前日は岡山との県境、広島県福山市の「山野峡キャンプ場」で一夜を過ごしました。
そこから一転、今度は山口との県境を目指し、広島県を東西に貫くロングランを敢行します。
中国一周キャンプツーリングも、いよいよ第三夜。
目的地に定めたのは、広島県大竹市に位置する「三倉岳キャンプ場」です。
かつて別のキャンプ場で出会った広島のキャンパーさんから、その存在を耳にしていました。
「私的には、大好きなキャンプ場です」
そんな断片的な情報を頼りに、酷道に直面し、疲弊しながら辿り着いたその先で私を待っていたのは…。
無料キャンプ場で奇しくも三夜連続となった「完ソロ」。
天を衝く三本槍の岩峰の下、闇と孤独を独り占めした、あの夜のリアルな体験をレポートします。
三倉岳キャンプ場の魅力とは
- 「三倉岳」の眺望
- 本格的な無料野営地
「三倉岳」の眺望

見上げれば、朝日岳・中岳・夕陽岳からなる「三本槍」の荒々しい岩峰が天を突き、
その圧倒的な姿は訪れる者を一瞬で非日常へと引き込みます。
ここはキャンプ場のすぐ脇から山頂へ続く道が伸びる、正真正銘の『登山口』。
テントを設営し、そのまま身軽に頂を目指す。

そんな贅沢な「ベースキャンプ」としての活用もできる、山岳愛好家にはうってつけのロケーションです。
本格的な無料野営地

昨今の高規格なキャンプ場とは一線を画す、硬派な無料キャンプ場。
しかも予約不要という手軽さは、ツーリング中に予定が変わりやすいライダーにとって大きなメリット。
無料とはいえ、炊事棟やトイレといった必要最低限の設備は整っており、まさに『昔ながらの野営場』という言葉がしっくりくる佇まいです。
己のスキルで一夜を構築する「キャンプの原点」がここにはあります。
腕を試したいキャンパーたちにはもってこいのフィールドです。

三倉岳キャンプ場 基本データ

| 訪問年月 | 2025/10 | 曇りのち雨/晴 |
| 名称 | 三倉岳キャンプ場 | 大竹市H.P |
| 場所 | 〒739-0645 広島県大竹市栗谷町 | 0827-56-0660 (三倉岳休憩所) |
| 業態 | 市営 | 大竹市産業振興課 |
| ロケーション | 林間、山間 | 三倉岳県立自然公園内 |
| サイト | 区画サイト | 土 硬 □□■□□ 柔 |
| サイト規模 | 大規模 | 2エリア |
| 車両乗り入れ | 不可 | ログハウスのある広場、 または場外の駐車場 |
| 営業期間 | 通年 | 管理棟水曜定休 |
| 予約方法 | 不要 | |
| in / out | 9:00~17:00 | ※進入口閉鎖 |
| 料金(利用プラン) | 無料 | |
| (内訳) | 使用料 | 0円 |
| 駐車料金 | なし | |
| 設備 | 管理棟:あり | |
| (売店:あり) | ※閉館だったため未確認 | |
| (レンタル:不明) | ※閉館だったため未確認 | |
| トイレ:あり | 水洗、洋式/和式 | |
| 風呂:なし/シャワー:なし | ||
| 炊事棟:あり | ||
| 灰捨て場:あり | ||
| ゴミ捨て場:なし | ||
| その他施設 | ファイヤーサークル、登山道 | |
| 直火の可否 | 不可 | 要 焚火台&焚き火シート |
| 薪の販売 | 不明 | ※閉館だったため未確認 |
| 薪の現地調達状況 | 難 □□□☑□ 易 | |
| 電波状況 | 弱い | 楽天モバイル |
| 客層(主観) | 利用時完ソロ | ソロ □□☑□□ ファミリー |
| 獣・虫 | クマ、スズメバチ | 警告看板あり |
| 場内路面状況 | 舗装路 | 急勾配 |
| 買い出し | スーパーマーケット | スーパーセンタートライアル大竹店 約20.6km |
| コンビニ | ローソン 玖珂美和坂上店 約16.5km | |
| 温泉 | 元湯 小瀬川温泉 | 約12.8km |
三倉岳キャンプ場 予約はどうする
三倉岳キャンプ場は、事前の電話予約やサイト予約は不要です。
当日、現地での手続きのみで利用することができます。
受付の手順

- キャンプ場内にあるログハウス(管理棟・三倉岳休憩所)へ向かいます。
- 備え付けの「キャンプ場利用申込書」に必要事項を記入します。
- 申請書下部にある「申請書許可証」を切り離し(または受け取り)、手続き完了です。
受付時間と定休日
- 受付時間: 9:00~17:00 (この時間以降は進入口閉鎖)
- 定休日: 毎週水曜日(※管理棟の定休日)
【定休日に利用する場合】
電話で確認したところ、水曜日などの定休日は管理棟が閉まっていますが、
「外に設置されている申請書に記入し、ポストへ投函すればOK」とのことでした。
時間外や定休日に到着しても柔軟に対応していただけるのは、旅人にとって非常にありがたいポイントです。

三倉岳キャンプ場 サイトの様子

サイトの様子
- 東エリア・西エリア: キャンプ場を構成する2つの大きなエリア
- 林間: サイト全体のロケーション
- 区画サイト: 1〜90番、A~Dまで振られた区画形式(一部欠番あり)
- 土: 地面は砂っぽく滑りやすい
三倉岳キャンプ場は、公道から段々と高くなっていく地形が特徴です。
管理棟を中心とし、大きく分けて「東エリア」と「西エリア」の2つに分類されます。
全般的に林間の区画サイトとなっており、区画番号は1〜90まで振られていますが、一部欠番も存在します。
また場内に2ヵ所、芝生公園と呼ばれる広場が存在します。


