリアです。


車道側ですが、荷物を運ぶ際の勾配がキツいため、搬出入にはなかなかの苦労を伴います。
しかしその分、他のサイトからの視線が届きにくく、プライベート感と隠れ家感は全サイトの中で圧倒的優位性があります。
他サイトと比較すると木陰もあり過ごしやすいロケーションです。
静かにソロキャンプに没頭したい人には堪らないサイトです。


秋吉台家族旅行村 施設の様子

秋吉台家族旅行村の区画一般キャンプ場周辺は、必要な設備が配置されています。
キャンプエリア内には炊事場、トイレがあり、さらにサイトNo.5の横から山道を登った高台にサニタリー棟が位置しています。
また、エリア外に、受付を行う総合管理棟と、コインランドリー棟などがあります。

秋吉台家族旅行村 総合管理棟での受付とシステム

キャンプ場に到着したら、まずは受付のために「総合管理棟」へと向かいます。
バイクを「大駐車場」に停めたら、そこから先は車両進入禁止の道路になるため、管理棟へは徒歩でアプローチします。

その道すがら、トトロ風のオブジェが来場者を出迎えてくれます。
受付の手順とリアルなチェックイン時間
公式のチェックイン時間は14:00〜となっていますが、当日の状況によっては13:45頃から受付を開始してもらえる場合があります。
受付の手順は、窓口で予約氏名を伝え、必要事項を書類に記入して利用料金を支払います(※現金精算のみ)。
サイトの決定は基本的には先方からの案内になりますが、この時点で空きがあれば「希望のサイト番号」を申し伝えることも可能です。
受付が完了すると、自分のサイト番号が記された「木札」が渡されます。

売店・レンタルと薪の販売情報

この管理棟は受付業務だけでなく、売店や各種レンタル業務も兼ねています。
キャンプに必要な消耗品が一通り揃っているほか、BBQ用の炭や、焚き火用の薪も販売されています。
薪は種類によって400円〜600円となっており、良心的な価格設定なので、事前に用意せずともここで現地調達するのがおすすめです。


【注意】管理棟の閉館時間と夜間の設備
管理棟内には非常に綺麗なトイレやシャワー室が完備されています。ただし、管理棟自体の開館時間が8:30〜17:30のため、17:30を過ぎると閉館して館内の設備は一切使えなくなってしまいます。
夕方以降にシャワーやトイレを利用したい場合は、管理棟まで戻らず、キャンプエリア内に常設されている24時間利用可能な設備を利用しましょう。


申請必須!秋芳洞&トロン温泉の割引券
受付時にぜひ忘れないでおきたいのが、周辺観光スポットの割引特典です。
窓口で申請すると、「秋芳洞」や「景清洞トロン温泉」の割引券を貰うことができます。
これらは自動的に配られるわけではなく「申請制(自己申告)」になっているため、観光予定のある方は受付のタイミングで確実に「割引券をください」と申し伝えて、先に入手しておくのがスマートです。

秋吉台家族旅行村 炊事棟

キャンプエリアの入り口、ちょうどバイクの一時荷下ろし場の目の前にあるのが「炊事棟」です。
三角形の大きな屋根が特徴的な、ログハウス風の建物になっています。
中に入ると、水道とシンクが向かい合わせに配置されており、中央には広々とした調理台も完備。
炊事棟内には各種ゴミ捨て場と、灰捨て用の缶が設置されています。
炊事棟には照明がついていますが、夜間は「利用者が自分でスイッチを入れて電気をつける」システムになっています。
周囲のキャンパーの睡眠を妨げないためにも、使い終わった後は必ず電気を消し、つけっぱなしにしないようマナーを守って利用しましょう。
秋吉台家族旅行村 トイレ

秋吉台家族旅行村の一般サイト周辺には、2箇所のトイレ設備があります。
場所によって便座のタイプ(洋式・和式)や併設設備がガラリと変わるため、事前に把握しておくと安心です。
① 車道側のメイントイレ(水洗洋式)

キャンプサイトから車道側(入り口・炊事棟方面)へ進むと、すぐに見えてくるのがメインのトイレ棟です。
建物の横に白い石灰岩がダイナミックに積み上げられた、カルストの地ならではの独特な外観が目を引きます。
- 便座タイプ: 水洗の洋式便座が完備されています。
- 洗面スペース: 手洗い場は自動水栓(センサー式)になっており、大きな鏡やモノをちょっと置けるスペースが確保されています。朝の身支度はもちろん、キャンプ中のコンタクトレンズの脱着やお手入れにも非常に便利で助かる仕様です。


② No.5サイトの奥:山の上にあるサニタリー棟

もう一箇所、サイトの奥にあるNo.5サイトの脇から、山道を少し登った先にもトイレがあります。


- 便座タイプ: こちらは水洗の和式便座のみとなっています。どうしても洋式が良い、という方は先ほどの車道側のトイレまで戻るのがおすすめです。
- 併設シャワー室:こちらには24時間利用可能なシャワー室が併設されています。