基本の区画サイズは3×3m程度とコンパクトですが、アルファベットが振られたサイト(A〜D)は比較的広めのサイズが確保されています。


地面は土ですが、表面が砂っぽく滑りやすいため、足元には十分な注意が必要です。

エリア毎の特徴
三倉岳のサイト選びは、運搬のハードルによって難易度が大きく変わります。

【中級~上級者向け】東エリア(標高の低い側)


- 搬入のコツ: 場内に広く分布していますが、車道側のサイトであれば一時停車の後に荷物の搬出入が可能です。特に、中腹のトイレ下にある一時停車場はサイトに隣接しているため、ここを起点にするのが最もスムーズです。

車道もそれほど広くはないので停車中トラブルの恐れも懸念。

- 運搬の難しさ: エリアの奥へ進むほど、駐車場や車道から何往復も歩くことになります。

- 地面の状況: 傾斜や木の根が多く、地面も凸凹しているため、キャリーカートでの運搬は決して楽ではありません。

【超上級者向け】西エリア(山側の高い場所)




- アクセス難易度: 一番手前にある炊事棟へ辿り着くだけでも一苦労です。 広場から続く坂道は足元が非常に滑りやすく、バイクでの進入は物理的に不可能と考えたほうがよいでしょう。
- 野営環境: サイトは鬱蒼とした草の中にあり、場所によっては「藪漕ぎ」に近い状態となります。またサイト内には落ち葉が堆積しており火気の使用には十分な注意が必要と思われます。(※山火事を引き起こす恐れがあるため、焚き火はしないほうがよいかも。)

- 覚悟: 野生動物と寝床を共にするような、真の野営スキルと覚悟が求められるエリアです。


- トイレがない:炊事棟はありましたがトイレはみつかりませんでした。これがこのエリアで設営する最もハードルが高い理由でもあります。
三倉岳キャンプ場 施設の様子

昔ながらの設備ですが必要最低限の施設が整っています。
その中でも「Lavatory」と銘打たれた真新しくモダンなトイレ棟が一際目を引く印象です。

三倉岳キャンプ場 ログハウス(管理棟)

キャンプ場内の中腹辺りにある広大な広場には、ログハウスの管理棟が位置しています。
この広場からは三倉岳の姿がよく見え、登山者の多くがここに車を止めて山へ向かうようです。

管理棟は水曜日が定休日のため、訪れた際は閉館していましたが、窓越しに確認したところ飲料やオリジナルのTシャツなどが販売されている様子が伺えました。

三倉岳キャンプ場 炊事棟

場内には、東エリアに2つ、西エリアに1つの計3か所に炊事棟が配置されています。


各所ともにつくりは同じで、コンクリート製の堅牢な造りが特徴です。

内部には複数の蛇口を備えた水道のほか、調理の際に便利な広い作業スペースも確保されています。
また、かまども併設されています。

三倉岳キャンプ場 トイレ


現地で確認できたトイレは、東エリアにある以下の2か所です。
三倉岳キャンプ場のトイレ事情は、歴史を感じる設備と現代的な建築が共存する非常に特徴的なものとなっています。
無料のキャンプ場でありながらトイレットペーパーが備え付けられている点は、非常にありがたいポイントです。
西エリアについては、現地の立て札にトイレの場所を示す表記があるものの、印刷されたキャンプ場配置図には記載がありませんでした。
実際に現地を探索しましたが、結局見つけることはできませんでした。
トイレ

キャンプサイトの一番下のほう、炊事棟の隣にあります。
昔からあるような佇まいで、トイレは水洗和式の便座です。


Lavatory(トイレ)

ログハウス(管理棟)へ向かう道沿いには、野営場の雰囲気とは一線を画す、打ちっぱなしのモダンな建物がひときわ目を引きます。
MAPをみると、建物には「Lavatory」という名称が掲げられています。
その名の通り、内部は非常に清潔に保たれており、以下のような設備が整っています。
- 個室トイレ: 男女別に分かれており、水洗の洋式便座が完備されています。

- 洗面設備: 中央には独立した手洗い場が設けられ、液体アルコールも備え付けられていました。

- 利便性: 大きな鏡や小物を置くスペースも確保されており、コンタクトレンズの着脱などを行う利用者にとっても非常に使い勝手の良い設計となっています。

なお、こちらの施設はあくまで「お手洗い」であり、食器などの洗い物は厳禁です。
すぐ上の段に炊事棟が設置されていますので、正しく利用しましょう。
三倉岳キャンプ場 灰捨て

炊事場裏に灰や消し済みを捨てる鉄製の容器が置いてあります。
三倉岳キャンプ場 ごみはどうする?