秋吉台家族旅行村 シャワー室
シャワー室は、「山の上のサニタリー棟」と「総合管理棟内」の2箇所にあります。
- 料金: 100円 / 5分間
- 仕様: 水と熱湯の2つの蛇口を自分でひねって湯温を調整するタイプです。
場所による利用時間の違いに注意
スケジュールに合わせて、以下の2箇所を上手に使い分けましょう。
- 総合管理棟内: 利用時間は8:30〜17:30まで。設備は非常に綺麗ですが、夕方以降は閉館するため使えなくなります。
- 山の上のサニタリー棟: 24時間利用可能。管理棟が閉まった夜間や、撤収前の早朝に入浴したい場合はこちらを利用します。
秋吉台家族旅行村 灰捨て

キャンプで出た灰は、炊事棟内に設置されている持ち手付きの一斗缶に処分できます。
あわせて、各サイトの備え付けかまどを掃除するための清掃用具も用意されており、自分のサイトまで持ち運んで使用可能です。
片付けに必要な道具が現地に揃っているため、かまど利用のハードルが低く、手軽に活用できる仕様になっています。

秋吉台家族旅行村 ゴミはどうする
炊事棟内に各種分別廃棄できるゴミ箱が設置されています。

秋吉台家族旅行村 コインランドリー

大駐車場から車両進入禁止の道路を進み、総合管理棟を越えてしばらく歩いた先に、コインランドリー専用の小屋があります。

料金

- 洗濯機: 1回 200円
- 乾燥機: 100円 / 30分
利用時の注意点
- 防犯と忘れ物対策 キャンプサイトから距離があるため、洗濯へ向かう際はテントのセキュリティ(貴重品の管理)をしっかり行いましょう。また、往復の負担を減らすためにも、小銭や洗剤などの忘れ物には注意が必要です。
- コンセントの確認 洗濯機のコンセントが抜けた状態のまま硬貨を投入すると、お金が戻らず飲み込まれてしまうトラブルが発生します。利用前に必ず通電しているか確認が必要です。
- 両替と利用時間 建物内に両替機はありません。万が一、硬貨の吸い込みなどのトラブルが起きた場合、管理棟が閉館(17:30)すると対応が受けられなくなります。そのため、管理棟にスタッフがいる17:30までに、両替え、洗剤の入手、そして洗濯を終わらせておくことをおすすめします。
秋吉台家族旅行村 その他施設
秋吉台家族旅行村の敷地内には、区画一般キャンプ場以外にも様々な宿泊スタイルが用意されているほか、便利な施設が点在しています。
充実の宿泊プラン(オートキャンプ・ケビン・ログハウス)

- オートキャンプエリア: 車やバイクの横付けができるオートキャンプサイトは、敷地のゲートを一歩外(場外)に出た別エリアに広く展開しています。
- ケビン・ログハウス: 区画一般キャンプ場の周辺エリアには、テントを持たない方や悪天候時でも快適に過ごせる宿泊施設が完備されています。
敷地内の主なアクティビティ・設備

- ファイヤーサークル: 区画一般キャンプ場の中心(ドリーネの底)に設置されています。
- アスレチック場: 総合管理棟の横にあります。秋吉台らしい石灰岩の庭園のような景観を活かしたユニークなロケーションです。
- バーベキュー場・バーベキューハウス: コインランドリー小屋の付近に整備されています。
- テニスコート: サイト奥(No.5側)の山の上にあるサニタリー棟から、さらに上に登った場所にあります。
- 他、体育館、農園、多目的館、等々




場内の食事スポット

- ログハウス食堂(大駐車場内): キャンプ場の入り口となる大駐車場には食事処が併設されています。滞在中、手軽に現地の食事を済ませるのに便利です。
秋吉台家族旅行村 体験レポ|まるで日本のサンクチュアリ?石羊の草原を見、地球のくぼみに眠る。カルスト三昧キャンプ

中国地方一周のソロキャンプツーリング。
山口県内では2カ所のキャンプ場に設営する予定だった。
しかし、全体の全行程のスケジュールを見つめ直すと、最短ルートで中国地方を巡らねばならないという現実が浮き彫りになる。
山口の西端は、どこをゴールにするか?
大好きな角島の景色が頭をよぎる。だが、そこまで行ってしまうと完全に本州最西端の果てまで回り込むことになり、スケジュールが破綻してしまう。
どこか、ルートをショートカットしつつ、最高に旅情を満たしてくれる場所はないか…。
その時、脳裏に一つの景色が鮮烈に蘇った。
そうだ、「秋吉台」があった!
かつて訪れたあの場所。見渡す限りの大草原に白い岩が群れを成すように芝生に広がる景観は、
なぜか私の心に深く刻まれていた。
そう、まるで『聖闘士星矢』の「聖域(サンクチュアリ)」のシーンを思わせる、異世界の圧倒的な風景。(←もはやこんな表現をするのは私だけだろうか…。)
せっかく山口に行くのなら、あのカルストの絶景の中でテントを張れる場所はないだろうか。
さっそくGoogleマップを開いて検索を開始し、一つのキャンプ場に目が留まった。
「秋吉台家族旅行村」
秋吉台のすぐ近く。しかも驚いたことに、利用料金はわずか1,000円?
ここだ、と直感が告げた。すぐにスマホを手に取り、現地の管理棟へ電話を入れる。
「あのー、そちらのキャンプ場からカルストって(※自分の中ではあの白い石灰岩の絶景のこと)見られますか?」
「ああ、場内はカルストだらけですよ!なかでも場内に『ドリーネ』もありまして…」
「ドリーネ?ってなんですか?」
「…えーと、カルストのくぼ地のようなものでして」
電話を切ったあと、正直「ドリーネ」という専門用語はよく分からずスルーしたが、スタッフさんが放った「場内カルストだらけですよ」というパワーワードが、私のツーリングキャンパーとしての心に深く突き刺さった。
無料野営地での3連泊を終え、心身ともにリカバリーを欲しているタイミング。
愛車(Vストローム250)のスロットルを開く。名付けてVスロットル全開だ。
山口の県境を越えて、石羊が群れなすあの「聖域」へと向かうのであった。
※道中の~キャンプ場までのツーリングの様子を共に辿りたい方は、このまま下へ読み進めてください。
※キャンプ場の詳細・滞在の様子をすぐに見たい方は以下のリンクから、ジャンプできます。
👉【滞在編】これぞカルストキャンプ?地球の凹み、ドリーネの淵でリカバリーの一日
【道中編】小宇宙を燃やせ!県境を越え石羊の草原が広がる聖域(サンクチュアリ)秋吉台へ

県境のじれったい川、メットのなかでカラオケ状態?いざ山口へ!

前泊した「三倉岳キャンプ場」は、まさに広島と山口の県境に位置する場所にあった。
キャンプ場を後にし、相棒のVストローム250を国道186号へと接続させる。

この国道の横を流れる小瀬川のすぐ向こう側は、もう目指す山口県なのだ。
川一本挟んだ向こう側に、目的の地が見えている。
これさえ超えれば山口県突入なのだが、国道は川に沿ってひたすら平行に走るばかりで、なかなか橋を渡らせてくれない。

すぐそこなのに、渡れない。 じれったいなぁ、もぉ。
じれったい 隣の川が〜♪ うざったい ほどー阻むよー♪
気づけばヘルメットの中で、名曲のメロディに乗せて自作の替え歌が響いていた。
…うむ、今日は調子が良い。
もどかしい川の並走で越境を阻まれ続けるが、ようやくルートが分岐を迎え待望の橋が現れた。
スロットルを軽く捻り、小瀬川を渡る。 ついに、山口県突入。
Vスロットルのボルテージが一段階上がった。

山口県ガードレール色の謎

山口県に足を踏み入れて走っていると、いつも心に浮かぶお馴染みの疑問がある。
なんで山口のガードレールは、全部黄色なんだろう…?
自分の記憶では他の都道府県ではまず見かけない、鮮やかな黄色のガードレール。
あぁ、山口にきたなぁ…と実感させられるこの景色を横目に長い坂道を下っていく。
そんな黄色い境界線がなくなり、坂道を下りきろうとした、その瞬間。
視界が一気にひらけ、眼下に岩国の街並みが大パノラマとなって飛び込んできた。
気分がぶちあがるほどの開放感。

さて、まずはおなじみ、あれを食べますか…。
私の燃料は100円でできている
岩国の美しいパノラマを駆け抜け、次なるミッションへと向かう。
昼飯と、夜に備えた食材確保だ。
走っていると、視界に鮮やかなピンクの建物が飛び込んできた。
おっ、でたな? と一瞬ハンドルを切りそうになったが、看板を見てブレーキを踏みとどまる。
いや違う、これはコスモスだ。

西日本を走っていると本当によく出会うが、私のお目当ては違うピンクのほう。
そこから少しバイクを走らせ、今度こそお目当ての地に到着した。
中国旅の補給地、またまたまたまたお世話になります。

バイクを止め、まずは店舗の脇へと視線を走らせる。
よし。今日も元気にパクパクやってるね。
PAKU-PAKUの営業を横目で確認し、ニヤリとしながら店内へ突入。
今回は少し趣向を変えて、メイン食材を「和」のテイストへシフトしてカゴへ放り込む。

無事に今夜のディナーを確保した後は、お待ちかねの儀式の時間だ。
100円玉を握りしめ、焼き立てのたこ焼きを手に入れる。


駐輪場に戻り、バイクの雄姿を眺めながら、大粒のたこ焼きをハフハフと頬張る。

この中国一周旅、私の燃料は、間違いなくこの100円たこ焼きで形成されている。
昼飯のたこ焼きを胃袋に収め、お腹も心もエネルギー満タン。
シートの上で一呼吸置き、グローブをはめ直す。
よし…、では、本日の本丸へ向かいますか!
秋吉台のカルストロードへ向けて、Vスロットルを大きく開け放った。
ラ・ムー周南久米店