キャンプ場での基本ルールとして、ごみはすべて持ち帰りです。
ただし、管理棟であるログハウスの前にのみ、ペットボトル専用の回収箱が設置されていました。
それ以外の燃えるごみや缶・ビン類などは、一切捨てることができないので注意しましょう。
その他施設

東エリアには、広場の中に設けられたファイヤーサークルがあります。
個人で利用する機会はまずないと考えられますが、団体などでキャンプファイヤーを行う場合には、事前に消防署への届け出が必要となるようです。
【体験レポ】山野峡から三倉岳へ!広島県を東西に横断。酷道に疲弊しながらたどり着いた地は難易度S級の野営地だった。

今回の中国一周キャンプツーリングにおいて、広島県内ではどうしても2箇所、テントを設営したかった。
そのひとつが、広島の東の拠点として旅立った「山野峡」。
そしてもうひとつが、広島の西の端に位置する無料の野営地「三倉岳キャンプ場」だ。
はたして、そのキャンプ場はどんな場所なのか。
事前に問い合わせの電話を入れると、あいにく私が訪れる予定の日は「水曜定休日」に重なっていた。
しかし、スタッフの方からは「受付前にある申請書に記入してポストへ投函してくれれば利用していいよ。ただ、夕方には門が閉まるから9:00〜17:00の間に入ってね」と親切に案内をいただいた。
さらに耳寄りな情報もあった。以前、岩倉キャンプ場で出会ったバイクキャンパーの方にDMで三倉岳について尋ねると、「自分は好きな場所ですね」「バイクの乗り入れもOKですよ」との答え。
「無料、バイク乗り入れ可、広島キャンパーのお墨付き」
これ以上ない好条件を引っさげ、期待に胸を膨らませて現地へと向かった。
…が、そこに待ち受けていたのは、想像を絶するロケーションだった…。
山野峡での険しい難所を切り抜け、疲弊しながらもたどり着いた、誰もいない水曜定休日の三倉岳キャンプ場。
そこで直面した試行錯誤の一夜を徹底レポートします。
※道中の~キャンプ場までのツーリングの様子を共に辿りたい方は、このまま下へ読み進めてください。
※キャンプ場の詳細・滞在の様子をすぐに見たい方は以下のリンクから、ジャンプできます。
👉【滞在編】水曜定休日、誤算だらけの初訪問。三倉岳・選択肢なき「難易度S級」の攻略戦
【道中編】広島東西横断183km!県道418号の「酷道」に絶望した過酷なアプローチ

前泊した山野峡から、目的地の三倉岳までどうやってアプローチするか。
ルート選びからすでに、この旅の最初の攻略戦が始まっていた。
都市が連なる瀬戸内海沿いのルート(国道2号線など)を選ぶのは、高確率で渋滞に巻き込まれそうだ。かといって、それを嫌って山道ばかりを繋ぐルートを選ぶと、今度は買い出しができるスーパーすら見つからないまま現地に到着してしまう恐れがある。
「えーと、旅の燃料(たこ焼き)を補給できるポイントは…」
スマホの画面を睨みつけ、中間地点あたりにちょうどいいスポットを発見した。
「ラ・ムー 可部店」。
三度目の正直。今度こそは、100円たこやきにありつくのだ。
ここを中継地点に設定し、Googleマップのナビをセット。
いざ、広島東西横断の旅へアクセルを開けた。
Googleマップの罠!県道418号井関加茂線という、息つく暇なき地獄のデスロード
昨日通った道をなぞるように南下し、運命の分岐点を曲がる。

途中、龍頭峡の入り口が見えた。おそらく美しい景勝地なのだろうが、今はまだ走り出したばかりの前半戦。先を急ぐため、今回は横目にスルーする。

しばらく行くと、ナビは右の方向へと進路を指示した。 その手前、電光掲示板が何かを伝えようとチカチカと光っていたが、文字がよく判別できない。気にせずその道にさしかかった瞬間、私の第六感が直感的にヤバさを察知した。
道の名は、『広島県道418号井関加茂線』。

車1台が通るのがやっとの、離合など到底不可能な峠一本道。
道の両端に堆積した深い落ち葉が、ただでさえ狭い路幅をさらに圧迫している。

それだけならまだしも、執拗なまでのアップダウンと急カーブの連続。おまけに路面は終始じめじめと湿っており、よりによって分厚い「緑の絨毯」のような苔が、道の中央をぬらぬらと這っているのだ。
初めこそ申し訳程度に存在していたガードレールも、進むにつれて姿を消し、ついには剥き出しの崖が牙を剥く。
カーブを曲がるたび、コース取りを誤るまいと握るグリップに手汗が滴る。
もしあの中央の苔でフロントを滑らせたら最後、バイクごと奈落の底へ引きずり込まれるだろう。

追い打ちをかけるように、行く手を阻む落枝や落石…。
ギアをローまで落とし、心臓をバクバクさせながら慎重にクリアしていくが、そんな終わりの見えないセクションが何度も、何度も何度も押し寄せてくる。
途中で一息つこうにも、バイクを安全に停められる場所すら一切ない。

ふぅ…。
ヘルメットの中で大きなため息を漏らす。全然息つく暇もない。
一体いつになったら終わるんだぁ…、一旦落ち着かせてくれ。
祈るような気持ちでしばらく進むと、ようやく前方に民家が現れた。

やっと人里に出た、これでマシになるのでは?!と安堵したのも束の間。
民家を遠く横目に見ながら伸びていたのは、草が生い茂り、派手にえぐれ、ドロドロの泥にまみれた文字通りの悪路が待ち構えていた。

うそだろ…。こんなの、ノーマルじゃこなせないよ…。
これまでもGoogle先生には度々無茶な試練を与えられてきたが、今回ばかりは本気で殺しにかかってると思った。大袈裟ではなく、間違いなく死と隣り合わせの道のりだ。
そこを越えても相変わらずの険しい峠道が続いた。