国道2号を回避、内陸のルートからカルストの核心部へ

ルートを再確認する。
混雑しそうな国道2号の海岸線ルートはあえて避け、内陸の国道489号から376号へと舵を切った。

緑深い山あいを抜け、山口市を越えたあたりで、ついに案内標識にその文字が現れる。

いよいよだ。胸の鼓動が一段と高鳴る。
ナビに頼るまでもなく、かつて訪れた記憶の糸を手繰り寄せながら、見覚えのある無料駐車場へとバイクを滑り込ませた。
秋吉台 駐車場(無料)

ヘルメットを脱ぎ、ここからは徒歩で向かう。
少し息を切らせながら坂道を歩いていくと、徐々に視界の先に見覚えのある展望台が姿を現した。

まだだ、まだ見るな、もう少し。…よし、いいぞ!
視界を遮るものが消え去り、眼下へと目を向けた瞬間、私の全細胞が沸き立った。
うわぁぁ…。

そこにあったのは、見渡す限りの広大な緑の大地に、無数の白い石灰岩が立ち並ぶ圧巻の景色。
これこそが、秋吉台の「羊群原(ようぐんばら)」。
言い得て妙とはまさにこのこと。まるで何千、何万頭もの白い羊の群れが、緑の大草原に解き放たれているかのような神秘的な光景がどこまでも広がっている。
この異次元の絶景をじっと見つめていると、五感を越えた先にある第七感、「セブンセンシズ」に目覚めるような、不思議な全能感が全身を駆け巡っていく。
…むぅ。(羊群原だけに。)
さあ、絶景を堪能した後は、いよいよ本日のキャンプ場へ。
この素晴らしいカルストの大地に、本当に1,000円で泊まれるキャンプ場なんてあるのだろうか?
期待を胸に、秋吉台家族旅行村へと向かった。
秋吉台カルスト展望台

【滞在編】これぞカルストキャンプ?地球の凹み、ドリーネの淵でリカバリーの一日

木洩れ日の専用道路と、謎のオブジェがお出迎え
先ほど通ってきた秋吉台とは反対の方向へとバイクを進めた。

ナビの示す道は、おそらくこの「秋吉台家族旅行村」のためだけに作られた専用道路なのだろう。

道には優しく木洩れ日が降り注ぐ。木々の間を気持ちよく駆け抜けていく。
思ったよりも長く、奥深いアプローチ。 ようやく現れたゲート口を抜けると、目の前にどーんと広い敷地と建物が現れ、とてつもなく広大な駐車場へと誘われた。

管理棟があるエリアは車両進入禁止になっているようなので、バイクを止めて徒歩で向かう。 歩き出してすぐ、どっしり構えた何か、がいた。
…トトロ、なのか?

じっと見つめていると、なんだか某有名女性お笑いコンビのボリューム満点な髪型にも見えてくるから不思議だ。そんな一人突っ込みを心の中で処理しながら、管理棟の窓口へ向かう。
13:45の壁
管理棟に到着したものの、時計の針はまだ13:00を回ったばかり。
案内を見ると、チェックインの受付は「13:45〜」と書かれている。少し早すぎたようだ。
そこで、事前に予約の電話を入れたときのスタッフさんとの会話を思い出した。
『秋芳洞には行かれますか? もし行かれるなら、チェックイン前に一度管理棟に寄ってください。割引券をお渡しできますから』
てっきり、よくある観光案内所に置いてあるフリーの割引チラシをパッと貰うだけだと思っていたのだが、窓口で尋ねてみると、どうやらちゃんとした「申込手続き」が必要なタイプの割引券らしい。
ついでに、近くの温泉の割引券もしっかりと確保する。

さて、問題はここからの45分間。
スタッフさん曰く、13:45より前にチェックインしてサイトに入りたい場合は、別途、アーリーチェックイン料金が必要になるとのこと。
無料野営3連泊の後だ、1分でも早くテントを設営して人心地つきたい気持ちはある。
だが、そこはキャンプ場マニアの悲しき性(さが)。
「ならば、ちょっと先に場内を見て回っていいですか?」
受付に一言断りを入れ、私はアーリー料金を支払う代わりに、これから丸一日お世話になるカルストだらけの場内ロケハン(下見)へと繰り出すことにした。
チェックイン前に場内散策。現れたのは巨大な「すり鉢?」
受付で簡易な場内MAPをもらい、歩いてキャンプサイトへと向かう。
なぁんだ、さっきバイクで通り過ぎた場所だったのか。

三角形のロッジ風の炊事棟をくぐり、その裏手に回った瞬間、おおう…!と思わず目を見張った。
そこに広がっていたのは、今まで経験したことのない奇妙な地形だった。
サイト全体が、見事なまでに巨大な「すり鉢状」に窪んでいるのだ。
そして、その窪地の淵にあたる面に沿って、各キャンプサイトが配置されている。
ドリーネ…。電話で言っていたのは、これのことだったのか!