しばらくして、ようやく何かの工場のような建物が視界に入る。だが、最後まで気は抜けない。

ガードレールのない、深い水たまりが点在する林道を泥だらけになりながら抜け――ようやく、きれいにアスファルトが整備された大通りへと飛び出した。
まだ旅の前半だというのに、今日一日の体力と精神力をすべて使い果たした気分だった。

視界が「上下」にゲシュタルト崩壊!?
「何でもないような道が、幸せだったと思う…」
アスファルトが綺麗に整備されているということが、これほどまでにありがたく、愛おしいものだったなんて。
五臓六腑に染み渡るような舗装路の優しさに、ただただしみじみと感謝した。
…まあ、そんな感動も、恐怖のスパイスが抜けてしまえば数キロ先で綺麗さっぱり忘れてしまうのが人間の悲しい性なのだが(笑)。
心拍数もようやく平熱に戻った頃、バイクはどこかノスタルジックな雰囲気漂う小さな街並みへと入っていった。 ふと、通り沿いの建物の看板に目が留まる。

『上下駅前』『上下支店』『上下…』むむっ?


なんだこれ? 右を向いても左を向いても「上下」だらけ。
一瞬、デスロードのせいで私の平衡感覚が狂って、視界の上下左右の概念がゲシュタルト崩壊を起こしたのかと思ったが、どうやらこれがこの土地の名前らしい。
前を走る私のバイクは左右にハンドルを傾けながら、上下の町を後ろから前へと駆け抜けていく。
日本にはまだまだ、旅人をクスッとさせる面白い地名があるものだ。
そんな地名に気を取られていると、今度は前方に見覚えのある看板が飛び込んできた。
「いこいの森弘法山」

「うわ、懐かしい…!」と思わず声が出た。
ここ、全国巡ってきたキャンプ場の間でも独特なサイトを持つキャンプ場。

まさかこんな場所で再会するとは思わなかった。かつての旅の途中で、この一風変わった野営地に足を踏み入れた遠き日の記憶。
当時と同じ道を、今こうしてV-STROM 250と共に再び踏みしめている事実に、なんとも言えない深い感慨が胸にこみ上げてきた。
3度目の正直(たこ焼き)
バイクはついに広島市へと入ったのでちょっと気を引き締める。
道行く車を眺めていて、ふと思う。
広島ナンバーの車って、他県で見るとちょっと荒々しいイメージがあるけれど、県内だと何故かみんな妙にしおらしく、運転がおとなしい気がする?
…まあ、私の気のせいかもしれないが(笑)。
そんなローカルな観察をしながら走っていると、ド派手なピンクの建物を視界にとらえた。
「ラ・ムー 可部店」に到着!
日本全国、これほどド派手なピンクをまとった建物は、このラ・ムーかドラッグストアのコスモスくらいしか私の記憶にはない。

バイクを停め、吸い寄せられるように向かうのは併設されている大人気スナックコーナー。
そう、求め続けていた「PAKU-PAKU(パクパク)」だ!
この旅に出てから3日目で、ようやくこの100円のたこ焼きにありつくことができた。



100円だからと侮るなかれ。相変わらずの驚異的なボリュームと、外はカリッ、中はトロッとした安定の美味さ。タコももちろん入っているのは言うまでもない。

大粒のたこ焼きをハフハフと頬張るうちに、酷道でカラカラになっていた私の体力ゲージがぐんぐんと満たされていくのが分かった。
お腹が落ち着いたところで、今夜の野営に備えて店内で本日の買い出しを開始。
総菜コーナーを回っていると、信じられないものを見つけた。
パンからこれでもかと狂暴なまでに具がはみ出した、ボリューム満点の焼きそばパンが、
…なんと100円?!

一瞬、山積になったカゴにいれてやろうかと強烈に惹かれたが、いや、この旅はまだまだ長い。
ここで無理をするのはやめておこうと理性が働き、今回は見送ることに。
厳選した食材をチョイスし、V-STROM 250の左パニアケース(我が移動式・食糧庫)をパンパンに満たす。
準備はすべて整った。
ラ・ムーの爆安エネルギーをフルチャージした私は、いよいよ今夜の寝床、「三倉岳」へと進路を取った。
ラ・ムー 可部店

無敵モードで進む平穏な道。突如現れたと3つの頂とその麓へ潜入
整備された県道に沿って、バイクを南西へと走らせる。

あの息つく暇もない「県道418号井関加茂線」を命からがらこなした今の私には、
もうこれ以上酷な道などこの世に存在しないだろうという、謎の無敵感と余裕が生まれていた。

広がるのは、平穏で美しい田舎道。心穏やかにV-STROM 250を流していく。
やがて広島県道293号を左へ折れた、その時だった。
フロントスクリーンの向こうに、天を突く3つの山頂が綺麗に並ぶ、まさに「山」という漢字をそのまま具現化したようないでたちの、異様な山容が姿を現した。

…もしや、あそこか?
その圧倒的な存在感に目を奪われながらも、バイクはどんどんと麓へ近づいていく。
山道へと入ると、鬱蒼とした木々に遮られ、逆にその雄姿は一旦視界から消え去った。
いよいよキャンプ場エリアへと突入する。

バイクのギアを落とし、ぐんぐんと伸びる長い上り坂を登っていく、その刹那。
視界が一気に開け、さっきの山が目の前にどっしりと現れた。
これが、三倉岳……!

鋭く切り立った岩峰が、まるで槍のように空をついているように見えた。
そして道の先には、遮るもののない広大な広場に迎え入れられた。

着いた。ここが今夜の野営地、三倉岳キャンプ場だ!

【滞在編】水曜定休日、誤算だらけの初訪問。三倉岳・選択肢なき「難易度S級」の攻略戦

広場のすぐ脇に、立派なログハウスが佇んでいる。ここが管理棟の役目を果たしているのだろう。
水曜定休日とあって、やはり入り口の門は静かに閉ざされていた。
事前に電話で案内された通り、入り口付近で申請書と投函用のポストを確認する。
よし、まずはこれをサクッと書いて出すか、とペンを走らせようとしたところで、手がピタリと止まった。
記入欄に「サイトナンバー」を記載する項目があるのだ。

はて、困ったぞ…。
初めて訪れた場所だし、どのサイトがどんなロケーションなのかも全く分からない。
ここで適当な番号を書いてポストに放り込んでしまうのは、後々のことを考えるとマズい気がする。
というのも、広場には何台か車が駐車していたからだ。
もし適当に選んだサイトが先客とバッティングしてしまう恐れもある、か。
ポストの脇に置いてあった紙のマップを手に取って眺めてみる。
…ん? なんだこれ、サイト数がやけに多いぞ?

自分としては、他人の視線が入らない「ひっそりとした角の位置」が好みなのだが、
このマップの平面図だけでは高低差も周辺の雰囲気もさっぱり掴めない。
よし、まずは実際にサイトを自分の目で見て回ってから、ここに番号を書きにこよう。
そうと決まれば行動は早い。私は記入しかけた申請書を一度ポケットに収め、愛車のシートへと再度跨がった。
乗入れ不可?立ちごけ寸前の冷や汗ダート。残された二つの選択肢。
たしか、バイクの乗り入れができると聞いていたはずだが…。
ヘルメットの中で記憶を反芻しながら、周囲に目を凝らす。
しかし、今さっき通ってきた車道とサイトの間には深い「溝」が掘られており、物理的にバイクをサイト内へ滑り込ませるルートがどこにも見当たらなかった。
広場を起点にあちこち探し回った末、西側のサイト群へと通じる、それらしき動線を発見した。
ここか…?

そこから先は、ゴツゴツとした石が転がる未舗装の砂利ダート。
はたして本当にこのまま進んでいいものなのかと一瞬躊躇したが、ええいままよ、と意を決してクラッチを繋ぐ。ガタガタとタイヤを鳴らしながら、慎重に奥へと進んでいった。
だが、その先に待ち受けていたのは、立ちはばかる坂だった。

急斜面に、深く不均一に敷き詰められた砂利のダート道。
「マズい」と思ったときにはすでに遅く、少し上っただけでフロントタイヤが意思に反してズズッと横にズレる。
その瞬間、頭の中で赤色の警告灯が激しく点滅した。これ以上進んではいけないと直感する。
坂の1/5にも満たない超序盤で、命からがら緊急停車。
しかし、バイクを止めたその瞬間にも、車体の重みで足元から「ずるるぅ…」とタイヤが横滑りする。
生きた心地がしないまま、おそるおそる斜度を利用してバックで坂を降りようと試みる。
だが、非情にも「じゃりっ…」と踏ん張る私のブーツの底が滑った。
―っ!?
車体がガクンと傾く。
総重量300kg近いフルパッキングの巨体が、容赦なく重力に引っ張られる。
危うく立ちごけしそうになるのを、左足とハンドルを支える掌に全霊のパワーを込めてギリギリのところで踏ん張った。
まさに全集中。バイクの呼吸…。
全身から一気にドバッと嫌な汗が噴き出す。なんとか奇跡的に体勢を立て直し、命からがらその坂から脱出した。
はて、それでは一体どこからアクセスすればいいのだろうか…?
狐に包まれた気分で、今来た道をトボトボと引き返す。
すると、車道側になにやら不吉な掲示物が貼っているのが目に留まった。
「10月20日撮影されたものです」と書かれた文字の上には、生々しいクマの画像が載っていた。

…え、クマ、出るの!?
思わぬ新たな脅威さらされつつ坂を下っていくと、この大自然の野営地の雰囲気にはおよそ似つかわしくない、やけに近代的な建物(Lavatory)が視界に入った。

よく見ると、その下あたりに唯一、車道から溝をまたいでバイクを寄せられそうな駐車スペースを発見する。


しかし、そこに無情にも掲げられていたのは「駐車禁止」の四文字だった。

すぐ横にはお目当てのテントサイトが広がっている。

だが、そこへ行くにも段差を越えなければならず、地面は先ほどの坂と同じように滑る土。
おまけに太い木の根が地表を複雑にのたくっており、とてもじゃないがバイクを乗り入れられるような生易しいロケーションではなかった。
事前のロジックが完全に崩壊し、呆然と立ち尽くす。
追い打ちをかけるように、どこからともなく湧き出た謎の羽虫の群れが、目を開けれないほど顔中にたかってきた。
ぐあっ、これはたまらん…!
手で虫を追い払いながら、マップと周囲を見比べる。
その場所からすぐ近くにある「22番」か「23番」のサイト。