頭の中で、管理棟のスタッフさんの言葉と目の前の景色がガチッと繋がった。
秋吉台の地表に空いた地球のくぼみ。そこにキャンプ場があったのだ。
サイトの吟味
どこが設営に足りうる場所か、すり鉢の淵を左回りに歩きながらじっくりと吟味していく。
まず目に飛び込んできたのは「No.1」のサイト。

乗り入れは不可だが、車道から最も近い。しかもそのすぐ横に、まるで狙い澄ましたかのように1つだけ白い石灰岩が地面からニョキッと生えている。 第一候補として胸に留め、さらに歩を進める。
No.1~No.3までが横並び、角から曲がってNo.4とNo.5が配置されている。
MAPによると、No.5サイトの上方にシャワー室があるらしい。
しかし、そこへ向かう道は土の山道、そこそこの勾配。

はぁ、はぁ…、と額の汗を拭い、息を切らしながらようやく行き着いた先は、トイレの中に併設されたシャワー室だった。
チラリと覗いてみたが、これなら管理棟内にあるシャワーと比べても遜色はなさそうだ。
管理棟まで距離もあるし、こちらを利用するのもアリだな、と頭に叩き込む。

もと来た道を下り、今度はNo.1〜3のちょうど真向かい側へと回り込む。
すり鉢のほぼ中央付近、サークル近くに差し掛かった時、私は足を止めた。
おお…! これこそまさに、カルストキャンプ!

白い石灰岩の群れにぐるりと囲まれた、雰囲気抜群のサイトを発見した。
ここにテントを張れば、まさにカルストの真っ只中で眠るような最高の夜になるだろう。
だが、このすり鉢状のキツい勾配。バイクからここに荷物を運び入れるのは、なかなかに難儀しそうなイメージが頭をよぎる。
無料野営3連泊の疲労が残る今の体には、少しハードルが高いかもしれない。

そこからさらに車道のほうへと坂を上ってみると、今度は周りを鬱蒼とした木々に囲まれた、ひっそりとしたサイトが現れた。

ここからはドリーネの全貌は見えないが、周囲の視線から完全に遮られたプライベート感は抜群だ。だが、やはりここも車道からのアクセスを考えると、荷物の搬入路がしんどそうな印象が拭えなかった。

脳内シミュレーション完了、いざ受付へ
ぐるりと場内を一周し、それぞれのサイトの長所と短所が頭に入った。 どのサイトがよさそうか、だいたいの検討はついた。
あとはどのような指示となるか。
時計を見ると、ちょうど受付が始まる13:45。アーリー料金を浮かせるための下見だったが、これ以上ない完璧な時間調整になった。
再び、トトロっぽいのオブジェを横目に、今度こそ正式なチェックインをするために管理棟へと足早に急いだ。

観光か洗濯か?リカバリーに全振りを決めたキャンプ滞在
13:45、ジャストの時刻に管理棟へ滑り込む。
受付を済ませ、割り振られたサイトはNo.1。心の中で小さくガッツポーズを作った。
手続きのついでに、スタッフさんに「今日って、他にもキャンパーさん来ますか?」と尋ねてみた。
すると「お客様の他に、あと1組いらっしゃいますよ」との返事。
よかった…。
無料野営地での3連続完ソロを経験してきたばかりだった。
さすがに静寂と孤独な環境に少し疲弊していたので、同じ夜を過ごす同志がどこかにいるというだけで、妙にホッとする。
そんな安堵感に包まれていた私に、スタッフさんが何気なく問いかけてきた。
「明日は何時ごろ出立されます?」 「え? ああ、朝は早いと思いますけど…何かあるんですか?」
「ここのゲート、夜は17:30から翌朝8:00まで閉門になっちゃうんですよ」

ちょ待って。いま、何て…?
時計を見る。すでに14時前。閉門まであと3時間半しかない。
頭の中で、今回のキャンプの最重要ミッションがアラートを鳴らした。
そう、溜まりに溜まった衣服の洗濯である。
今日こそやらねばならないのだ。
今から搬入して、テントを設営して、それから秋芳洞の観光へ行って、温泉に入って…、
なんてやっていたら、どう考えても17:30までに戻ってくることなんて不可能だ。
サイトへと向かう道すがら、予定した行動タスクから必須要項を思案する。
観光をとるか、それとも――。(長考)
…よし、決めた。『洗濯』を選択。
腹をくくると、もやもやした霧が、フッと晴れていくのを感じた。
今日はもう、どこにも行かない。ここでどっぷりリカバリーキャンプを勤しもう。
直射日光の設営と、地雷を踏んだシャワー室
下見で一番搬入が楽だと判断した1番サイト。
しかし、いざ搬入を始めると、積んできた重装備が恨めしく思えてくる。
空からは、容赦のない直射日光がじりじりと容赦なく身体を焼き付けていく。
…でもまぁ、昨日のキャンプ場(三倉岳)の過酷さに比べればマシか。
そう自分に言い聞かせ、無心でペグを地面に打ち込んだ。

ようやく設営が完成。インナーテントの中に潜り込み、大の字になってドサッと寝転ぶ。
生き返る。 さあ、ここからどうする。まずは何よりも、このベタつく汗を流しにいくか。
タオルを首に巻いて、先ほど息を切らしながら登った、あの山の上のシャワー室へと向かう。

ここの料金システムは100円で5分。
キャンプ場のコインシャワーとしてはかなり優秀な部類だ。
数々の修羅場をくぐり抜けてきた私にとって、5分という時間はたやすいこと。
すでに3分設定のシャワーでも、残り30秒は時間を持て余すほどにシャワースキルは成熟しているのだ。

見ると、水道は冷水と温水の2つの蛇口があるタイプ。コインを投入する前でも水は出る仕様らしい。 100円玉を右手にしっかりと握りしめ、いざ、5分間のタイムアタックがスタート。

まずは温水の蛇口をひねる。が、なかなか温かくならない。
はて?と首を傾げた次の瞬間、前触れもなくいきなり超高温の熱湯が噴き出してきた。
あぢぢぢぢ!!
ヘタをすれば火傷するレベルの熱さに跳ね上がり、急いで冷水の蛇口を混入させて調整を試みる。
しかし、これがどうにも丁度いい湯温になってくれない。

しかも性質が悪いことに、シャワーのノズルがあべこべに噴き出す始末で、お湯が狙ったところを捉えないのだった。
湯温とノズルに翻弄され、グダグダになり、結果危うく5分間一本勝負に負けるところだった。
『一番手前にあるシャワーはやめたほうがよい。』と、ここに記しておこう。

洗濯にはじまり洗濯に終わる
残る本日の重要タスクは「洗濯」のみ。
コインランドリーは管理棟のはるか遠くにあるらしい。
財布から100円玉を何枚か用意し、重い洗濯物を抱えて、とことこ、とことこと歩き出す。
管理棟の裏手へと差し掛かった時、足を止めた。
そこにあったのは、石灰石を贅沢に取り込んだ、まるで庭園のような見事なアスレチック場。
地球の奇跡であるカルスト地形を、そのまま贅沢に遊び場にしてしまうスケールの大きさに圧倒される。

そんな景色を横目に歩き続け、ようやく目的のコインランドリー小屋に到着した。
フゥと息を吐き、洗濯槽へ衣服を放り込んだ、その刹那。なにか重要な忘れ物に気づき、戦慄した。
…あ、洗剤忘れた。
嘘だろ。またあの長い道のりを、自分のサイトまで戻らなきゃならないのか…。
自分のあまりの不甲斐なさに肩を落とし、とぼとぼとサイトへ引き返す。

サイトに戻ると、他のキャンパーさんが1組設営しているところだった。
完ソロじゃなくてよかった、という小さな喜びが、少しだけ心を救ってくれる。

洗剤の小袋を手に取り、呪わしきあの道を再びコインランドリー小屋へと向かう。
今度こそ準備は整った。いざ、100円硬貨を2枚投入する。
―ことことっ。
鈍い音が響いたきり、機械がピクリとも動かない。コインは戻ってこない仕様。
まさかこれ、…飲みこまれてる??
頭の中が真っ白になった。またしても、あの長い道を今度は管理棟へと、とぼとぼ引き返す羽目になった。
窓口で「あの、硬貨が飲まれてしまったのですが…」と事情を話すと、スタッフさんが後ろから車で小屋まで来てくれた。機械の裏側をチェックしてもらうと、コンセントが刺さっていなかったことが原因だった。

まさかの主電源オフ。
スタッフさんがコンセントを差し込み、一応硬貨を入れて正常に動き出すのを確認してくれた。
「お手数をおかけしました…」
ただ洗濯機を回す。それだけのことに振り回された。

洗濯が終わるまでの待ち時間、小屋の中には一応ベンチもあったのだが、手持ち無沙汰がすぎる。
そこで、すぐ目の前にある東屋へと移動して待つことにした。
受付前の自販機で手に入れたキンキンに冷えた炭酸水を、一気に喉へ流し込む。
ぷはっ、と生き返る。
周りを見渡すと、そこは誰もいないバーベキュー場。仄かに金木犀のにおいが鼻をかすめる。
全然秋らしくないけど、秋なんだ、ろうなぁ。

「トラブルのせいで足止めを食らった」のではなく、「ここでゆっくりした時間を過ごすためのロケーションを与えられた」のだと思えば、悪くない。と聖人のように思うことにする。