奥にもサイトが広がってはいるが、何より「クマが出る」と知ってしまった以上、絶対に遮蔽物のない奥地には行けない。
何かあったとき、盾になってくれる頑丈な建物の近くに身を寄せるのが鉄則だろう。
―もはや、目の前にあるサイト、それ以外の選択肢は残されていなかった。
キャンプ場マニアの性 場内散策1(東エリア)
…とはいいつつも、本当にそこが今日の「最善の地」なのか、100%の確信を得るまでは諦めきれない。
結局、徹底的に場内を歩いて見て回ることにした。
理想の寝床を求めて泥臭く歩き出す。これぞキャンプ場マニアの悲しい性か…。ふっ。
バイクをその停車場に停め、東に固まるサイトを徒歩で下っていった。

斜面に作られたひな壇状の敷地には、それぞれ区画番号が振られている。
一つの区画は決して広くはなく、ソロ用のツーリングドームがちょうど収まるほどのミニマムなサイズ感だ。

その小ぢんまりとした区画が、段差の所々にポツンポツンと配置されている。

途中、開放的な広い草地が目に留まったが、どうやらそこはフリーサイトではないらしい。

それにしても、このキャンプ場は広い。どこまで歩いても、終わりのない迷路のように区画が延々と続いている。

かなり下の方まで降りてくると、今度はアルファベットが振られた4つのサイトが連なって現れた。
ここだけはこれまでの区画と違って、やけに広い。どうやらファミリー向けのエリアのようだ。

ふと、鬱蒼と茂る木々の隙間に目をやると、カーキ色の大型テントのようなシルエットが視界を捉えた。

(なぁんだ、上に車停めてた先客がここに設営してたんだぁ。)
本気でそう思い、どこかホッとしたような、残念なような気持ちで近づいていった。
が、近くまで行ってよくよく目を凝らした瞬間、己の目を疑った。
テントだと思ったそれは、地面から生えた、ただの巨大な岩だったのだ。

岩をテントと見間違える自分の脳内に苦笑いする。
そのすぐ先で、いかにも年季の入った古いトイレと炊事場が現れ、私の大偵察はそのままぐるりと車道へと弾き出された。


今度はバイクで入場してきた車道に沿って、トボトボと坂を歩いて上る。
改めて車道からサイト側をじっくり観察してみるが、やはり車道と歩道の間には、深い溝が延々と掘られている。どう考えても、ここからバイクをフィールド内へ乗り入れるのは物理的に不可能だ。
仮に、だ…。
車道にバイクを一時停車して、そこから荷物を手で搬出入するパターンをシミュレーションしてみる。
…いや、無理だ。まず傾斜に停車すること自体がリスクがある。
溝をまたぎ、あのズッシリと重いキャンプギアを抱え、生い茂る植栽の枝葉にズボンをガサガサと擦りつけながら歩道へ出なければならない。
そこからさらに、アップダウンのあるフィールド内を奥へ奥へと何往復も荷物を運ぶなんて、想像しただけで一日の体力を使い果たす。

よくよく観察してみると、その深い溝を渡ることができる金網が敷かれているのは、さっきV-STROM 250を停めたあの近代的な建物の下(停車場)と、そのさらに上にあるトイレの前のその2箇所だけだった。


キャンプ場マニアの性 場内散策2(西エリア) 樹海サバイバル?

汗だくで車道を歩き、先ほどバイクでの進入を命からがら断念した、あのいわく付きの坂まで戻ってきた。
改めて徒歩でアプローチしてみるが、この坂にたどり着くまでだけでも結構な道のりがある。
おまけに容赦なく足元を滑らせる砂利ダート。やっぱりバイクで突っ込まなくて大正解だった。
息を切らしながらその坂を上りきると、古びた炊事棟が現れた。

そのすぐ上からはテントサイトが始まっているのだが…これがまた、なんとも雰囲気が良すぎるロケーションなのだ。


周囲を鬱蒼とした木々に囲まれ、サイトは落ち葉で埋もれている。
だが、これでも「まだマシな方だった」ということを、この直後に思い知らされることになる。

奥へ進むにつれて、サイト群は完全に「森」へと同化していった。

シダ植物に囲まれ、まるで野生動物と密に共生するような剥き出しの環境。
なかには深い落ち葉が堆積しすぎて、どこからがサイトなのか踏み入れることすらできない場所もある。

ここで焚き火の火の粉でも飛ばそうものなら、一瞬で山火事を引き起こしてしまいそうだ。
しかも、そんなサイトの裏に、さらに別のサイトが隠されていたりする。
進めば進むほど、あたりは樹海のような不気味な闇に包まれていく。
…あれ、どっちから来たっけ?

一瞬、本気で道に迷いそうになった。マップを頼りに進むも、結局86番以降のサイトに関しては、完全に森に埋もれてしまっていてどこに存在するのかすら視認できないレベルだった。

さらにこちらのエリアの案内看板には「トイレ」の位置が記載されているのだが、どれだけ目を凝らして探してもそれらしき建物が見当たらない。
手元の紙のマップに至っては、そもそもそんなトイレの表示すら最初から存在していないのだ。
(まさか…ここに設営したら、あの遥か遠くのトイレまで暗闇の中を往復するしかないのか…?)
雰囲気はすこぶる野性的で、ブッシュクラフト好きならある意味で強烈に魅力を感じるロケーションかもしれない。
だが、「アクセス難・クマの恐怖・トイレ遠すぎ問題」のトリプルパンチにより、フルパッキングのソロライダーがここに設営するのは、どう考えても難易度が高すぎる。
判定、難易度S級。ここに極まれりだ。
気がつけば、意地になって全サイトを巡りきっていた。しかし、結果はどこをどう見ても誰も設営していない状況だった。
広場にあったあの何台もの車の主たちは、やはりすべて明るいうちに帰る登山客の利用だったのだろう。
スタッフのいない、水曜定休日の三倉岳。
この広大すぎる、そしてクマが潜むキャンプ場で、今夜、完ソロが、ここに確定してしまった。
ガーソ。
バイクを置いた近代的な建物の下へと戻ってきた。 全サイトを巡った今、もう迷いはない。やはり、あの「22番」か「23番」のどちらかしか生き残る道は残されていない。