洗濯が終わる頃合いを見計らって小屋へ戻り、今度は濡れた洗濯物を乾燥機へと移す。
硬貨を投入する。その瞬間、再び脳裏に嫌な予感がよぎった。
ことっ。…。
――案の定、またしても飲まれた。
デジャブのような展開に、今度はスマホを取り出して管理棟へ連絡。
スタッフさんに再度対処してもらうという波乱万丈のランドリータイムとなった。

すべての乾燥が終わる頃には、あたりはすっかり真っ暗になっていた。

サイトへ戻ると、もう1組加わったテントがポツンと明かりを灯していた。遅い時間の飛び込みだろうか。
これで、今夜このドリーネ仲間は、私を含めて全部で3組。
無料野営地で3連続完ソロを経験し、孤独な夜の闇に怯えていたこの旅において、周囲に静かに佇む他人のテントの明かりが、どれほど愛おしく、どれほど心強いか。
あぁ…、今夜は久しぶりに心霊や獣の陰に怯えず、平和な夜を過ごすことができそうだ…。
300円でおつりがくる満腹ディナー
トラブル続きで歩き回り、すっかりお腹もペコペコだ。さあ、お待ちかねのディナータイムにしよう。
今夜の戦利品は、以下の精鋭たちである。

- さぬきうどん(2玉):34円(1玉17円)
- うどんつゆ:39円
- 竹の子煮の磯辺天ぷら:82円
- 舞茸たっぷり炊き込みご飯:107円
うどん2玉に天ぷら付き、旬の炊き込みご飯までつけて、なんと総額200円台(※262円+税)。
この驚異的なまでのコストパフォーマンスが、中国一周を支えるラ・ムーの偉大さだ。
さっそく、キャンプでお馴染みの相棒、ラウンドグリルパンをバーナーにセットする。

まずは、竹の子煮の磯辺天ぷらを乗せ、香ばしくじっくりと焼き上げていく。
衣がカリカリの状態になったら、一度天ぷらが入っていたトレイへ戻す。
続いて、そのグリルパンへそのままうどんを2玉一気に投入。
水を少量ふりかけて焼く。

ここで、さきほど先に炙った天ぷらの油が効いてくる。
グリルパンの表面に油が馴染んでいるおかげで、麺がこびりつくのを防いでくれる。
つゆをそのままシェラカップに注げば、『焼きうどんのつけ麺、天ぷら添え』の出来上がりだ。

まずは、焼き直してサクサク感が戻ったタケノコの天ぷらをひと口。 うん、旨い。
タケノコの食感と磯辺の風味がよい。
続いて、つゆに浸した天ぷらとともに、うどんを合わせて口に入れる。うん、旨い。
うどんと交互に舞茸の炊き込みご飯にも箸を伸ばす。炭水化物と炭水化物のボリューム。
お腹いっぱい、大満足。
片付けを終えて一息つくと、なんだか急に肌寒さを感じた。 テントの脇においた温度計に目をやると、表示は21.7℃まで下がっている。
日中の直射日光が嘘のようだ。
金木犀の香りを嗅いだからだろうか。
急に今日から、この場所に一気に秋がやってきたみたいに感じられた。
気温16.4℃の衝撃。朝の開門と、旅立ちの前
朝、6:30。 うっすらと明るくなった空気の中、テントのジッパーをゆっくりと引き上げる。
外に一歩踏み出した瞬間、思わず身体をすぼめた。
ううっ、寒い…。

急いで温度計を確認すると、表示はなんと16.4℃。
昨日の最高気温が34.7℃だったから、その落差は実に18℃近い。
思えば設営時は、西日がさんさんとサイトを照らして汗だくだった。地球のくぼみ「ドリーネ」の底は、ひとたび日が当たらなくなると、こうも劇的に冷えるものなのか。

凍える身体を温めるため、まずはバーナーでお湯を沸かして温かいコーヒーを淹れる。
そして、おなじみのカレーパンを胃袋に流し込んだ。

でもまぁ、撤収するにはこれくらいが一番いい気温かもな。
涼しい気候のおかげで、撤収作業はスムーズに進んだ。

ふとゲートのほうへ目をやると、スタッフさんがチェーンをガチャガチャと音を立てて開錠している様子が見えた。夜間の閉鎖が解かれる、朝8時の合図だ。

バイクを炊事棟へと移動させ、荷物をすべて積み込んだ。
するとそこには、すでに昇った太陽が待ち構えており、周囲の空気をじわじわと熱し始めていた。

あぶなっ! もたもたしてたら、撤収中、またあの猛暑に焼かれるところだった…。
ギリギリ直射日光を回避できたことに胸をなでおろし、チェックアウトのためにプレートを持って管理棟へと向かった。

リカバリー全快 次なる目的地へ
窓口で、ひとつ気になっていたオートサイトについてスタッフさんに尋ねてみると、
「ぜひ見ていってください!」と快くMAPを渡してくれた。
話を聞くと、今いるエリアのゲートを出て、結構離れた場所にあるらしい。
チェックアウトを済ませ、バイクに跨がりその地を訪ねてみることにした。

ゲートを出てしばらく走った先に現れたオートサイトは、広々とした区画に遮るもののない抜け感のあるロケーションが広がっていた。


うん、さすが。こちらも良いね。
広大なロケーションの素晴らしさを肌で感じつつも、私の心は満ち足りていた。
ファミリーやグループなら間違いなく最高の場所だが、ソロである今の自分には、昨夜あの地球のくぼみの淵で、3組のキャンパーの気配に守られながら静かに過ごした一般区画のほうが、不思議としっくり馴染んでいた。
何より、一番の目的だった「洗濯」も、無事にできたわけだし。
トラブル続きだったランドリー小屋の思い出を苦笑いで振り返りながら、私はヘルメットのシールドを下ろした。
よし、いいリカバリーができた。
次なる目的地を求め、再びカルストロードへとバイクを駆ける。
闇に怯えた無料野営3連泊の疲れは、このドリーネの底で見事にリセットされた。

【まとめ】秋吉台家族旅行村の良かった点、気になった点、及び周辺観光の注意点

秋吉台家族旅行。実際に泊まってみて感じた、このキャンプ場の「良かったところ」「気になったところ」、そしてここを拠点に周辺観光を楽しむための注意点をまとめます。
👍 よかったところと💦 気になったところ
何と言っても、サイト全体が巨大なすり鉢状になっている独特の地形でキャンプ体験ができること。
日本広しといえど、これほどこれほど地球の神秘(ドリーネ)を感じながらテントを張れる場所はそうありません。
まさに秋吉台家族旅行村だからこそ味わえる、唯一無二のロケーションです。
中国地方を広く旅する人や連泊者にとって、ここは最高のベースキャンプになりえます。
サイト使用料がわずか1,000円という安さでありながら、敷地内にシャワーとコインランドリーを良心的な価格で提供。
出費を抑えつつ旅のコンディションを整える、ロングツアラーの心強い味方です。
ロケーションもコスパも最強なだけに、シャワーやコインランドリーといった主要な付帯施設のメンテナンス不足が唯一残念でした。
シャワーはノズルの方向が定まらず、コインランドリーに至っては、主電源のコンセントが抜けていただけでなく、問題がなかったはずの乾燥機までもが硬貨を飲み込んでしまうなど、利用前の事前保守整備がもう少し行き届いていれば…、というのが正直な感想です。
いずれの施設を利用するにしても、万が一トラブルが起きた際にすぐ対処してもらえるよう、
「管理棟の受付時間内」にすべて済ませておくことをお勧めします。(きちんと対応いただけます。)
ゲートの閉門時間が、ベースキャンプとしての利を左右する!
このキャンプ場を語る上で、絶対にハズせないのが「夜間は17:30〜翌朝8:00まで閉門」というルールです。
夜間にゲートが完全に閉まるというのは、防犯上とても安心できるポイントではあるのですが、その反面、設営後の観光には制限がつくことになります。
通常のチェックイン受付は14:00(または13:45)から。
そこからサイトへ移動して重装備を搬入、設営し終えると、時計はもう14:00を大きく回ってしまいます。17:30の閉門時刻までは、実質たったの3時間半しかありません。
このわずかな時間で、往復の移動と洞窟内の徒歩観光で最低でも2時間はかかる「秋芳洞の観光」をこなし、さらに割引券がもらえる「トロン温泉」まで満喫しようとすると、正直言って時間はカツカツ。
私のように「洗濯」というタスクまで抱えていると、スケジュールは完全に破綻します(笑)。
お得に賢く観光するための対策アドバイス
せっかく管理棟で貰える「秋芳洞や温泉の割引券」を使って、お得に観光したい場合の対策は以下の2つです。
- プランA: 受付時間(13:45〜)の前に一度管理棟へ立ち寄り、先に割引券の申込手続きだけを済ませて観光と温泉へ向かう(※これが一番おすすめ!)。
- プランB: キャンプ当日は割り切って場内でリカバリーに徹し、翌日(朝8時の開門後)にゆっくりと観光へ繰り出す。
おわりに
このキャンプ場を訪れ、他では味わえない稀有なロケーションに身を置くことで、本当に貴重なキャンプ体験を得ることができました。
地球のくぼみの底で眠る夜は、まさに「カルストキャンプ」と呼ぶにふさわしい特別な環境です。
無料野営地が続いていた道中とは違い、ここでは獣の影に怯えることもなく心から安眠することができました。
またこの中国地方一周キャンプツーリングを続けていく上でも、ここは私にとって極めて重要なリカバリー地点となったのは間違いありません。
さて、長い旅路もここからは後半戦、いよいよ折り返しです。
ここ秋吉台を後にし、次なる目的地として、山口県内にあるもう一箇所のキャンプ場を巡ります。
そこでは一体、どんな景色とハプニング?が待っているのか。
つづく