今宵の宿営地は、22番一択。
パニアケースから愛幕「アテナワイドツーリング130」を引っ張り出して設営を開始する。
コンパクトな区画に対して、まるであつらえたかのようにジャストサイズでぴったりと収まった。
自分の城ができると、少しだけ安堵する。

設営を終え、一度バイクを広場へと走らせた。誰もいない管理棟のポストに、ようやく「22番」と書き込んだ申請書を滑り込ませる。バイクを駐車し、念のためチェーンロックをしっかりと施錠した。
それにしても、キャンプ場に到着した時はまだ14:00だったはずなのに、テントにどっかりと腰を落ち着けた時には、時計の針はすでに16:30を回っていた。
ただ寝床を決めるだけで、実に2時間半もの大遠征を繰り広げてしまった。
ようやく息を抜けるかと思いきや、今度は「蚊」の猛攻が始まった。
さっき私を狂わせたあの羽虫の群れはどこへ消えた?おまけに、目の前を綺麗な八の字を描きながらグルグルと歩き回る、不穏な黄色いスズメバチまで現れる。

刺激して良いものか一瞬迷ったが、たまたま持っていたうちわで、丁重に場所を移動していただいた。
――さあ、ようやく、ようやく飯の時間だ。
ラ・ムーで仕入れた極安の晩餐

酷道と激坂で空っぽになった胃袋に、ラ・ムーで仕込んできたエネルギーを叩き込む。
まずは岡山名物 とりめし(199円)。美味い。
惜しいな、一昨日(岡山にいた時)に出会いたかったよ、ここはもう広島だ。
と思わず心の中で突っ込む。

さらに、これまたラ・ムー名物の「99円ナポリタン」。
実は前回の旅でこいつのポテンシャルを見出しており、今回はこのナポリタンを最高に美味しく焼くためだけに、わざわざFIELDOORのラウンドグリドルパンを持参してきたのだ。

チリチリと音を立てるグリドルの上でナポリタンを焼き、ガツガツと胃袋へ収めていく。
「鶏飯×ナポリタン」という、狂気の炭水化物合わせ技。疲弊しきった身体には、これが一番の特効薬だった。
食後はすぐさま徹底的な洗い物。
定休日の山の中である。ゴミの容器もパックのラップも、野生動物を引き寄せる「ニオイ」が一切残らないよう、念入りに綺麗に洗い流してパッキングした。
クマ防衛線。森へ放つ威嚇の白煙

今夜はもともと、焚き火をする気なんてサラサラなかった。
だが、「ここに人間がいるぞ」と周囲の森に強く主張するため、あえて火を熾す。
幸いにも、散策の途中で灰捨て場の位置はしっかりと確認していた。
生木の松の葉などをわざと混ぜ、もくもくと意図的に白い煙を発生させ、クマ除けの合図として夜の森の中へと低く漂わせた。
サイトは車道沿いにあったため、時折、車の通り過ぎる音が暗闇に響いた。
上から下へと山を降りていく車が多い。すでに17:00を過ぎ、19:00を回っている。
平日休業日のこの山の中で、果たしてどこが施錠箇所だったのだろうか…?そんな謎が頭をよぎる。
だが、もうなにも考える気力も残っていなかった。
一日の体力と精神力をすべて使い果たし、疲労はとっくに限界を迎えている。
今夜はもう、息を潜めて寝てしまおう。
…いや、待てよ。クマ対策としては、むしろテントの中で大いびきをかいて「ここにデカい生き物がいるぞ!」とアピールした方が、逆に効果があったりして…。
うーん、もうわからん…。むにゃむにゃ。
こうして、三倉岳の孤独な夜をシャットダウンした。

無事に目覚めたありがたみ

翌朝、テントのジッパーを開けると、目の前に広がっていたのはどんよりとした曇天。
…よかった。無事に朝を迎えられた。
昨晩は、夜中に雨がポツポツとフライシートを打ち鳴らす音が聞こえていたが、幸いにも今は完全に上がっている。
それにしても、肌寒い。温度計に目をやると、示されていたのは18.8℃。

この旅の中でも、文句なしで一番低い最低気温を記録していた。
体感の寒さがじんわりと身に染みる。
かじかむ手を温めるようにバーナーに火を点け、まずはコーヒーを沸かす。
そして朝食に取り出したのは、これまたラ・ムーではキャンプ食材の定番であるカレーパンだ。
驚きの79円。買い出しの最後、レジに向かう直前でも、見つけると思わずカゴへ放り込んでしまう魔力を持ったパンである。

こいつをラウンドグリドルパンの上にのせ、ヘラでこれでもかとギューギューに押し潰して焼いていく。
名付けてカレーパンのせんべい焼き。
もう少しじっくり火を通してパリパリにさせても良かったが、これはこれで外がサクッとして食べやすい。うん、まあまあだ。

温かいコーヒーとカレーパンで腹を満たしたら、いよいよ撤収作業の開始だ。
7:40に撤収完了。

今日は木曜日なので三倉岳キャンプ場の正式な営業日だ。
できれば、あの電話で話した管理人さんに一言挨拶をしてから旅立ちたかったが、窓口が開く9:00まではさすがに待っていられない。
管理人さんの代わりに、広場にそびえ立つ三倉岳にあいさつしその場を去った。

【まとめ】三倉岳キャンプ場、難易度S級と評した訳と攻略法

実際にこの地で一夜を明かして分かった、感想です。
👍 よかったところと💦 苦労したところ
三倉岳キャンプ場を「野営難易度S級」と評する3つの論拠
平面マップからは読み取れない立体的高低差、および環境リスクに起因する理由は以下の3点に集約されます。
車道(アクセス線)
│
├─ 東エリア [深いU字溝(物理的遮断)] ─ 各テントサイト(車両進入不可・搬入困難)
│
└─ 西エリア [未舗装の急傾斜ダート]
│
└── (車両進入・横付けは事実上不可能)
│
└── 極奥地(樹海化:落葉堆積、野生動物遭遇リスク)
排水溝による物理的遮断(東エリア側)
車道と各サイトの境界線には、深いU字溝が広範囲にわたっており、車両の進入を物理的に阻害しています。場内において車両を安全に寄せられる空間は、Lavatory下の一時停車場など、ごく限定的な領域に止まるため、各テントサイトへの搬入は困難を極めます。
急傾斜ダートによるアプローチの破綻と肉体的負荷(西エリア側)
自然景観に優れた西エリア奥地へのアプローチ線は、不均一な浮き砂利が堆積した未舗装の急傾斜ダートです。傾斜の1/5にも満たない序盤で足場の滑落による立ちごけリスクが急激に高まるため、バイクによる進入・横付けは事実上不可能です。また、代替手段として徒歩による搬送を選択した場合も、過度な高低差と距離により、体力を著しく消費します。
西エリア最奥地におけるインフラの欠落と野生動物リスク
西エリアの最奥地は、シダ植物が生い茂り、堆積落葉などが多い「樹海化」が進行しており、火気使用時の延焼リスクが高いです。さらに、エリア内にトイレが設置されておらず、かつ近隣における「クマの目撃情報(10月20日撮像データ)」という精神的・生存的脅威に対し、完全な無防備状態となります。
三倉岳キャンプ場攻略法とは?具体的な適応戦略
この難易度S級の野営地をスマートに攻略するためのキーワードは、
「LAVATORY」と「一時停車場周辺」です。
これを踏まえた上で、狙うべきは以下の2パターンをおススメします。
攻略ルートA:利便性と安全性を最優先「22番・23番サイト」【←これ一択】


Lavatory下の一時停車場に近接し、U字溝を跨ぐ金属製金網からのアクセス動線が最短となる区画。
フルパッキング状態の搬出入労力を最小限に抑制可能です。
また、堅牢な近代建築物に隣接しているため、夜間における大型野生動物の襲撃リスクに対し、物理的な「遮蔽盾」として機能します。
他のサイトと比べ圧倒的にアドバンテージが高いサイトと言えます。
攻略ルートB:低労力搬入の特化「下段1桁番号サイト」

フィールドの最下段に位置する一桁台の区画群。
車道からの高低差および水平距離が他と比べ小さく、車両からの直接的な搬出入が可能ともいえます。
旧式ではありますが炊事場・衛生施設がコンパクトに集約されており、エネルギー消費を最小限に抑えた野営を完結できます。

あとがきに代えて:不便さを愛するすべての野営人へ

三倉岳キャンプ場は、一言で表すなら「パニアケースを満載にした重量級ツアラーの初見殺し」。
そんな強烈なインパクトを持った場所でした。
今回はたまたま水曜日の休館日というタイミングでの訪問でしたが、もしスタッフの方がいらっしゃる通常の営業日に訪れていたら、また少し違う一面が見られたのかもしれません。
ただ、他に行く当てもなく訪れたあの夕暮れ時、休館日にもかかわらず利用を快諾してくださったことには、今でも感謝の念に堪えません。本当にありがたい対応でした。
今回の私の積載コンディションでは、あの過酷な搬出入の労力や、西側エリアに真っ向から挑むことは到底不可能でした。
しかし、振り返ってみれば、アクセスが過酷であろうが、虫の猛攻があろうが、
これこそが本来のキャンプ場の姿なのかもしれません。
「昔のキャンプ場は、どこもこんな風に不便を楽しんでいたよなぁ…」と、暗闇の中でしみじみと思い返していました。
昨今のキャンプブームによって、至れり尽くせりな高規格キャンプ場が当たり前になったからこそ、ここの持つ本来の不便さが際立って見えただけなのだと思います。
もし、過保護な観光地化を拒む「本格的な野営地」を国内で求めるならば、ここは間違いなく全国屈指の場所ではないでしょうか。
私の頭の中には、すでに一つの新しい野望が芽生えています。
「いつかあの森に埋もれた樹海サイトに挑戦してみたい」
もちろん、次に来る時はこの三倉岳の地形を完全に見据えたUL(ウルトラライト)装備にパッキングを総入れ替えして臨むことは間違いありません。
…あとは、あの生々しいクマ問題さえ無事に解消されていれば、ですが(笑)。
便利さを脱ぎ捨て、剥き出しの大自然と対峙したいと願うすべての野営人の皆さん。
ぜひ一度、この難易度S級のフィールドに足を運び、ご自身の腕と知恵で挑戦してみてはいかがでしょうか。

4カ所目のキャンプ場へとつづく。




